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五月晴れ

作者: 真崎麻佐
掲載日:2007/05/27

『五月晴れ』(広辞苑より)

一、五月雨の晴れ間。梅雨の晴れ間。

二、5月の空の晴れわたること。


この話では二の意味で使っております。


もうすぐ六月になる、五月晴れの日。オレはフラれた。かれこれ2年も付き合ってた彼女に。晴れ渡った空がオレの気持ちを察してくれる気配は無かった。


「好きな人が出来たの」

何て明快な理由だろう。オレはただポカンとすることしか出来なかった。彼女は悪びれもしない。オレに魅力がないのが悪いって言われてるみたいだ。これって只の被害妄想?


泣きたい。とにかく泣きたい。なのに泣けない。オレのなけなしのプライドが邪魔をする。人に見られたらどうするんだ!ああ、何て無駄なプライド。お前、今頃顔を出してどうするんだ。もっと他にタイミングがあっただろう?


空を眺める。いつもはしない。可哀相な男、を気取ってみたい。多分キマってないだろうけど。青い空が目に染みる。


「高田くん!」

二ヒヒ、と嫌味な笑いを伴って、同じ学科の眞鍋が声を掛ける。

「なに?」

「あれ?泣いてない」

キョトと不思議そうな顔をした。

「なんで?」

「だって春美にフラれたんでしょお?」

「……」

眞鍋は春美と仲が良い。というか、付き合うキッカケを作ってくれたのは彼女だった。

「告白した時に泣いてたから、別れた時も泣くんだと思ってさ」

「嫌な女」

眞鍋はそぉ?とまたニタリと笑った。そうだ、確かにオレは告白時に泣いた。勝手に涙が出たんだ。女々しいとは思う。だけど安心したんだ、嬉しかったんだ。仕方ない。

「泣く訳ないだろ、いい年した大の男が」

「そぉかなぁ?可愛いじゃん、おっきな体した人が泣いてんのって」

「変な趣味」

オレはバタリと倒れ込んだ。目の前には雲一つない、真っ青な空のみ。

「春美のこと、嫌いになった?」

「はあ?」

「だってフラれたんだもんねぇ」

「何が言いたい」

「いやね、フラれた人はどうやって立ち直るのかと思ってさ」

眞鍋もオレの隣に倒れる。二人して大の字になる。

「高田くんの場合、まず春美を嫌いになるのかなって」

オレは黙ってる。

「それで淋しくなって泣くのかなって」

「……」

「でもどうやら違ったみたい。高田くん、泣いてないんだもん」

「だって悔しいじゃんか」

ポソリとオレは小さく零した。眞鍋はチラリとこちらを見た。

「オレはまだ春美のことが好きなのに」

「……やっぱねぇ。高田くんが春美を諦められる訳ないし」

春美ってば幸せ者〜なんて言いながら、眞鍋は体を起こした。体は起こしたけれど、目は相変わらず空を見てる。暫く黙ったままだった。そして急に口を開いた。

「あ、そか。高田くんはこの五月晴れってのに慰められてるのよ」

「はぁ?何バカなこと言ってんだよ」

眞鍋はバッと空を指差した。そしてオレの方を向いてニヤリと笑った。

「空は泣かない。だから高田くんも泣かないのね」

「はぁ?意味わかんねぇよ」

「うん、私もわかんなーい!いいのいいの。気にしないで!」

眞鍋は立ち上がって、さっさと退散してしまった。半身起き上がったオレは、ただその後ろ姿を見ているしか出来なかった。

『高田くんはこの五月晴れってのに慰められてるのよ』

そうなのか?よく分からない。でも一つ、これだけは確かだ。



もし今日が梅雨の雨の中だったら、オレは絶対に泣いてただろう。




ギリギリ季節に間に合いました。間に合ったのかな?よろしければ評価/感想をお願いします!

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