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魔界な人々

被り食堂給仕な私とエリート護衛官な常連さん

お久しぶりですみませぬ(泣)

被り物よーし、気配変化かくにーん!

今日も仕事頑張るぞ。


「いらっしゃいませ」

魔王城にある食堂は朝から晩まで賑やかだ。

まさに夜中から夜中までの一日営業中だ。


「注文をたのむ」

真紅の護衛官の軍服を着た緑のガタイのいい竜人が手を上げた、いつもくる常連さんだ。

向かいには優美な白い髪の中性的な超美形な男性が興味深そうにあたりを眺めている。


おお、美形だ~白い美形は明らかに高位魔族だ~。


「は〜い、お願い致します」

私は端末をもって入力ペンを構えた。

「大盛り親子丼2つにチャーシューメン一つハムエッグ両目で一つオレンジ生ジュースとパインアップル生ジュースを一つずつでいいですよね、若さん」

護衛官が白い人に確認した。

「ええお願いします」

白い人が白銀目を細めて極上の微笑みを浮かべた。

うけたまわりました」

私はニッコリ微笑んで頭を軽く下げた。

「今日は何被ってるんだ? 」

呆れたように常連さん……ティインさんがニヤリと笑った。

「別に被ってませんよ」

私はニッコリ微笑んだ。

魔獣猫ロンロンをかぶってまーす。

常時発動中ですといえません。

気配がやばいので絶対に外せませーん。

「そうか、頑張れよ」

全然信用してない顔でティインさんがヒラヒラ手を振った。


えーと被ってるの読まれてる〜? 

ハハハ、まさかね〜。

そう思いながら私は厨房にむかった。


私は魔王城の社員食堂の給仕をしている。

バイトでなくて正社員だ。


クラーケン族と上級人型魔族の血を引いてるのでクラーケン族の癖に足が四本……いえ腕が二本に足が二本の……はあ……本当にほとんど人型っていうのがね……


ま~ったくクラーケン族の特徴がないんだよー。

なんか泣きたくなってきた。

きちんと猫ロンロンのお陰で獣人気配になってるよね。


オープンキッチンの方でお母さんが八本あるうちの一本の足をふってよんでる。

「料理あがったよ」

お母さんがもう一本の足でポイッとカウンターに料理を置いた。

クラーケン族ならいっぱい持てるのにと思いながらトレーにのせていく。

「飲み物もできたよ」

ジューサーからグラスに注いでお父さんがトレーに置いた。


セクシーな八本あしのクラーケン族のおばちゃんなお母さんとどっか浮世離れしてる緑の瞳のナイスミドルの上級人型魔族のお父さんが私の親で社員食堂のオーナーをしてる。


つまり経営者側なんだけど今は修行中だしあと継ぐのは多分人界に料理修行中の兄ちゃんだから将来的にどうしようかとは思っている。


この厄介な体質がなぁ……もっと強ければいいんだけど〜。


料理を常連さんのところに持っていくと雰囲気が違った。

「エリカに虫がついたとはどういうことですか? 」

白い美形が静かに聞いた。

く、黒雲背負ってるようにみえますよ……美形さんー。

「アウスのやつの話によるとヨルムンガルト族の軍人と良い雰囲気らしいですよ」

常連さんがため息をついた。

いつも以上の苦労性オーラだね~。

「お待たせいたしました」

私はそっと横から料理を置いた。


せめてうまいもんでも食べてストレス解消してください。


「ありがとう」

常連さんが料理を見て微笑んだ。

うんうん、うまい料理は笑顔の元ですよね~。

「美味しそうですね」

白い美形がチロリと口元をなめた。

美形さんも黒雲沸かしてないでお食べ。

「ここのはボリュームがあっておいしいですよ」

常連さんが親子丼を美形さんに渡した。


ボリュームも味のうちですから。

まあ、場所柄軍人さんも多いしなぁ。


「ケシュアちゃん、注文! 」

他の常連さんが手を上げたのでそちらに行きながら美味しそうに食べる常連さんたちにニンマリした。


やっぱり料理関係の仕事はいいなぁ。


ああ、申し遅れました、ケシュア・ウラシュルと申します、お父さんは翠家(スイケ)出身だけど私は単なる中級人型魔族です、クラーケン族が混じってるので……絶対に中級人型魔族がメインクラスって家族以外に知られちゃいけないんですよーん。


