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10,正式店名なんてものはうろ覚えな物で

死霊っ子(元)が訪れてから十日程が経つ。数十年ぶりに出会ったのだから一月くらいは世話になるつもりだったらしい。勇者(笑)としてもその位は負担のうちにはならないだけの稼ぎを持っている、菓子屋の収入に加えて【聖徒】からの年金やら種々の事業配当なんてものがあるので子供達を抱えていても贅沢しなければ食べていけるのである。

その間に彼女がしていた事と言えば勇者(笑)に引っ付いて色々思い出話をしたり手伝ったり、前世と変わらないのである。


所で死霊状態を前世と言えるのだろうか?(by作者)


しらんがな。


勇者(笑)こと神官さんは相も変わらず甘いものを作り子供達を甘やかし甘い世界を夢見て体現しようとしている。そんなこんなで今日も子供達の鍛錬を見たり礼法の師として町になじんでいる奥さんその二こと女騎士浮草の君に甘いものを差し入れる。今日は鍛錬を見る日だったようだ。


「浮草、檸檬の蜂蜜漬だ。」

「あら、まぁ」

「一緒に鍛錬している子達にも一切れづつくらいは分けな。」

「そんな、私に全部くださるのでは・・・・・・・・・・」

「おいぃ!」

「冗談ですわ。みんな、甘き菓子(勇者(笑)の別称)からの差し入れよ。」

「神官さんゴチになります。」

「あまーい。」

「女騎士さんのしごきの後に食べるととても・・・・・・・・・・・・・・・おいしいです。」

「この程度でしごきって・・・・・・・・・」


まぁ、菓子作るだけに甘いお人と言われているのは笑い話、彼の奥さん浮草の君こと女騎士が丹精して育てている子供達に体が欲しがっているであろう糖分その他を与えるためにちょっとしたおやつを用意するのである。

女騎士こと浮草が一切れつまんで口の入れ甘酸っぱさにちょっと表情を歪めるのを愛い物を見るような目で見る勇者(笑)子供達もそれに続いて色々な表情を見せている。

そんな中でも檸檬の蜂蜜漬を見て色々思いつく子もいるのである。敢えて教えてなかったが自分なりにどうしたらと言うことを思いつくのは良い事である。


「ねぇ、神官さん。これって水で割ったらだめなの?」

「従士さん所の子、そういうのもありだぞ。寒い時ににこれをお湯で割って飲むのも良いな。風邪の予防にもなる。」

「ちょっと試してみていい?」

「良いとも」

「これをお菓子に混ぜてもおいしそう。」

「はははっ、実はこれを混ぜた菓子もあるんだ。」

「な、なんだって!ここの『剣の菓子屋さん』の菓子を全種類食べていたのに・・・・・・・・・・」

「粉屋のお前には酒精分のある菓子とか期間限定の菓子は食べていないだろう。」


がーん!


そりゃそうだ、『神官さんの菓子屋』では日替わりの商品もあるし市場調査って程ではないが試作品も店に並ぶ。更には弟子達が普段店には出さないが技術を学ぶために作ったものも時折並んでいる、その数百にも近くなる。それらすべて食べて網羅している客なんて・・・・・・・・・・・・常連さんでもそうはいない。(注:一人もいません)

ましてや子供の小遣い程度で・・・・・・・・・・粉屋の子は自分の食べていない味があることに愕然とするのである。


「普通に『剣の菓子屋さん』ってなんだよ。」

「だって剣術道場併設のお菓子屋さんだろ。」

「ちがうよ、『神官さんのお菓子屋さん』でしょ。」

「『猫のお菓子屋さん』で『ね・・・・・・・・・』もがもが・・・・・・」

「それはいろいろ問題あるから・・・・・・うちが猫だまりになっているのは否定しないけど。」

「ほとんどが内から巣立った子ばかりだけど、なんで戻ってくるのかしら?」


にゃん

にゃー

うみ

うにゃ


そりゃ、暖かくて安全でおいしいものがあれば猫も居つきます。少々子供達が猫かわいがりするからちょっとうるさいのだが、お菓子屋さん(?)の庭には猫が常にたむろしている。


「そういえば、この店の正式な名称って?」

「『創菓が・・・・・』・・・・・・うぎゃー!」


ばりばりばりばり・・・・・・・・


そのネタは危険だろうがぁぁぁぁぁ!(by節制神)


危険な発言をしようとした勇者(笑)に神の鉄槌(つっこみ)が下る。本当にこの店は店名がころころ変わる。そんな勇者(笑)の様子を子供達はいつものことのように流している、女騎士も呆れてみなかったことにしている。


