戦いの始まり
何億年も前、滅びかけた異世界「妖神界」。
住処は荒れ、妖魔の侵攻もとまらなかった。
そこで出会った少年と少女が、一致団結し、世界を救っていった伝説。
どこまでも続く荒野。
強い風。
そこには、住宅の痕跡がわずかながらも残っている。
しかし、人の気配は一切感じられない。
ここからは、人はすでに何億年も前に人は去っていったのだから。
ここは、「妖神界」。昔は非常に栄え、高層ビルなどどんな所にも見られたが、今ではそんなものはない。なぜなら、今では生活域が限られているからだ。
何億年も前に、妖神界では世界を二分する戦争があった。
片方は「支配派」、もう片方が「平和派」。彼らは一進一退の攻防を繰り返していた。
ある日、支配派は「妖魔」というものを作りだした。この力は強力なもので、戦争は支配派の勝利と思われた。
しかし現実はそう甘くはなかった。平和派は妖魔討伐部隊「殲魔隊」を結成し、妖魔を次々と倒していった。でも数は圧倒的に妖魔のほうが多く、平和派の人々は次々と殺されていった。そのとき支配派はまた別のことに悩んでいた。妖魔が暴走し始めたのだ。それによって、支配派は内部崩壊していった。
やがて、有能な超能力を持っていた人間が結界を形成し妖魔を外へ追いやり、人々は安全を取り戻したが、すでに世界は戦争どころではなくなっていた。
人は、去ったのではなく、消えていったのだ。
再び荒野へ。
そんな荒野の中を、一人ある少年が歩いていた。
「あと20㎞ぐらいか、結構遠かったな。」
少年は長い間歩いてきたようだが、疲れどころか空腹も感じていないようだ。荷物も特に多くは持っていない。
周りの荒れた景色を見ながら、少年は、「この辺も荒らされてるな」とつぶやく。
新しく住む場所はもうすぐ。
少年は瞬く間に姿を消した。そこからは、一筋の閃光が飛んで行った。
どしゃん。
ところ変わって、人の住む町。
結界の穴を潜ってきた妖魔が、また一匹倒れた。
この世界で最強の原子と言われている、「妖素」「魔楼素」の塊である、「妖魔石」を屍から出てくる。
「ちっ。少ないな。」
それを手に取ってのは少女。槍のような、刀のような、しかし銃にも見えないことはない武器を持っている。
彼女の名は「鉄柿」。妖魔石を売って暮らしている、この街「輪廻街」の妖魔殲滅隊「輪廻隊」隊員。少女と言ったが、この世界では人の寿命は800年にも及ぶ。よって柿は12,13程度の年齢ではなく、すでに120年は生きている。その分経験があり、今ならマシンガンで撃っても痛くもかゆくもなさそうな妖魔も一撃で倒せる。3体ぐらいは同時に。
柿はその妖魔石を持ち帰り、データベースに乗せようと思って歩き出した。少しでも腕を上げるため、妖魔の研究をしているのだ。
その時、一人の少年が自分を見上げているのに気づいた。
「へぇ」
「これがこっちの妖魔か。」
少年は面白そうに見上げた。
柿は特に気に留めなかった。ただ、いまどき越してくるなんて珍しいな、と思ったぐらいだった。
家に帰ると、柿はエクセルを開いた。妖神界は、たくさんの世界とつながっており、柿もいろいろな世界に買い出しや散歩に行っている。パソコンも、エクセルも、その他いろいろなソフトも、外界から仕入れてきた。実際柿はかなり頭がよく、自分でソフトを作っては売ったりもする。
エクセルの膨大なデータに、今日狩った妖魔のデータを加える。
「狂い蟹 」。正直言って今まで倒してきた中でも弱い、というかかなり弱い。柿はよくレベルを妖魔につけているが、まあLV5といったところだろう。強い奴では200とかもいるし、弱すぎてつける気も起きないものまで、柿は今まで、60年ぐらいは退治してきた。
そんな柿の「プロの感」が反応する。長年退治をしていれば、感は磨かれるものだ。そんな柿の感が察知したのは、かなり強力な方の妖魔の気配。LV180は下らない気がする。このままでは街が危ないかもしれない、そう思い柿は駆除に向かった。
妖魔はいた。柿が今まで出くわした同種のものでは、まあLV200ぐらいだったかな、と考えた。しかし、柿は攻撃をしなかった。すでにその妖魔は、息絶えて妖魔石も取られていたのだから。
誰がやったのか。輪廻隊の仲間か? だったら5分ほど調査のためにその場にとどまる。その妖魔はまだこと切れて2,3分経ったのかどうかというような状態だった。では他の誰かが?
