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三国志異聞 蜀・山田伝  作者: キョージン&砂糖細工
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邂逅

砂糖細工といいます。初めて書いた小説ですが読んでもらえたら嬉しいです。


 電車は既に止まっていた。私以外は誰も乗っていない。日はもう高くまで上がっている。

「参った、これじゃまた上司に怒鳴られてしまう。」寝起きで重い体にムチを打ち電車の外に出るとそこには荒野が広がっていた。

振り向いてみるがそこにあったのはもはや電車とは言えないほどに朽ちた金属の箱だった。


まずは現状を確認するべきだと思い、携帯電話を開くが圏外だった。仕方なくメモを取り出しやるべき事を箇条書きにしていく。

最重要・・・ここはどこなのか 重要度高・・・無事に帰れるのか 重要度低・・・会社は大丈夫なのだろうか


「ここはどこなのか」を知るために少し歩くことにした。

日が沈んでいく。しかし私はまだ手がかりを掴めずにいた。これだけ歩いても人に会わないのだ。幸い水場を見つけたためなんとか水分を確保することができたが、空腹には耐えられない。

これ以上歩くのは危険だと感じるがごく一般的な会社員には野宿は酷なものだ。


「小学校の頃にいったキャンプを思い出すなあ。確かあの時は簡単に火が点いたと思うのだが・・・」火起こしを初めてかなりの時間が経つが火がつく気配は全くない。

こんな荒野で火を点けてもしも獣などに襲われたらどうするかと今更ながらに思い寝ることにしたが、そんな簡単に屋外で寝られるわけも無く、恐怖に震えながら私は夜を明かした。


夜が明けて来たので出発しようと思うが、どうにも体が重い。

1日や2日の徹夜は慣れているがやはり空腹による消耗が大きい。それに耐えられず徹夜するときのために携帯している保存食を口にする。


「これで食料は尽きた。今日中になんとかしないと辛いぞ。」

日が高くまで上がってきた。携帯は依然圏外のままだ。いやこの状況を打破しない限りこれからもずっと圏外なのだろう。


「おい、そこのお前。」後ろから声をかけられる。疲労で気がつかなかったために突然聞こえた声に思わずぎょっとする。中国語か?確か大学で暇つぶしに学んでいたからなんとか話せなくもない。なんとか情報を聞き出そうか。

振り返るとそこには馬に乗った男が4,5人いた。刃物などを持っているのを見る限りどうやら私はただでは済まないらしい。


「兄ちゃんアンタいい服着てんなぁ。死にたくなけりゃあ金目の物置いていきな。」野盗の類らしい。


「わかった、服なんて好きにすればいいさ。その代わりいくつか質問させてはくれないか。」朦朧とする頭を必死で回す。


「ここかぁ?ここは益州の江陽だ。」益州・・・江陽・・・確か三国時代に蜀の領土だったか?流石に考えにくいが確認せざるを得ないだろう。


「最近滅んだ王朝の名はなんだ?」                    


「あ?そんなことも知らねえのか?漢だよ!」確定した。私は本当に三国時代の中国にいるらしい。


「てめぇ時間でも稼いでやがるのか?とっとと金目の物残して消えな!」そんなはずは毛頭ないがそう誤解されて殺されるのは御免だ。どうせ使えないのだからくれてやるか。


「済まないがまだ服は勘弁してくれ。その代わりといっちゃなんだがこの硬貨を全てやろう。」私は小銭入れを取り出し中身をリーダー格の男に手渡す。


「んだこりゃぁこんな硬貨見たことねえぞ?いや・・・よく見ると作りが細かい、これは何かの芸術品か?」そうとってくれるか。なら命ばかりは助かるだろうか。どうにか逃げ道を探さなくては・・・。


「お頭!ここ見てくだせえ!この部分作りが違いますぜ!」


「あ?どこだ?平成三年・・・こっちは平成十五年・・・これは年号か?いや聞いたこともないものばかりだぞ。おいてめえ何者だ。」


「私はただの遭難者だ。」


「その服を見る限りそうは見えねえなあ。」


「じゃあ脱げばいいのか。」


「そんな上等な物を簡単に差し出すあたりどうにも怪しいなあ?」


「じゃあどうすればいい。」


「その黒くて怪しい包みを渡してもらおうか。」包みというとこのカバンのことだろうか。入っているものなんてどうせここでは役に立たない物ばかりだ。


「こんなものでいいならくれてやろう。」

男らはカバンの中を物色する。この隙に逃げられればいいのだが相手は馬だ、まず逃げ切れないし逃げたことで反感を買って殺されかねない。

どうにか穏便に、穏便に対処するのだ。そうすれば命だけは助かるだろう。


「おい、これはなんだ。」


「それはボールペンという。そうだな、墨をつけなくても書き物ができる筆といえばいいか?」


「こいつは?」


「それは携帯電話というのだがここでは全く使えないといってもいい。」


「なるほど、俺達が全く知らねえ珍妙なモンばかり持ってやがる。やはりただで帰すわけにはいかないな。」どうもこのお頭と呼ばれている男は頭がよく回るらしい。


「いいか、そこを一歩も動くなよ?一歩でも動いたらてめえの首は飛ぶと思えよ?」

まずいな、これは万事休すといったところか。どうにも解決策が見つからない。こんなことになるのなら遺書でも書いておくのだった。遺書を見てくれる人が居ればの話だが。


「てめえは何者だ。」


「右から二人目の男が持っている箱に私の名・・・身分を証明する物が入っている。それを見ればいいさ。」


「どこから来た。」


「日本という国の東京という所から来た。」


「日本も東京も知らねえなあ、おいお前ら!帰ってこいつを拷問にかけるから縄で逃げられないように縛っちまえ!」

拷問なんて冗談じゃない。私は身を翻し一目散に逃げ出した。


「生きてりゃいい!二度と動けないように痛めつけろ!」

心臓が暴れ、体中が悲鳴をあげる。逃げられやしないと分かっていても本能が止まるなと叫んでいる。しかし人は速さで馬には勝てない。男が後ろで刀を振りかぶるのを感じる。私はここで死ぬのか・・・。


「伏せろ!」突然の声に驚き足がもつれ無様に転倒する。その頭上を1本の矢が通り抜けていった。

矢は見事男の首に命中した。男は馬から転げ落ちるが乗り手を失った馬がすぐに止まれるわけもなく危うく馬に踏み潰されるところだった。


「まずい!野郎どもずらかるぞ!」

野党達が逃げていく。首に矢が刺さった男は動かない。・・・即死なのだろう。初めて見る人の死体に嘔吐感を我慢することができず、吐いてしまう。


「すまないが少しいいかの?」顔を上げると弓を持ち鎧に身を固めた老人がいた。


「状況判断で助けたのじゃが大丈夫か?」


「すみません助かりました。」


「ここに散らばっているのはそなたの持ち物かな?」


「間違いないです。」私物をかき集める。

「ところであなたの名をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「いいともいいとも、儂は黄忠という。」黄忠というと蜀に仕える将軍だったか。


「ところでそなたは?」


「私は・・・こういうものです。」震える手で名刺を差し出す。


「私は山田・・・。山田宗一といいます・・・。」



「三国志異聞」1話を読んでいただきありがとうございます 三国志は昔少し読んだ程度の知識なのでいろいろ矛盾点があるかもしれませんがそこは見逃してほしいです また文章についての指摘などがあったら遠慮なく言ってください 誹謗中傷は書き込まないでくれると助かります。

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