18.あやしきはなし
ある人は彼の事を『神をも殺す力を押さえ続けていた聖者と』と称した。
またある者は『子供と死霊達を代償行為として慈しんでいる弱き者』だと
『食道楽な気の良いにーちゃんが自分が食いたい物の為に世界を引っ掻き回した』とか『一応慈善行為もしておるけど本性は生臭坊主』だの『何故か騒動に巻き込まれている……』だの色々言われている。
だけど、彼の事を【勇者】だと言うと皆してそれはないと首を横に振る。
「はははははっ、これは美味だ。私は奴等が気に食わないがこの乾酪入りの腸詰だけは評価してやっても良い。」
「隣国嫌いの貴族様にしては寛大なもんですな。」
「うむ、上に立つ者として公正に見るべきものは見ないとな、勝てる物も勝てなくなる。まぁ、我等の手にかかればこれより美味な物がすぐに出来上がるのだが、がははははははははっ!」
「その時は私目にも一つご相伴を預かりたく……」
「そう言って、商売の種を掴もうとするか。抜け目ないのぅ、お主も。」
「いえいえ貴族様の国の地力があればこそ私目もおこぼれで良い思いさせてもらっているという物ですから。」
「………なぁ、神官さん。あそこの卓、普通にあくどいやり取りしているけどいいんですかい?」
「あれか?普通に自分の国を自慢したい貴族様と太鼓持ちをして接待している商人としか見えないが。」
「鍛冶屋の、神官様も同類だから無理だって」
「建具師の………あれで普通と感じるのだから俺等の住む世界とは違うよなぁ。」
いえ、世界は一緒です。(by霜降神)
いや、そういう意味じゃないから。しゃしゃり出てボケないでください。
「なぁ、商人よ。なんであそこにいる職人共は我等の会話に怯えて居るのだろうな?」
「貴族様、そりゃ、我等のやり取りが彼等にとって害毒かつ高度すぎるからでございましょう。」
「そりゃ、あんたらが悪人っぽくやり取りしているからだろう。」
「趣味だ。神官殿」
「商人の嗜みですから、偽悪趣味という物も面白ぅございますから。」
「そもそも神官殿の方が悪役らしかろう。この世界に呼び出されてから混乱を振りまいて王侯貴族のみならず神々ですら叩きのめして我が意に従わせる。魔王が泣いていたという噂は真実だと私は判断するぞ。」
「魔王陛下が泣いていたのは主に側近さんのせいだ!私は半年ほど休みが取れてないと愚痴りに来た魔王陛下を側近さんに引き渡しただけだ。こっちがタダ働きなのに仕事がきついと愚痴りに来た奴がちょっと憎たらしくなってしまっただけなんだが。嗚呼、神よ神々よ罪深き我を赦しを与えんことを願う。」
「人族の敵と教わってきたが色々不憫すぎるわ!そもそも魔王よりも側近の方が力関係強いってどんだけだ!休み位適度にとらないとだめだろう!」
「側近さんは【魔王領】の実務系の最高責任者で魔王でさえ無碍には出来ぬと言うか『魔王が消えても大丈夫だが側近さんが風邪ひくだけで【魔王領】が重篤になる』なんて冗句が出るくらい……因みに暗殺とかはやめてくださいね、側近さんの一体位ならばなんとかなるかもしれないけど何処にも………おっと、ネタバレはやめろって、うむ、これ以上は語らん。」
「神官殿!」
「神官様!」
「私は友人の秘密を喋り捲る趣味はない………それ以上に命が………ぐほっ!」
「しんかんさーん!!!」
側近の秘密に触れた者は死が訪れる………アアッ!壁の中に!(by魔王)
側近一族は分裂繁殖しているのと言われるくらいに姿形がそっくりなうえに魔王城に多数勤務しているのでどこにでも側近さんがいるイメージが付きまとっているだけです。
「えっと、神官さんに相談したのがまずかったかな?」
「おにーちゃん、のみすぎはだめだよーって!なにバカやっているの!」
死霊っ子(元)が連れ戻しに来たときは出来上がった連中を目にするのである。まぁ、酔っ払い連中は性質(勃ちが)が悪いのだが勇者(笑)に愛されし子は酔っ払いの戯言につき合わされるならば兎も角、無体はされないのである。因みに勇者(笑)の養い子達は親である勇者(笑)やら彼の奥さん達(神嬲り属性付)が本気で神々に希っているので無碍に出来ない(金銭的な意味合いでも)。【狭間】の神々の飲み代の3割ほどは彼が立て替えているので……げふんげふん。
