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いめちぇん!  作者: 六花
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05 波の合間を縫う様に

すんごい笑顔で今にも話しかけて来ようとする女の子マジ怖す、冗談です。

愛美さんの完璧微笑うぃず底冷えする目線に比べたら屁でもない…ゴメン嘘、集団は怖い。

基本的に好意的だとは思うんだけどなーアレー?


「秋森さんってやっぱりあの秋森家に縁ある御家なのかしら」


なりきんむすめが バトルを しかけてきた!

と、ふざけた所で何にもなりませんがね、現実逃避。愛美さん助けてよ、絶対してくれないって分かってるけど。どうせお手並み拝見程度に思っているんでしょうよ。知ってた。


「一応ね」

「あら、可笑しくありませんこと?先程、スポーツが何とか、と仰っていたのを聞いておりましてよ」


違う人が…あ、伝統的な御家グループの方です、そういう人は特に選民意識が強いから、が切り込んでくる。

だから一対多数は嫌いなんだ…!


「そうだね。バスケを悪く言わないで欲しいな。貴方達みたいな可愛らしい女の子がそんなことをするのは許せないとは思うけれど」

「話をすり替えないで下さいませ。…つまりはかなり末端の方だと?」


明らかに見下した言い方と目つき。彼女は成り上がりその二だな、喩え末端の方でも「秋森」の姓を持っていたら相当格は上だ。それこそ、愛美さんなどの直属のお家よりも。それが分かっていないのは成り上がりしかない。伝統的な家ならその辺は弁えてるからね。

ま、変わり者の烙印を押されたことはまず間違いないと思う。彼女たちにとって上流階級の子女は「淑やかにする」ものであり、スポーツは「下賎の者がすること」だ。淑女なら汗は見せない、形振り構わず心を乱すのは有り得ない。


ただ笑っているだけで、他の人がこの言動を戒めることは分かっている。

だから私は何も言わなかった。__無駄な言動は慎むことだと、「私」が本来持っている威圧を掛けたのだ。

ハッとして彼女にこれ以上無礼な行いをさせないように後ろに隠した「淑女」達。


「申し訳御座いませんでしたわ、秋森家の方にこのような試すようなことを」

「…構わないよ、それと…」


怯むように身構える子達は、恐ろしいものを見る目つきだ。…そんなことは無いんだけどなぁ…まあスペックは化け物だし…仕方ないのか。

まあ良い、最後の仕上げだ。


”無意識に”威圧感を出していたという雰囲気を出す為に、無邪気に爽やかに笑って、こう言った。


「苗字で呼ぶのは、止めてほしいなぁ…なんて。家名で線を引かれたみたいで、嫌なんだ。友達になって欲しいというのは駄目かな?」


ほっとしたように息をついたのは誰だったか。それとも息を呑んだのか。

制裁なんてしませんよ、面倒だもの。潰されると思った人も居るんじゃないかな。腹黒い笑みに見えるような下手な演技はしない、勘違いだったと思って欲しいから。只、怒らせてはいけないということを覚えていて欲しかっただけ。この場合の地雷は…そうだな、私の「好きなもの」にとやかく言うなってとこか。


「上流階級の令嬢というものが揃いも揃って動揺等見苦しいですね。少しは感情の揺れを抑える訓練くらいすればどうなのです」


あら、高みの見物は終わりですか?愛美さん。

泥を被って戴けるのはものすごく有難いですが…彼女に借りを作ってはいけない気がするのは何故だろう。今度お礼言っておかなければ。


「有山さん…」

「彼女たちは責めないで欲しいな、愛美さん。よく分からないけど、私が何かしてしまった様なんだ」


こういうことでしょ。

彼女たちからの好意を得る為に、愛美さんの協力を貰ってしまったのはちょっと不覚かな。一人でやろうと思ってただけに。

こちらへ向けてくる目が笑ってるのが分かる。予想以上でした、少し手助けしますね、と言ってるのも。


「先程の会話で分かっていたこととは言え、無意識とは恐ろしいものですね…。秋森さん、私が苗字で呼ぶのもお嫌でして?」

「愛美さんは私がそういう扱いが嫌いなことを知ってるじゃないか。貴方の"それ"に何の他意も含まないことぐらい分かるさ」


彼女らしくない少し分かりやすい説明的な話し方を聞いて、やっぱり協力してくれていたと再確認。彼女のテストには合格したらしい。


「遠慮しなくても良いということでしょう、なら言わせていただきます。貴方に"彩香"なんて可愛らしい名前似合いません」

「ははっ!私でもそう思うよ。こればっかりはどうしようも無いや」


正直まだそこまで親しいというわけでは無かったけれど、親密さをアピールしてくれてるのだろう。

それにしても似合わない…かぁ…確かに中学校の友人曰くジュリ顔の私に彩香は合わないかも。今思うと壮大なイメチェンだな。


私たちのほのぼのとした会話に漸く全然私が怒ってないことが分かったのか、会話の内容にか、笑っている子も居た。

一人、また一人とその笑いは伝染していく。


「それじゃあ、何かあだ名でも考えて欲しいな」


どう思う?と今まで忘れていたように二人で話していた私が女の子たちに振り返る。もうそこにさっきまでの差別的な雰囲気は無く、私を仲間として受け入れてくれた空間がそこにあった。

良かった、成功した。何がいいだろうと近くの子と相談する姿は見ていて微笑ましい。


クラスのボス的存在(になるであろう愛美さんにも認めてもらったし、持ち上がり組からの当たりももうきつくはならないだろう。

何とかこのクラスでもやっていけそうな、そんな予感した。



___私は知らない。この後、家で受ける受難のことを。


漫画の世界特有の、有り得ない校則がこの学校にあったことによる、つけられたあだ名の恥ずかしさを。



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