お兄ちゃんはクラーケン族がメインクラスなんてずるいよ〜。


「はい、お待たせしました、カツ丼とラーメンセットにレモンスカッシュです」

猫ロンロンかぶり直して常連の緋色の軍服の魔王城軍人のおっさんに料理をおいた。

「ありがとう、ケシュアちゃん、今度俺とデートしない? 」

丼をおいた手をにぎられた。

どこか獲物を狙う目で色っぽく魔王城軍人のレスタのおっさんニヤリとした。


確か、上級魔族だけどたらしすぎて問題おこして護衛官になれなかったって聞いたような……

いい人なんだよ、たらしなだけでお菓子くれるし。

でも、最近変なんだよね。


「い、いやですね、ご冗談を」

私は少しひ汗を出しながら愛想笑いを浮かべた。


こ、このレスタのおっさんも一応上級魔族だからまさか被ってるの読まれてる?

た、単なるナンパだよね~?


「あ、デートが嫌なら食べ歩きでもいいぞ、いい店が……」

レスタのおっさんが手を握ったままニヤリとした。


く、弱点バレてるー食べ歩き……


「え、えーと〜」

私は後ずさった。

手、手をはなしてくださーい。

「その後にまったりとホテルで……」

レスタのおっさんが色っぽく迫った。


く、喰われる〜。

生命以外の危機を感じるよ〜。


「ケシュアちゃんはあれだろう? 中級人型……」

レスタのおっさんに妙に甘い声で囁かれてゾクッとなった。


猫ロンロンも逃げかけてる〜。

にゅ〜っと耳が出かけてる、わーんバレたら餌食?


「いい加減にしろ」

聞き慣れた声がして手を引き離してもらった。

見上げると常連のティインさんが後にいたよー。


わーんドキドキ? て、手首つかんでます。


「竜人の若造護衛官が邪魔しやがって」

レスタのおっさんが舌打ちした。

「嫌がっている女性を無理強いはいけません」

白い美形さんがやっぱりどこか黒いものを背負って微笑んだ。

料理癒やしになりませんでしたか?

「白家の……ケシュアちゃん、からかって悪かったな」

レスタのおっさんは取り繕ったような笑みをうかべた。

そのままカツ丼をガツガツと食べだした。


良かったー冗談だよね〜。

でもなんか変だからカツ丼食べて悩みをこの瞬間はどっかに飛ばしておくれ〜。


それにしても中級人型魔族ってバレかけたような……


人型魔族って言うのは色んな種族居る魔界で特徴の無い種族、もちろん魔族だから魔力も使えるけどほとんど人間と同じような種族でーす。


特徴がないということは他種族とこどもを作ると特徴はそちらの種族の特徴をそのまま受け継がせることができる、人間と作った時みたいに力を減らさずにというのが一般的な考えでーす。


ただし、今、人型魔族は下級と上級しかいないと言われていまーす。


下級人型魔族に上級魔族が子供を作らせるのは魔力を常に適量注ぎこまないと無事に生まれないし、上級人型魔族の場合、下手に力負けすると子供が出来無いか全て人型魔族となってしまうのでーす。


昔は中級人型魔族もそこそこいて魔力調整もリスクもなかったから全て上級魔族に取り込まれて絶滅? したらしい。


え? 私ですか? えーとお父さんが現魔王を輩出した翠家出身の上級人型魔族なので下級すれすれ中級クラーケン族のお母さんじゃ力負けしますよね? お兄ちゃんはなんとか中級クラーケン族、私は完璧に中級人型魔族……つまりバレたらそく上級魔族の餌食なので猫ロンロンとか犬キュキュとか被ってというか憑依させて仕事してまーす。


