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12、引き際という物は難しく

菓子作る神官こと勇者(笑)は名声と人脈の割には地味な暮らし方をしている。

ある程度分別の付く年となって表舞台へのあこがれとかと言うよりも物臭な彼の性分が面倒事を避けようと楽隠居への道に進ませるのだろう。異世界人の一部に『働いたら負けだと思っている』なんて思想が蔓延していたのはどうした物だろうか?中二病患者と怠け者と両極端しかいないのだろうか?

私地の文は彼等の出身世界を脅威とその他諸々の感情で見物したい気がするのだが危険すぎるので願望としてとどめておくことにする。かの世界の連中ときたら移転先の世界にて空気と水がどちらが攻めかなどと論争して世界ひとつ腐らせるのだから・・・・・・・



それはさておき、某伯爵一行が道中でつまむものを注文したからである。旅路の食事は単調なものとなりがちだし道中の食事どころでも常に美味にめぐり合えるとは限らない。そう考えればチェーン店というのはありがたい存在なのだなと帰れぬ故郷を思い出す異世界人が一人。そんな中での雑談。


「おにーちゃん、どうして領主とかにならないの?」

「簡単なことだ私に領主が勤まると思う?」

「苦労する中間管理職とか上を泣かせる鬼畜技術者しか思い浮かばない。領民はそこそこいい暮らしできそうだけど苦労しそう。」

「ああ、いとしいおにー様をどういう目で見ているのかな?」

「おにーちゃんはこんなにデブってはげていないの!」

「ひ、ひどい・・・・・・・・・・」


いい年したおっさんがイジケテモかわいくない。半分ネタだったのかすぐに復帰して

「私に世界を求めるなよ、勇者であることを私も含めて否定された残りかすで世界を回すのは今いるものが迷いながらでも行うものだろう。私はこの世界の被害者で私が行えば世界に対する復讐を行いかねない・・・・・・・・・・・・・・私は認め許しているがそれでもいつ世界に対する復讐心が表に出るかわからないのだよ。」

「おにーちゃん・・・・・・・・・・・・・」

「まぁ、こんななりだからよいことをしても悪役にしか見られないのだから表に立ちたくない。」

「おにーちゃん、しんみりして損した!だからやせようよ!」


どうしてもそこに持っていきたい死霊っ子(元)

気持ちはわかるけど太っているのがやせるのは本当に大変なんだから無理難題を言うのはやめよう。ダイエットというのは地獄である。それにデブでもはげていてもいい人なんだからいじめよくない。


いい人ですけどいい人にはなれないのは彼の彼足る所以ですわね。(by醗酵神)

悪い人ねといわれるくらいで・・・・・・・・(by恋愛神)


女神様方、それは残酷です。


「神官さん、でも神官さんほどのきけ・・・・・・重要人物がどうしてここで御菓子やさんやってられるの?」

危険人物といいそうになった孤児っ子じろりと睨まれてタジタジになっていたりするのだがそれはそれ。思っていても言って良い事といけない事があるのを身をもって体験したようである。

「それあたしもしりたーい。」


便乗する死霊っ子(元)、結局は歴史の大まかな流れしか話してもらっていないし個人的なことは語ろうとしていない。歴史の大きなうねりの中で自分の事は語らない、この世界は自分達の手で進んでいて異世界人(よそもの)は関係ないとばかりに自分のした事を語ろうとしていない。


「まぁ、たいした事はしていないが・・・・・・・・・・・」

と前置きした上で語り始める。

「死霊っ子、お前達が旅立ってから【魔王勇者戦争和平合意】が千年の時を隔てて結ばれたのは知っているだろう。とはいえ、実際的な戦闘行為をしていたわけではないのだが敵国同士だったのがすぐに仲直りというのは難しいわけだ。って、言うか相手がどんな奴か判らないと言うのが一番すんなり行くのかな?【狭間】とかを通さなければ交流が出来なかった訳だからな。そこにどんなのが住んでいてどんな神を信じていてどんな物を食べているかぜんぜん知らないわけだ。そんなら相手を知るにはどうすればよいのか?単純だ飯食って話をして洒落で住む範囲で喧嘩をすればよい。」

「喧嘩って・・・・・・・・・下手したら戦争じゃない。」

「まぁ、喧嘩というよりは力比べみたいなものだな。それが前にも話したと思うけど【人間将棋】だの【金貨菓子祭り】だったりするのだ。それに巻き込まれて10年ばっかりは世界中を回ったぞ。その間で姐さんと女騎士を娶る羽目に・・・・・・・・」

「娶る羽目っていやいやだったんかい?」

「あら、政略的な部分があったのは否定致しませんけど・・・・・・・・・・」

「美人な奥さん達で私は大満足です。だけど経緯を見れば娶る羽目にというのはおかしくないと思うけど、酔っ払ったときに嫁金の話をして高嶺の花になってしまった姐さんとか、【壷漬鰊】の被害者同士の話で盛り上がってどうせならば国外で嫁入り先でも探そうと万国友好使節団(通称)に参加してそのまま私の所に転がり込んで来た浮草とか・・・・・・・・・恋愛というよりも流れで結ばれた気がするんだが・・・・・・・・・・」

「結婚なんてそんなものだろ。なに夢見ているんだい。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・婚約者に振られて婚期を逃した私にえり好みする自由はありませんでしたし。それに故国(芒種国)でも大歓迎でしたわ。外交に強い人材と縁続きになれたって・・・・・・・・実際の話幾つかの案件であなたの力添えで話がまとまったのはありましたし・・・・・・・・」

「あの件は場所と飯を提供しただけだろう。」

「なんか、神官パパってい・・・・・・・ひきっ!」

「何か言いたい事があります?」

「あたしは自覚あるけど面といわれて気持ちがいいものじゃないね。」

ぎろり!