「なんかすごい音がしたけどどうしたの?きゃー!おにーちゃーん!って、節制神様の雷霆(つっこみ)じゃない。」

外で大きな音がしたので何事かと思ってきてみれば神罰が下って黒こげになっている姿である。その姿を見て平然としている死霊っ子(元)彼女も大概である。


「いつつつつ・・・・・・・・死ぬかと思った。」

「普通原型とどめていないと思うんだ。」

「常日頃から神力抵抗鍛えてなかったらやばかったな。」

「どうやって鍛えるのさって言うか神官さんがそんなの鍛えたらだめでしょう!そもそも神様に仕える人が神様と相争うことを前提の鍛え方するっておかしいよ!」

「はははははっ!私が神官なのは高度な政治判断の末に身内に取り込めという【神殿協会】と【人族連合】の懐柔策だからな。【神殺し属性】もっているしね。」

「確かに政治判断だよねぇ・・・・・・・・」


当時の事を知っている数少ない一人である死霊っ子(元)は呆れた目で見ている。当時の【聖女】の乱行・・・・・・・・・・・主に腐属性的な言動とか死霊団逃散とか・・・・・・・・・・・・に巻き込まれて口止め代わりに地位をもらった、次いで言えば年金を渡す口実でもあるらしい。


「実は神官さんってすごい人?王様とか神殿に取り込めと言われるんだから。」

「さぁ、どうなんだろうね。私は隠居爺だし。」

「あんまり爺爺言わないでくださいます。私まで年取った気分になるじゃないですか。」

「浮草、お前は今でも美しいよ。」

「はいはい、お世辞と聞いておきますわ。」


女騎士の口の端が心なしか喜んでいるように見えるのは気のせいだろうか?

「この甘き菓子(勇者(笑)の事)は【和平会議】の立役者の一人ですのよ。【悪相卿】を教え導いて彼が世界平和を願う【和平案試案】を作る手伝いをしたのです。【和平会議】では助言者の一人として多くの王に平和の大切さを説いて教え諭したのですよ。」

「おおっ!」

「王達が気楽に話し合えるように快適な旅路の方法を事細かに調べ教えたのです。そのお蔭で様々な物が手に入るようになりましたし、旅路で倒れる者の数が格段に減ったのです。」

「その方法売れば金になったんじゃない?」

「この場合は多くの者が安全で快適に旅ができるようになることが大事なんだよ。どうしてだかわかる?」

「うーん、なんだろう?」

「私一人だと運べる量が限られるだろう。10人いれば10倍運べるよ。」

「おおっ!それに10人いれば色々いけるもんね。」

「そうそう、それに私だけ知っているといつまでも腰を落ち着けることができない。あの当時は王様の旅に私がいると快適な旅ができると国同士で争いが・・・・・・・・・・【和平会議】で戦争起こすわけいかないでしょ。」

「うん。」


戦争は起こしていないけど飯テロは起こしまくっていたんだけどな。(by盗賊神)


「とーぞくしんさまぁ、飯テロって?」

飯テロっていうのはな、お腹空かせている人の前でおいしそうな食べ物を食べたりその話をする嫌がらせ行為だ。(by盗賊神)


一応補足しておくと本当に飢えている者に対しては慈悲深く施す。同道の者にもおすそ分けくらいはする。群れと群れ以外と分けるところはあるが・・・・・・・・・・・

「こらこら、そんなにすごい事した覚えは・・・・・・・・・・・・・・・結構あるなぁ、主に【極北】で」

「確かにおにーちゃんは【極北内海】で食事騒動起こしていたり料理対決に水差していたりしていたね。船乗りさんから『船団崩し』なんて二つ名をもらっていたじゃない。」

「そんなの聞いた覚えないぞ。」


話は脱線する。本日の鍛錬は流れ解散となるようだ。

女騎士は汗を流すために水場へと向かい、勇者(笑)と死霊っ子(元)は店の様子を見るために戻ろうとしたとき

「『菓子作る神官様』の店はこちらで宜しいか?」

一騎、どこかのお付の者の雰囲気をしている男が声をかけてくる。

「ああ、『菓子作る神官』と呼ばれるのは私だが。」

「神官様と知らず失礼いたしました。我は芒種国のとある伯爵家で禄をいただいている小者である。此度は当家の一行が暫ししたら当地に到着する故、茶と茶菓子の用意を願いたい。」

「ご用件承りました。何名ほどの席を用意すればよろしいでしょうか?」


席の確保と食事の予約だったらしい。彼が快適な旅路について教えを広めてはいるが旅路は基本不自由である。こういった土地土地の美味を食べて気晴らしすることも必要なのだろう。小者は更に

「いやぁ、この店にたどり着くのに苦労しましたぞ。土地の者に聞いても誰一人同じ店の名前を言わぬし、この街には菓子屋が多数あるのかと悩みましたよ・・・・・・・・・・『孤児院菓子屋』だの『道場菓子屋』だの『みけや』に『ね・・・』おっと、これは言葉をつづっちゃいけない雰囲気の店名まで・・・・・・・・・・・実際の所正式な店名あるのですかな?」

「うむ、『減量殺し』という店名だな。」

菓子作る神官こと勇者(笑)が視線を向けると店の入り口に菓子の絵と『減量殺し』と書かれた看板がある。


「おにーちゃんいつの間に・・・・・・・・・・・・・・」

昨日まではなかったらしい。

「ほぅ、神官様なかなか洒落の効いた店名ですな。その菓子はとても魅力的であると・・・・・・・」

小者は信じ込んでいる。彼は店の店名が気まぐれで変わっているのを知らない。


「姐さーん!」

この店名とその後に起こるであろう惨劇を予想して死霊っ子は助けを求めて駆け出した。


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