まだ手を持ってるティインさんと白い美形さんニコッとごまかし笑いをして逃げかけてる猫ロンロンを再び憑依させました〜。


危ない危ない


「ありがとうございま〜す」

「……いつでも被ってろよ」

ティインさんは私の頭を撫でた。

白い美形さんが面白そうに見ていた。


そんな獲物を見るような目で見ないでくださーい。


と、ともかく気をつけないとね〜。



魔王城内にコンビニができて嬉しいんだけど、引きこもりがちになって困るよねー。

でも新作は気になるのさーん。

「緒花牧場の生キャラメルに桜餅アイスサンデーかぁ~」

コンビニの陳列棚の前でニンマリしながらカゴに入れた。


店長、ニンマリさんがニンマリしてるにゃとバイトの黒猫獣人がいって妖精族の店長ににらまれてるよー。


あ、バックヤードに逃げた。


ニンマリさんっていうあだ名なんだね。


「ムー、俺は食堂の方が良いだが? 」

「ティイン、今日はお前のお気に入りのウェートレス殿はいなかったではないか」

緑色の竜人と青白い竜人がコンビニに入ってきた。

「かぶりちゃんな、可愛いよな〜」

ティインさんが腕組みした。


か、かぶりちゃん……可愛い?

かぶりちゃんってあだ名なんだねー。


「いらっしゃいませっす」

妖精店長が妙に嬉しそうに笑った。

「ユリ、騒がしてすまん」

青白い竜人のムーさんが微笑んだ。


親密そう……男カップルに見えるけどたしかムーさん女性だよね。


ムーさんも後輩のジーさんもウチの食堂の常連さんです。


「まあ、かぶりちゃんがいない食堂行ってもつまらんからいいか」

ティインさんが弁当の陳列棚から次々と商品を入れていくデミハンバーグ弁当にカルビ丼、オムライスに鮭おにぎり明太マヨおにぎり、ツナマヨおにぎり、ソーセージおにぎりと大量買いだ。

「たくさんだね~」

パンの陳列棚の影から見てた私は思わず言った。

「…………なんでかぶりちゃんがいるんだ? 」

ティインさんが驚いた。

「新作チェックでーす」

手を頭に当ててテヘっと笑ってみた。

ティインさんの手が止まった。


変だったかな?


「ティイン、そういえばエリカさんがヨルムンガンド族の男といい感じだと言ってたな、若様はどうされるおつもりだ? 」

ムーさんが手を握り合っている店長さんから視線を外して聞いた。

「あ……ああ、エリカか? まあ、若さんは観察すると言ってたぞ」

ティインさんが私から視線をそらした。


そ、そんなに変だったのかなぁ。

涙が出そうだよ。


エリカさんも気の毒にとムーさんが言った。

その間も握り合ってるってどんだけ仲いいんだろう。


「かぶりちゃんも観察したいと言ってたが」

ティインさんがそう言いながらポイポイおにぎりをカゴに入れまくってる。

「それは面倒だな」

心底気の毒そうな目でムーさんに見られた。


そ、そんな面倒な人なんですか?


「あのー私、普通の魔族で~す」

小首をかしげてみた。

なぜかティインさんが鼻を押さえた。

そんなに変かな? 

犬キュキュは抜けて無いよね?

「このむっつり」

ムーさんが半眼でティインさんを見た。

「むっつりじゃねぇ! 」

ティインが叫んだ、ついでにサンドイッチをものすごい勢いで入れはじめる。

「オープンすけべだにゃ? 」

バイト黒猫がバックヤードから箱を持って帰ってきた。

あのたこ焼きチップス新作?

「まあ、気をつけたほうが良い、ウェートレス殿」

ムーさんが心配そうな顔をした。


気をつけるって……どっちをですか?