口が滑りそうになった孤児っ娘が養母達に睨まれる。思っていても口にしていいものじゃない。それは勇気といわず無謀というものである。


「まぁ、姐さんも浮草も私のいた所では十分適齢期だから気にしてはいなかったんだけどな。大体30までに結婚できれば十分だったし、この辺は平均寿命とか勤労年齢とか関係しているんだろうな。話を戻すと人員は入れ替わり立ち代りしたけど10年ほどかけて世界中を巡ったわけだ。竜や巨人にビビッて【魔王】が攻めてきたのかと勘違いした村人達が娘を生贄にしようとしたり、古妖精族(アールブ)の長老が生贄娘(貧乳)に女性の価値はおっぱいだと言い切って女性陣の私刑にあったり【魔王城】で腐女子の腐った会話に魔王がぶちきれたり・・・・・・・・・・・馬鹿みたいな事が色々あったけど【金貨菓子祭】は【紅鱒港国】が主催となって数年に一度細工技術の祭典みたいな形で落ち着いたし、【人間将棋大会】も【決闘神殿】や【娯楽神殿】が受け持ってくれて【聖域守護辺境伯私設魔術師団】が世界数十箇所同時中継する【同時中継魔術】を開発したからこれも私の手を離れて・・・・・・・・・・・・世界中に色々な者がいることに馴染んでいった訳だ。【人間将棋大会】の観覧にかこつけて様々な国際会議を行ったりして私がお呼びでない状況になったわけだな。こういう政治の世界は面倒くさいから早々に離れるに限るとここに居を求めて小さな菓子屋を開いたわけだ。ついで言えば旅の途中で拾った孤児っ子とか姐さんや浮草との間に出来た子をゆっくり育てる事が出来る場所が欲しかったのもあるけどな。ここならば【聖徒の都】や【西方平原国】の便も途切れないからそれほど不便ではないし未だ旅をしている面々を通じて情報も手に入る。ゆるりと隠居するにはちょうどよい場所だ。」


作業の手を止めずに勇者(笑)は語る。

「でも、おにーちゃん神官様じゃない。普通だったらどこかの神殿とか任せられるんじゃないの?」

「・・・・・・・・・・えっと、私どの神の神官なのでしょうという話が出て特定の神に仕えているわけではないから・・・・・・・・・・・・神々に仕える神官・・・・・・・・という触れ込みで特定の神殿に入る事はないわけだし【神殿協会】の講師とか孤児院の外部監査役みたいな話はあったんだが、講師のほうは臨時ではあるけど専任となると教える分野が・・・・・・・色々な神殿とかぶってしまうんだ。それ自体は構わないんだが向こうの方が専門だから私の出番はない。孤児院の監査役は今でも名前だけはあるかな?とは言え監査役で仕事する必要がほとんどないし暇なんだよな。あと【聖徒の都】って食料生産量少なくが外部に頼っているせいか飯が・・・・・・・・げふんげふん・・・・・・・・・・・・【西方平原国】との交易路にあるこの街に移ってきたわけだ。」

「あんた、この町に移ってきた理由って・・・・・・・・・・【聖徒】の飯まずだったんかい?」

「その割には美味なる店をよく知っていましたわね。小僧っ子さんの『注文の多い料理店』とか東南門子爵の眷属料理人が腕を振るう『生臭坊主』とか・・・・・・・・・」

「毎食外食するわけ行かないだろ、材料も手に入らないのが多いし取り寄せだと手間が・・・・・・・・あと名前挙げた料理店は私が手を入れているから新しい味との出会いが・・・・・・・・・」


ジト目で見つめる孤児っ子死霊っ子(元)達を知らん顔しつつ

「私が表舞台に立つことはあってはならないのだよ。この世界の事はこの世界の住人達が自分等の足で立って自分等の頭で考えて自分等の手で作り上げるものだ。【聖徒の都】や【狭間の王都】、【魔王城】にいれば栄達も出来たろう。私のような【勇者】に頼る時代は終わりだ、年金分の仕事もしたしな。楽隠居くらいさせてくれても良いだろう。隠居暮らしといっても年金だけでは心もとないのでな菓子屋を開いたんだが・・・・・・・・・・・何故か孤児っ子を使っていると孤児院と勘違いされて・・・・・・・・孤児っ子達に読み書き教えていれば私塾と思われるし・・・・・・・・・・今何をやっているのだろうかと思ったりもしている。」


「なんか、流され型と言うか巻き込まれ型のおにーちゃんらしいね。」

死霊っ子(元)は体型が変わってもやってることが変わっていないと思ったのは秘密である。




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