プロローグ
さんさんと降り注ぐ陽光と、青く広がる空。
夏だった。この村のどこも緑の葉が眩しく、色とりどりに咲いた花に蜂が取り付いているのがあちこちで見受けられる。
そして今日は、この村の学校の卒業式であった。
村の集会場で式が行われている。校長が卒業生を祝賀する、長ったらしい話をしていた。
そんな話の最中に、一人の少年が、遅刻をして息を切らして集会場へ入ってきた。
少年は小柄で、大きな目をしている。俯いて申し訳なさそうにしているのが少し女の子にも見えた。
「お、遅れてすいませんでした!」
少年は担任とおぼしき大人に頭を下げ、それから急いで自分の席へついた。
「こんな日にまで寝坊して遅刻かよ。いつまでたってもダメダメだなーあいつ」
彼の席の周りの卒業生からこそこそと喋る声が聞こえる。卒業式の静かで緊張した空気が弛緩し、ざわざわとした。
「ほんと、あいつは兄とは違うよなー」
誰かがそう言ったのを最後に、また静かになり、眠たくなる校長の話だけが続いた。
遅刻してきた少年の名は、フレアといった。
式が何事もなく終わり、フレアは友達のサトと歩いて家まで帰った。
「フレアはやっぱりこの村を出るのかい?」
「うん、ずっと決めていたことだから」