それよりティインさんの山盛りの買い物カゴが気になりまーす。


わ、こぼれるとティインさんがレジに置いた。

あんなに食べるのかなと思っちゃったよー。


ティインさんってなんか可愛い。


まあ、気をつけながら仕事しますよ〜。


前言撤回〜。

わーん気をつけてもダメなんてひどい〜。


食堂では魔王城内限定で出前をするのでーす。

白家の部屋からの依頼でチー玉ハンバーグステーキセットと卵ドリアとポークソテー定食とパイン生ジュースと葡萄生ジュースとイチゴミルクなのでーす。


「ふーん……ふだんから猫ロンロンを常備なんですね」

白い美形……ヘルスチア・白・パール様が部屋のソファーに座ったまま笑った。

「……ありがとうございました」

少し動揺しながら指定されたテーブルに料理を置いた。

「大変面白いです」

ニコニコとその前に座るヘルスチア様が私の手を握った。


お、面白いってなんですかー?


「あ、あの」

「私はあなたに大変興味があります」

2つに割れた舌がチロリとヘルスチア様から出た。


えーとたしか白家だから蛇神とか竜神とかそういう魔族ですよね〜。


な、なんか捕食されそうで怖い。

手のひらサイズのぶち猫な猫ロンロンがぬけてみゅー鳴いてとコロコロ床を転がった。


拾わないと逃げちゃいますー


「ヘルスチア兄ちゃん、なんかよう?」

扉が空いて丸っこい龍人が入ってきた。

あんな丸っこいのに血赤の魔界軍人の格好してる。

「おや、エリカ」

ニッコリとヘルスチア様が笑った。

「若、あんた何やってるんだ? 」

あ、うしろからティインさんも来て頭抱えてる。

「美味しい料理と楽しい魔族の一石二鳥なので」

「若〜」

「ヘルスチア兄ちゃん、無理強いはダメだよ」

エリカさん? がかわいい声で言ってため息をついた。

「エリカ、ヨルムンガルト族の男といい感じだそうですね? 」

全く手を離さずヘルスチア様がエリカさんを見つめた。

「ヘルスチア兄ちゃん、グリシスさんは関係ないと思うけど」

「エリカは白家の分家イルの跡取りですからね、相手の素性は調べておかないと」

「グリシス少将はいい人だもん」

「アウスもそう言ってましたよ、若」

ティインさんがそう言いながら私の手をヘルスチア様から離してくれました〜。


か、帰ろう。


「観察中です、ところでティインはいつ彼女に告白するんですか? 」

ヘルスチア様がパインジュースのメイソンジャーの蓋を開けながら聞いた。

ティインさんが私の顔を見た。

「若〜冗談をやめてください〜」

「ためらうと取られますよ」


と、取られる?


「中級人型魔族ですからね」

ヘルスチア様がコロコロ転がってきた猫ロンロンを蛇のしっぽで捕まえて私に差し出した。


ええー私初めて見た〜。

とぽっちゃり龍人がキラキラした目でみた。


猫ロンロンを受け取って慌てて憑依させた。


「さて、エリカと話すのでティイン、送ってきてあげてください」

「ええ? 私は話すこと無いよ」

丸っこい軍人さんはたじろいだ。

「えーと大丈夫ですよ〜」

ありがとうございました、お皿は後で回収するので廊下に出しておいてくださいと言って白家の部屋から出た。


ティインさんが困った顔してたもんね〜。

ちゃんと一人帰れる良い子です~。


空のおかもちを持って廊下を歩いていくと牛のような曲がった角を持った褐色の肌の緋色の魔王軍の軍服を着た筋肉質の男性……レスタのおっさんが廊下で腕組みして待っていた。


「さ、食べ歩きに行こうぜ」

「え……約束してませんよ」


今、昼間ですよ〜仕事はどうしたんですか?


「えーと」

「人界のヨコハマ中華街なんかどうだ? 」

「あの、その」

「トウキョウのフレンチレストランにするか? 」


わ、どっちも行きたいです、じゃなくて〜。

あきらかにギンギンギラギラな目で見てるです〜。

違う……私を見てるんだけど……


「ホテルラコリーヌのルームサービスも評判がいいみたいだぜ」

レスタのおっさんが近づいてくる。


ホテルラコリーヌって人界の高級ホテルですよね〜。

ルームサービス興味あえりますけど……その前に喰われる……ですよね?