そうでなくても彼が差配する場所にて彼の眷属に対する無体は国ごと泣きを見る羽目になるので自制をするのである。とは言え、親方衆は近所の娘みたいなので下ネタはいう事は言ってもそれ以上はしない。孤児っ子達は可愛い物である。少なくともこの街においては神官さん(笑)の庇護下にあるまともな孤児っ子に対して色々しようとすると神官さん一家が神々ですら怯える報復を行うのである。
それ以前に外交官を任せられる貴族達は人が出来ていないと仕事が成り立たないのである。不出来な事に対して文句は言ってもそれ以上はしてはいけないのである。
この場にいる貴族達は酒と美味なる料理で満足している。態々子供を甚振る趣味もなく、むしろ子供等が愛らしい物だからうちの眷属に入れたいななんて思っている。代わりに子猫を貰い受けたりしているのだがこれは奥方やら娘達に奪い取られる運命だったりするのは悔し涙流すほど悲しい話である。
貰い受けた子猫を主家に差し出す羽目になった某貴族は猫の扱いが出来ていない主家の子息子女に対して鉄拳制裁して庇護下にある者達に対する扱いを教え込んだのは笑い話としておこう。この某貴族は『できていない王子ならば殴り教え諭す。愛い子猫ならば愛情を持って教え諭す。』と言い切ったのはどう反応して良いのやら……この貴族家は愛らしい猫に囲まれて育猫家として名を馳せるのだがどうでも良い話。現時点で赤錆ちゃん(醸造所の守り猫)の子猫達に集られて相好を崩している。黒錆ちゃんの子も参加して猫まみれになっているのはどうしたらよいのやら………乳離れした子猫に囲まれて嬉しそうである。
ここは神官さんのお菓子屋さん店舗名『にゃばくら』………夜のお店です(笑)ウインクをしている招き猫っぽい看板が目印となっています。
「一時、銀貨一枚でニャーレムサービスがついております。」
「これが可愛い女の子ならば…………」
「建具師の、そうなれば銀貨10枚くらい飛ぶだろう。」
「これはなかなか良い商売の種が…………」
「商人、うちの故郷には猫喫茶と言うのがあって………」
「姐さーん!おにーちゃんがいかがわしいお店作る計画をしてるー!」
「なんだって!あんたー!」
どたばたどたばたばこんごきっ!ぐしゃ!
ちょっとしたドタバタがあった物の勇者(笑)が猫喫茶の話をしたら一応は納得してもらえた。
なんかしてはいけない音がしていたけど気にしてはいけない。
「ふーん、あんたの居た世界には変な店があるんだね。」
「事情で猫を飼えない人向けが猫を可愛がりたいときに代償行為として行く店だね。」
「おにーちゃんが小さい仔達を欲望のままに弄り回すんだね。」
「それはいつもの事じゃない。っていうか死霊っ子(元)、その表現は若い子が使うんじゃない。」
「見た目は少女だけど中身は………」
「おにーちゃんのばかぁ!」
ばしーんっ!
「それはあんたが悪いね。」
商人は勇者(笑)の話を元に猫喫茶を開店してみたのだが…………躾けられた猫を見て自分で飼いたくなったお客様(笑)が猫を引き取ってしまうのである。断ろうにも相手はお貴族様、身分権力かなうわけなく泣く泣く手放すことになるのである。
それでもそこそこ良い金額の謝礼を受け取ったので猫喫茶でとしてではなく、猫と触れ合って売りつける販売業に転業してしまうのである。手入れされて躾けられた猫は高貴なご婦人ご令嬢方に大人気となるのである。
後日その話を聞いた勇者(笑)は
「猫喫茶はまだこの時代には早かったのか…………」
と一人思案するのである。
「おにーちゃんのばかぁ!」
大好きなおにーちゃん(笑)からおばちゃん扱いされた死霊っ子(元)は菓子のやけ食いをしていた。その横で猫が前足で手氏て師と慰めるかのように叩くのである。