妖魔は死から5分以上たつと塵となり消えていく。その前にできるだけデータを集めようとした柿は、まず成分分析から行うことにした。妖魔の成分は非常に有効なデータとなるし、まずどのようなもので倒されたかが分かるから。
妖神界には、昔ある超能力者がいた。彼は神から授かりし力を最大限に、戦争を和平に向かわせるために使った。しかし苦労は報われず相撃ちのような結果に。その結果を彼は自分の責任とし、8人の弟子に能力の一部を分配し、消えていった。弟子たちは皆、能力を使い妖魔の殲滅に乗り出て行った。
その弟子たちの直系子孫が、今もその力を受け継いでいる。
柿は、そんなもの噂で、実在しないと思っていた。
今も自分は、妖魔石で作られた武器で戦っている。
偶然そんなことを考えていた柿は、成分分析の音で考えるのを止めた。しかし計測機には、驚くべきことが書いてあった。
「ERROR」
初めて見た表示。せいぜい能力分かんなくても「鉄」だとか「妖魔石」とか載るだろうに。
(壊れたのかな……直してもらいに行こ。)
柿が行ったのは向かいの家。なんか機械のようなものを売っている、機械好きで機械についてなら街一番の人がいる。
「五百野ぉ」
「柿……またなんか壊したの?PC?HDD?それとも他の何か?」
顔をマフラーで覆い、眼鏡でパソコンに向かう彼女は五百野。柿とは古くからの友人だ。言葉からしてクールだが、その目は希望に満ち溢れんばかりの輝きを保っている。
つまり、
壊したことに期待して直したい一心で満ち溢れている。
「計測器がなんか変」
「だいたい計測器の異変は中に入っている数値化型特殊型妖魔石に何らかの不具合が発生した時が多いよ?そんな時には計測機能が少し失われるけど削って形をそろえたり、新しい妖魔石をとってくるのも手だよ?でも数値化型特殊妖魔石を源とする妖魔はなかなかこっちには来ないか……。あ、結界の外に行くなよ?LV300ぐらいの奴が群れになって行動してるよ。気を付けてもやられるのがオチだし。あ、計測ならほかにもこんな奴があるよ?こいつは上級の妖魔「十六夜の茨」から取った拷も…げふんげふん計測器で」
「今拷問って言った?」
それでも止まらぬ五百野の説明。
「測定縄って言うんだ。最近仕入れたんでねえ、今注目商品として売っているのよ。この棘…針がそのものの中に入り、この機械の表示機に全成分が表示されるんだ。ほかにも……」
「そろそろ止まって」
柿の言葉によって我に返った五百野は、ごめんと言い故障原因を探る。
(どこにもない。)五百野はそう判断しざる負えなかった。妖魔石は傷一つなく、回路も問題ない。
そのことを柿に伝えようと思ったが、いない。
柿がいない。
いつの間にかどこかへ行ってしまったのだろうか。
(まあいいか。後で返そ。)
柿は北の方角に走っていた。
感じたのだ。凶悪な気配を。
(こりゃ強そうだな。)
そこで見えたのは、3匹の上級妖魔。確か名は、「偏狂の毒蛇。」LV400。柿も久々に本気を出さなければいけない。柿は、瞬く間に銃の装填を済ませた。