その割にどっかおかしいんですよー。


「あのお断り……」

私は後ずさった。

うん、レスタのおっさんは恋愛対象じゃなくて常連さんってだけでーす。

「遠慮するなって、中級人型魔族なんだろう? 」

レスタのおっさんがはっきりと言った。


私の逃げようとする足が止まった。


や、やっぱりバレてましたー。

猫ロンロンが抜けそうになる。


「そうだよな、中級人型魔族だよな。」

レスタのおっさんがそう言いながらどこか思いつめた様子で私の手を握って引き寄せようとした。


男性の職業軍人の力にはかなわずひきよせられる。


わーん、セクシーな八本足があれば柱にでも巻き付いてやり過ごせるのに〜。


絶体絶命!? 猫ロンロンがぬける〜。

頭から手のひらサイズの丸っこい三本しっぽのぶち猫がにゅーっと抜けて廊下にコロンと転がり落ちてみゅーとないてコロコロ転がった。


早く回収しないと逃げられちゃう!


「離してください」

私はレスタのおっさんの顔を見て息を飲んだ。

どこか狂気じみた表情で私をみて、これでやっととつぶやいている。


「俺は……今までのままでよかったんだ」

レスタのおっさんがわけの分かんない事をつぶやいて私を引き寄せた。


どうしよう……いつものレスタのおっさんじゃない、怖い。


涙が流れ出る、怖い……怖すぎる。


後ろから足音が聞こえた。


「やっぱり送るぞ」

聞き覚えのある声がして涙が出た。


レスタのおっさんが気がついたように私を肩に抱えた。

「ティインさん〜助けてくださ〜い! 」

泣きながら私は叫んだ。

慌ててレスタのおっさんが駆け出した。

「かぶりちゃんを離せ! 」

ティインさんが……ティインが……おってきてくれてるよ〜。

「ティインさ~ん、たすけてくださーい」

私は絶対に離さなかったおかもちを持ってない方の手をバタバタした。

「かぶりちゃん!」

ティインさんは戦斧(ハルバード)を虚空から呼び出してレスタのおっさんの背後から斬りつけた。

「あぶねぇな、こいつは俺のものだ」

レスタのおっさんが狂気の入った声でつぶやいて私を抱えたままかわした。

「かぶりちゃんはモノじゃないぞ」

ティインさんがさらに私に当たらないように足を狙って戦斧をつき出すが当たらない。

「この戦闘ジャンキーめ!」

ティインのおっさんがうっとおしそうに避けた。

竜人はたしかに戦闘ジャンキーと言うのが有名だけどこれは違うと思う。

やっぱりレスタのおっさんおかしい?

「かぶりちゃんを離せ! 」

「俺の……俺の生き方に口を出すな! 」

レスタのおっさんが私を床の落とした虚空から刀をとりだして振るった。


い、生き方?

というか腰を打っちゃいましたー、痛いです〜。


「別にあんたの生き方に興味はないが? 」

レスタのおっさんの刀を受けてティインさんが怪訝そうな顔をした。

「俺は、別にあとなんか継ぎたくねぇ! あいつさえいればいいんだ! 」

「あいつ? 」

「中級人型魔族はあいつのためにいるんだ! 」

レスタのおっさんが訳わかんないこと怒鳴りながら刀でティインに斬りつけた。


わけがわからないなとティインがよけながらつぶやいた。

次の瞬間レスタのおっさんが床に転んだ。


みゅーと猫ロンロンがレスタのおっさんの足元から転がった。

つ、つまずいた?


「あんたの事情は知らないがこんなかぶりものして魔王城の片隅で頑張ってる娘を巻き込むな! 」

ティインさんが床に転がるレスタのおっさんの首元に戦斧を突き付けた。


か、片隅って雑草みたいですね〜。

なにげにひどいですよ。


「お、俺はあいつのためなら何でも……」

痛そうにしながらレスタのおっさんがぐすぐずわめいた。

「あいつとはだれだ? 」

ティインさんがレスタのおっさんをにらみ付けた。


そうだよねーそんなよそ様の為に好きでもない人のものになりたくないです。


「……俺の愛しい……」

「エスメラルダちゃんですか? 」

ヘルスチア様がゆったりとした歩みで現れた。

後ろには疲れ切ったらしい丸い龍人がついてきている。

「エスメラルダさん? 」

私は小首をかしげた。

「許してくれ」

ガックリと床となかよくしてレスタのおっさんがつぶやいた。


許してくれってなんですか〜?


