第3話 王都ダンジョン
王都の中央には、巨大な石造りの建物があった。
その入口の上には大きく書かれている。
王都第一ダンジョン
俺は口を開けたまま固まっていた。
「いやいやいや、ちょっと待ってください王女様。さっき奴隷から解放されたばかりの俺がダンジョンっておかしくない? 普通もっとこう……チュートリアルとかあるでしょ?」
エリシア王女は首をかしげる。
「チュートリアル?」
「ゲームでよくあるやつです。まずスライムを倒してレベル1から始めましょう的な」
「大丈夫ですわ。ここもスライムからですもの」
「そういう問題じゃないんですけど」
王女はクスッと笑った。
その後ろには兵士が二人ついている。
完全に護衛だ。
俺は入口を見上げながら言った。
「ちなみに聞きますけど、このダンジョンって危なくないんですか?」
「初心者用ですわ」
「本当ですか?」
「たまに死者は出ますけど」
「それ初心者用じゃない!」
俺がツッコんだ瞬間、後ろの兵士が笑いをこらえていた。
王女は平然としている。
「大丈夫です。あなたの能力を見ましたもの。オークを倒しましたわ」
「いや、あれは相手が勝手に弱くなっただけなんですけど」
「それが強いのです」
ぐうの音も出ない。
王女はダンジョンの入口を指さした。
「行きましょう」
「え、もう?」
「ええ」
「心の準備とか」
「ダンジョンは待ってくれません」
そう言って王女は歩き出した。
俺も仕方なくついていく。
ダンジョンの中は薄暗い石の通路だった。
壁には松明が並んでいる。
俺は周囲をキョロキョロしながら言った。
「うわー、完全にRPGのダンジョンだ」
すると突然、前の曲がり角から何かが跳ねてきた。
スライム。
ぷるぷるした青い塊。
「ピギィ!」
俺は思わず言った。
「出た! 本当にスライムだ!」
王女は少し離れた場所で腕を組む。
「レオン、戦ってみてください」
「いや俺武器持ってないんですけど」
「大丈夫ですわ」
「何がですか」
スライムはぴょんぴょん跳ねながら近づいてくる。
俺はため息をついた。
「しょうがない。試すか」
俺は手を伸ばす。
そして小声で言った。
「ステータス転写」
対象:スライム
コピー:筋力
一瞬、頭の中にウィンドウが表示された。
次の瞬間。
スライムの動きが急に遅くなる。
俺はステータスを確認した。
スライム
筋力:3
「……よし」
俺はそのまま軽く蹴った。
ぺち。
スライムは壁に当たって消えた。
撃破。
沈黙。
俺は振り返る。
「どうですか王女様。初めてのスライム退治」
エリシアは目を丸くしていた。
「……」
「え、どうしました?」
王女は小さく息を吐いた。
「思った以上ですわ」
「え?」
「普通、スライムでも初心者は苦戦します」
「え、あいつ弱くなってましたよ」
「それが恐ろしいのです」
王女は少し笑った。
「レオン」
「はい?」
「あなた」
「とんでもない能力を持っていますわ」
俺は肩をすくめた。
「いやまあ、俺自身はとんでもなく弱いですけどね」
そのときだった。
ダンジョンの奥から――
ドシン
重い足音。
兵士の一人が緊張した声を出す。
「王女様……これは」
通路の奥から現れたのは。
巨大なゴブリン。
普通のゴブリンの三倍はある。
俺はつぶやいた。
「……いやこれ絶対初心者用じゃないでしょ」
王女は真顔で言った。
「レオン」
「お願いします」
俺はため息をついた。
「はいはい」
そして前に出る。
ゴブリンが棍棒を振り上げる。
俺は手を伸ばした。
「ステータス転写」
対象:巨大ゴブリン
コピー:筋力
次の瞬間。
ゴブリンの腕から力が抜けた。
棍棒が落ちる。
俺はそれを拾った。
「借りますね」
そして軽く振る。
ゴン。
巨大ゴブリンは一撃で倒れた。
沈黙。
兵士たちが固まる。
王女がポツリと言った。
「……やっぱり買って正解でしたわ」
俺は笑った。
「でしょ?」
こうして俺の
ダンジョン生活
が始まったのだった。