柿の持つ武器は万能型銃「刀狩スナイプ」。刀、槍、銃などに形が思い通りに変更できる。柿はそれを長刀モードにした。それは大胆に振り下ろされ、蛇の毛皮を切った。その瞬間、口を大きく開けて襲いかかってきた。柿はその蛇の口を割き、背中に乗った。そして刀を刺す。それで動きが鈍くなった妖魔を、ハンマーモードで滅多打ち。しかしまだ俊敏な動きは健全であり、その攻撃を柿はかわして、かわして、かわしまくる。攻撃する暇もないまま、しばらくは受け身でいたが、一瞬の隙を見つけ、柿は必殺技を繰り出す。
「明堂剣術、嵐切り!」
その素早い一撃は蛇にあたり、蛇は力尽きた。……その瞬間、柿は何かに飛ばされる。
確かに偏狂の毒蛇は倒した。
しかし偏狂の毒蛇は一匹ではなく三匹。
柿は、残り二匹のうち一匹のしっぽに吹っ飛ばされたのだ。
次に、柿には偏狂の毒蛇の毒針が向かってくる。確か神経毒。戦闘中に食らっては負け確定である。しかし時すでに遅く、半ば諦めかけたとき、針が視界から消える。
何が起こったかわからず、動揺した心を柿はとりあえず落ち着かせる。
(状況を確認しないと。)
そこには、あれ野原の上に偏狂の毒蛇二匹。木が何本か。
そして、黄色い刀を持った少年が一人。どこかで見たような気がする。その少年は、一瞬で姿を消す。その瞬間、偏狂の毒蛇のうち、片方の胴体が一刀両断される。その隙にもう一匹が少年に襲いかかる。
「ゆっくりとした攻撃だなあ。」
少年の周りに突如光を放つ物体が現れる。その物体は質量をどんどん増していく。
その球状の物質は、いきなり飛んだ。
その球は、見えないほどの速度で蛇の心臓を貫く。
あっさりと倒してしまった。偏狂の毒蛇を。彼は何者なのか、疑問に思った。
「お、よく見ればさっきの奴じゃん、大丈夫か?」
少年は言う。返答に困った柿は、
「うん……そういえば」
「さっきの子じゃない。なんでここに?」
「決まってんだろ、誰かさんがピンチになってたからだよ。そういえば名前聞いてないな。名前は?」
柿は顔を赤く染めて反論する。
「そういうのは自分から名乗るものじゃないの?」
「あ、そうだね。俺は長良。薊石長良。じゃあんたも名乗って。」
「私は鉄柿。」
「くろがねか。これからもよろしくなくろがね。」
「は?」
なぜかこれからも一緒に行動するぞとでもいうようなことを言ってきた彼。
「なぜよろしく?一度きり会って終わりな感じではなく?」
「それ妖魔殲滅部隊の紋章でしょ?俺妖魔殲滅仕事にしてるから。さっきの「碧色のカラス」も俺がやった。ありゃあんまり強くなかったからいつもに比べちゃ少ししか稼げなかった。」
「少し!?」
「碧色のカラス」。中級妖魔。希少価値が高く高価で取引される。
高価で。
大体今の市場価格が50万ぐらいだったか。それが少しとは、どんだけ強いのを倒してきたのか。柿は疑問に思った。
「じゃ俺キャンプに戻るから。」
「待って」
柿は引き留める。
「すぐどっかに行くの?」
「うん。行くところないけど。」
「ならうちに泊まっていかない?なんならずっといてもいいよ。妖魔の話聞きたいし。」
「え?もっかいいって?」
「うちに泊まっていよ。」
「いいの?」
「うん」と言った瞬間、彼は跳ね上がり喜んだ。ここずっと家になど泊まったことがないらしい。早速柿は家を案内した。
「まだかなあ」
五百野はそのころ柿を待ち続けてた。
初投稿ですからヘタレかもしれません。
許してください。