酩酊
自分への甘えを捨てきれず、余計なことばかり考えてしまう、自分の脳が憎い。
能無しとは脳無しなのだと思う。
今の俺は脳が無くて、ゼンマイで動いているだけのからくり人形と変わらない。
ただただ惰性で日々を過ごして、貴重な時間を無駄にして、こうして自分への愚痴だけ垂れるだけで、何も生み出せず、結局妥協してしまって、それでも死ななければ良いかなんて思ってしまうのだ。
死を考えてしまうことを言い訳にするのは、本質的には死を考えていなくて、ただ楽をするための道具でしかないのに、どうしてもそうしないと生きていけないジレンマが、俺の自己肯定感をまた下落させる。
俺が何を書いても、笑われるだけで、誰にも響きやしない、ただ無意味で恥ずかしいことだ。だったら初めからやらない方が良いではないか。
なぁ、それが一番楽だろう。
とか言ってきて、俺もそうだなんて絆されて、結局なぁなぁで全部終わらせてしまうんだ。
俺の中の創作への火は、既に大きな手で蓋をされるように消え掛かっていて、その火で燃えた手は他の誰でもない、俺の手。べろりとめくれた皮を、腹の減った獣のようになんとなくぶちぶちと食べていると、無性に泣きたくなる。
その涙さえも、全部自分で飲んでしまって、自分の中に全部取り込んで、何事も無かったかのように振る舞って、誰にもバレないようにしたいと思ってしまっている自分はなんてダサいんだと、自分を客観視して思うけれど、当の自分はそんなことを分かっていながらも、向き合わずに無視して、ただただ保身に走ってしまう、そんな自分を殺したい。
殺してしまいたい。
自我を完全に殺して、ただ創作をするだけのマシーンになれたら、夢に近づけるだろうか。
神頼みをするつもりは無いけれど、もし、願うとするならば、自分の全てを創作に捧げる覚悟が欲しい。
誰のことも気にせず、全部を創作に捧げて、全て投げ打った先に栄光を手に入れて、ただそれだけで生きる俺は、本当の俺だろうか。
もしそれが本当の俺じゃなくても、俺は俺を愛せるだろうか。
酩酊して、夜の街を錯乱状態で歩いていると、大きな人間が現れて、ぶつかった。どこ見て歩いてんだよーーなんて柄にも無いことを叫ぶ私はとても惨めで、罪悪感に苛まれてうずくまる。男は無言で私を見下ろすと、私に顔を近づけて言った。
「燃えたら、どうだ」
男はマッチを持っていた。それに火をつけて私に手渡しをする。私はそれをただぼんやりと眺めていて、やがて火が消えてしまう頃には、もう夜明けになっていた。
男は既に姿を消していた。
一体なんだったのかーー。
頭を殴られた。
がんがんと、沢山殴られている。
ああ!ああ!ああ!
断片的に叫ぶ私の口から、赤黒い血が吐かれる。
男であった。
あの真っ黒な大男だ。
燃やせ。燃やせ。燃やせ。
ああ、ああ、ああ、
神様、神様!!
ごめんなさい。ごめんなさい。
幸せになりたいです。
殺さないでください。
ああ、ああ、ああーー
死ね!死ね!死ね!
男は再びマッチに火をつけて、私の身体にそれを放った。
一瞬にして全身に火が回り、脳がまるでろうのようにぐにゃぐにゃに溶けて、何も考えられなくなった私は、やがて無くなった。
真っ黒焦げの煤になって、地面に倒れ込んで、道路の模様になった私を、男はただ無表情で眺めて、
そして男は私になった。
もう、幸せじゃなくても良い。
私はもう、幸せなんかじゃなくても良いーー。
そうだ。そうだ。
これが俺だった。
俺はこうやって、死ぬために生きていくんだ。
マッチで煙草に火をつけて咥え、肺に煙を入れると、少しむせて、
そのままずっと咳をして、
動き続ける肺が蝶になれば良いななんて、
そう思うのだった。




