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いめちぇん!  作者: 六花
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01 この世界と私

作者は少女漫画についてあまり詳しくありません。ご了承ください。

私立華季学園高等部。


今日、私は「あの」と噂される学校に入学する____。



いつからだったろう、「私」が「あたし」を思い出したのは。

よくネット小説なんかでネタにされている「転生」ってヤツを、「あたし」は体験した。勿論、死んだ記憶はあるし、理由だって納得してる。

なのに、私は仏教でいう「輪廻転生」をしてしまった。恨みとかは無いんだけど、やってみたかったことはあった。それが未練となって今に至るのかは分からない。だけど、気付いてしまったんだ。此処が、少女漫画の【君と過ごす日々】の世界だということを。


【君と過ごす日々】というのは私が今から通うことになる華季学園(はなきがくえん)の高等部が舞台となる恋愛漫画だ。

華季学園は超一流のエリート学校で、お金持ちの通う学校としても有名だ。それに『四大家』もこの学校で学問を修めるということで、憧れの学校である。この学校を卒業したものは将来が約束されるとまで言われている。

因みに四大家というのはまあ、超一流の貴族、みたいな感じ。春山、夏川、秋森、冬海の四家がそう言われる。歴史的にも色々裏ではあったんだけど…現代においては仲は良好。直ぐに分かるとおり、季節と自然に関するものが名前に入っている。


主人公は式織風音しきおりかざね。人よりも勉強が飛び抜けて出来て、それで推薦でこの学園に入学する。

学費免除を受けていて、中流家庭の出。一見ふわふわとした大人しそうな外見で、とても学力がとんでもないだなんて思えない、野に咲く小さな花のような可愛らしい容貌の娘だ。

そしてその主人公の相手となるのが四大家の夏川或夜なつかわあらや。少し俺様な面もあるけども、実は純情で熱い青少年。

当然のごとくイケメンで、文武両道万能超人。しかしそれは努力の賜物ということは後々分かる。


この二人が身分の差というか…まあ色々乗り越えていくというのが主要なストーリー。


…そう、お金持ち学校舞台のものによくある「虐め」のシーンが出てくるのだ。

増してや相手は超・上・流・家・庭。時代錯誤な「婚約者」という厄介な相手が居る。そしてその相手は勿論性悪令嬢。

しかし少し王道とは違って、そのご令嬢はヒーローの格下の家でなく、同格の四大家、秋森家の長女なのである。


「彼女」…秋森彩香あきもりさやかはスペックだけで言うならば主要二人とは一線違える。ある意味悪い意味で。

そう、勉強しなくても常に学年一位をキープし続け、一度練習するだけでスポーツは常人の域を超える。カリスマ性もあり、人望も厚い。

しかも主人公が野に咲く花のような可愛らしさならば「彼女」は大輪の華のような匂い立つ美貌で、スタイルも抜群。

虐めだって彼女自身は全く指示も出さず、して欲しいというそぶりさえ見せない。ただ、黙認していただけ。つまり、彼女を潰すことなどできやしない。

そんなヒーローを上回る完璧超人が主人公の敵なのだ。惜しむべくは古めかしい金髪縦ロールということか。


…お分かりいただけたであろうか。



そう、私はそんなチート星人の「秋森彩香」に転生した。


どんなことだって出来る、そんな「彼女」に転生した私。

転生したことに抵抗はあんまり無かった。自我の目覚めと共にゆっくり眠りから起きたかのような感じだったから。

原作を変えることに対しても別にどうも思わなかったし、婚約は解消させてもらった。

正直、長子どうしで結びつくのはなぁ…と思ったのもあったけれど、まあ後々面倒だし。くっつくことが運命なんだから、私は居なくてもね。この婚約解消は結構骨が折れた。因みに今でも彼とは良い友人関係を築いている。


勉強しなくても教科書をパラ読みするだけですらすら頭に入るのはちょっと、「神様って一体…」と思ったけど便利だし。

アイデンティティである金髪縦ロールだけは回避。いやだって…ダサいじゃん。髪を伸ばすと勝手に縦ロールになってしまうので、ショートカット。

金髪のショートって言うのもどうかと思ったけども、先祖がえりらしい。仕方ない。染めるにはこのキューティクルは惜しすぎる。


原作の「秋森彩香」はもう何処にも無くなってしまった。


そもそも幼稚舎から華季学園に通うのが嫌だったから回避、中学校まで公立。親が甘いんだ、じゃなきゃあの娘はあんなふうに育たない。

やりたかったことというのはスポーツ。前世でいろいろあってまあ、割愛。バスケ漫画にハマってね…うん。

どんなことにでも才能のある彩香嬢のスペックはとんでもなかった。


つまり、だ。スポーツ愛の活発な少女が今の私、性悪令嬢(笑)、てことである。



しかし、高校は華季学園を避けることが出来なかった。

避ける気はあんまり無かったけど…運命の力って偉大だな。なんて思った。避ける気が無いのは華季のバスケ部が名門だから。

金持ちの道楽でなくて、真剣に才能のある人が集まるから華季は強い。しかも勉強もきちんとさせる。文武両道、中流家庭の人ならプラス何か一芸飛びぬけている、て感じ。


当然のごとく入試の成績がトップだった私は、新入生代表の挨拶があった。けども、だ。面倒だからパス。主人公ちゃんにお任せします。

という感じで断った。…あ、これはイベント。なんだっけ、原作じゃ「わたくしが婚約者様よりも目立つなんて」みたいな理由だったと思う。もう婚約者じゃないけどね。




父さんと母さんには入学式には来るなって言っておいたけど、多分来ると思う。数少ない社交の場だし。

私のことはこんなだって言うなと頼んだら、了承してくれたから大丈夫…だと信じたい。


ま、名門の秋森家の長女がこんなだっていうのは世間体もあるし、言いふらしたりはしないだろう。





そして、ストーリーが始まる。






語彙説明


君と過ごす日々

・とある少女漫画。四季を意識しており、イベント多彩なことで有名。


華季学園はなきがくえん

・物語の舞台。金持ち学校だが、一芸に秀でていれば学費免除で入学でき、卒業できれば将来は約束される。四家も通うことで憧れの存在。


四大家

・日本の半分を支配する家。その歴史は深い。互いに争っていたときもあるが、不毛なことに気づき現在は友好関係にある。



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