士官
更新が遅れて申し訳ありません。なんとかこれからは早めに更新できるようにしていきます。
黄忠は名刺を受け取ると首を傾げた。
「山田宗一というのか、なかなか良い名じゃの。ところで一つよろしいか?」
「はい、答えられる限りはお答えします。」
「これは如何なる物かの?」
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黄忠さんからの質問はやはり自分が身につけているものなどについてのものが多かった。
「なるほどなるほど。ではそなたはこれからどうする?」
言われてからやっと気がついた。私はこの世界ではまさに無一文というわけだ。人と出会えたことなんてこの際関係ないんだ。
「普通の人じゃと突然『未来から来た。』とか言われても信用してはくれぬじゃろう。どうじゃ、儂のところに来んか?」
「そんなの悪いですよ。」
「じゃあこのまま野垂れ死ぬか?」黄忠はうっすらと笑みを浮かべる。
「・・・分かりました。しばらくお世話になります。」
手の内で弄ばれているような気がして少し癪に障るが背に腹は変えられない。
「儂の陣はすぐ近くじゃ、なあに身分とかは儂がどうにかしてやるわい。」
「助かります。」
「ところでそなたの世界の話をもっと聞かせてはくれんか?今までで経験したことない出来事じゃからのう。」
そういう黄忠はとても楽しげでなぜか若く見えた。
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「さて、いくらそなたが未来から来た人間とはいってもタダで飯を食わせることはできぬ。儂の言いたいことは分かるの?」
「はい、もちろん私にできることならなんでもやって恩を返します。」
「ふむ、何でもやるとは大きく出たの。ではどうしようか・・・。」
なんだろう、すごく嫌な予感がする。私の嫌な予感はだいたい当たる。私は何をされるのだろう。
「じゃあ儂の隊に入ってもらおうかの。」
そう言って黄忠は手を叩いた。すると天幕の外から一人の男が入ってきた。
「黄忠殿、何かありましたか?」
「うむ。少し頼みたいことがあっての。」
「頼みたいこととはなんでしょうか?」
「この青年が我が隊に入りたいそうじゃ。私的な理由じゃがこやつを頼みたい。」
「この男を・・・ですか?」男は値踏みするように見つめてくる。
「紹介しよう。彼は魏延将軍じゃ。」
魏延というと確か・・・そうだ、黄忠が関羽と一騎打ちしたときのやり取りをその城の主に誤解され処刑されそうになったときにクーデターを起こした武将だったか。
「しかし骨のなさそうな男ですな。」
「じゃからお主に頼みたい。」
「承知致しました。」
話がまとまったらしい。義援が私に向かって歩き、目の前で足を止めた。
「俺は魏延という。よろしく頼む。」そう言って手を差し出す。どうやら友好的な人のようだ。
「私は山田宗一といいます。どうかよろしくお願いします。」言葉に気を付け挨拶を返し握手に応じる。しかし―――。
その手は暴力的なまでの握力によって握りつぶされそうになった。
「ぐぅ・・・な・・・何を・・・」
「お前には覇気が全くない。俺はそういう男が嫌いだ。見ていて不快なのだ。」
やっと手が解放された。
「そんなこと、顔を合わせたばかりの人に言われたくないですよ。だいたい・・・」
「よさぬか二人共!」
「戦場じゃあお前みたいなやつから死んでいく。精々死なないようにするんだな。」
そう言うと魏延は天幕から出て行った。
「悪いが奴を許してやってくれぬか。本当はいいやつなんじゃから。」
「いえ、気にしてません。」
「寝床等が決まったらまた呼ぶからこの近くを見て回るのがよかろう。」
「わかりました。少し歩いてきます。」
天幕を出る。周りを見るが人は見えない。
「私だっておまえみたいなやつは嫌いだよ。不快になるなら勝手になっていろ。」吐き捨てるように呟き私は歩き出した。
「三国志異聞」2話を読んでいただきありがとうございます。武将の性格はあくまで個人のイメージとして書かせていただきましたのでもしも自分の武将のイメージと合わない!って方は申し訳ございません。次の話のイメージはある程度固まっているので次話も読んでいただけたら嬉しいです
並行して卓球勇者という話も書いています。もしよければそちらもよろしくお願いします。