「一体どういう……」

「許してくれ〜エスメラルダ〜」

レスタのおっさんがガバッと起き上がった。

そのまま廊下を全力疾走して逃げていった。


「おやおや、逃してしまいました」

楽しそうにヘルスチア様はしっぽで猫ロンロンを私に差し出した。

みゅーみゅーと猫ロンロンが抗議してるので受け取って憑依させる。


ちょっとヘビ臭いです~。


「若、事情は知ってるんだろう? 」

ティインさんがヘルスチア様をチラ見した。

「彼は角家(カクケ)本家の魔族です、まあ、情報は自分でしいれるものですよね、エリカ」

ヘルスチア様がニコニコと丸っこい龍人を振り返った。

不本意だけど情報は力だもんねと丸っこい龍人がから笑いした。


「まったく、若とエリカはいらん所で似てる……ともかく危ないから当分送り迎えするぞ」

ティインさんが苦笑いした。

「え……ご迷惑なのでは? 」

「かぶりちゃんがいやじゃなければ、俺の心の安寧の為に送らせてほしい」

ティインさんが爽やかに微笑んだ。


「お邪魔虫退散いたしますね」

ヒラヒラと手を振ってヘルスチア様がエリカさんをうながして去っていった。

もう話すことないもんと言いながらエリカさんもついていった。


「行くぞ」

ティインさんが手を差し出した。

思わず掴んで顔を見上げた。

「い、いいんですか? 」

「ああ」

ティインさんがプイッと横を向いた。

「やっぱり迷惑ですよね〜」

私は手を離そうとして強くにぎられました〜。

なんでですかー?

「迷惑でない」

ティインさんはおかもちを奪って私の手を持って歩きだした。


どうしよう、ドキドキが止まらないです~。

でも、でもきっと鱗家の宗家の白本家の若様に命じられたから送ってくれてるだけですよね〜。


エリート護衛官ティインシス・(リン)・オルスさんが単なる魔王城の社員食堂の娘のケシュアなんて相手にしないですよねー。


悲しくなってきた、せめて今くらいデート気分でいいかな?


たくましい男性の手の暖かさにドキドキしながら本当にティインさんが恋人ならいいのにと思いましたー。


あ、今回の事口止めしとかないと。


「あの、ティインさん、レスタのおっさんとのこと親に言わないでください」

「なんでだ? 」

「バレると父の実家に軟禁されちゃいますので」

本当に翠の一族って女性に対して過保護ですよね~

「……どういう……」

ティインさんは怪訝そうな顔をした。

「父の一族は女性をだしたがらないので」

「わかった」

ティインさんが食堂でミキサーから生ジュースを注いでいる父の翡翠色の目を一瞬見た。


ええ、翠家なので〜。


「ありがとうございます」

「お、おい」

私は笑ってティインさんから離れて手を振った。


これ以上迷惑かけられないです〜。


だが、その時私は気が付かなかったのです〜。

お父さんがティインさんと手を繋いでるのを見ていてどういうわけ? と問いつめられるのを……


恐ろしい、さすが当代魔王陛下の叔父!


ティインさんとは残念ながら単なるウェートレスと常連さんの関係ですよ〜。


私だって恋人だったらすごく嬉しいけど……あんなにかっこいいんだからきっといい人がいますよね〜。


お母さんも嬉しそうにどうしてああなったの〜。ってきかないでくださーい。


悲しいですけどご厚意で送ってきてくださっただけですー。


うん、気を取り直してかぶりモノをしっかりかぶり直して頑張りますよ〜。


それしかないもんね……

猫ロンロンをしっかり憑依させてつぶやいた。

駄文を読んでいただきありがとうございます♥

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