始めて教室に入ったあの感じ
「フー、ついにこの日が来たか。」
と、俺は机に突っ伏しながら言う。本来ならこの言葉は校門の前に立って太陽の光をキラキラ浴びながら言う言葉なのかもしれないが、俺、綾崎 鍵はそのようなキャラではない。たしかに自他ともに認めるオタクだが、かといってアニメやゲームでの常識を現実世界には当てはめないのだ。
「それにしても・・・」
周りにぬとっとした肌に触る空気。始業式である今日はあまりうれしくない気候だった。桜の舞い散る中、地球温暖化促進を肌で感じている私であった。
んでもって、この騒ぎ。地球温暖化による影響やもしれんこの4月にしてはいようなる暑さをさらに上乗せするかのように周りにいる新入生のほのぼのした空気が何とも気に入らん。いっそ、サボってしまおうか?
「そんなの許すわけないじゃん!」
―――?!?!?!?!?!?!今の口に出してたか俺。
「何驚いてんの?まったく、新しい環境に入ったから多少は良くなるとは思っていたんだがやはりあんたのマヌケっぷりはなおんないみたいね、この二次元ジゴロ」
髪をツインテールに分けた三次元では美称女の範疇にはいるだろうと思われる女生徒が俺の机に片肘をついている。誰だろうと思って相手をじっくり観察したが正体はすぐに割れた。
「おまえ、同じ1-2だったのか」
「冷たいわね~、せっかく一緒のクラスになったんだからもっと反応したらどうなの?」
できそこないの息子を見るような母親の目で俺の顔を無遠慮に投げ目てくるこいつは、とても残念なことに俺の幼馴染である。誠に残念なことに。ホントに残念。せめてティッシュでもくれないかな。残念賞。
「あんた、今すごく失礼なこと考えてなかったでしょうねぇ?うん」
顎をしゃくり上げて言う姿は二次元萌えの目からしてもとてもカワいいものだった。コイツは目がツンととんがっていて、ちょっと鋭いとこらがあるが、根はやさしいツンデレだ。3D世界には貴重な人材だ。今までこいつに興味を持った輩が何人いるだろうか。まぁご自分は全く男に興味ないようですけれども。
「まぁいいわ。とりあえずこれからもよろしく」
といいながら手を出してきた。相手の意図はわかっていたけれど、ここはおちょくってやろうと決めた。
「なんだ、俺にお手でもしてほしい?俺がお前の犬になれと・・・」
途端に相手は顔を一気に上気させ、数歩後ずさる。
「な、何言ってんのよ。だ、誰があんたみたいな駄犬・・・」
「わっかりやすー、やっぱ凛花はツンデレだなー、このこの」
俺は座りながら凛花の事を来ずく真似をする。相手は女子だから勿論体には触れていない。
ようやく名前が出てきたが、彼女の名前は奈良凛花。幼稚園生からの幼馴染。
「ば、バカっ」
そして、ツンデレ凛花はどこかに走り去って行きましたと。
今の会話で疲れた俺は、することもないのでまた机に突っ伏す。木の香りが鼻腔をくすぐる。いい香りだ。まぁプラスチックせいでないのがやはり普遍高校の特徴とでも言えるだろう。桜が枚降る中、新入生たちが他愛にあいさつを交わす。なかなか微笑ましい光景じゃないか。
束の間のほのぼのの中。すぐに、一人の時間を邪魔する二つの影が近づいてきた。
やがて、机の一端が陰に隠れる。