第22話 魔族覚醒
影の獣が消えた。
ゼイルの剣がゆっくりと振り下ろされる。
「軽いな」
魔族がその様子を見ている。
赤い目が細くなった。
「人間にしては」
ゼイルが肩を回す。
「そのセリフさっきも聞いたな」
大剣の男が笑う。
「煽ってんのか?」
双剣の女が静かに言う。
「まだ本気じゃない」
魔法使いが杖を構えた。
「来ます」
その瞬間。
魔族の魔力が膨れ上がった。
黒い波のように広がる。
床の影が震える。
ダンジョンの空気が重くなる。
カイルが低く言う。
「さっきより強い」
俺は額の汗を拭く。
「まだ余裕あったんですか」
魔族が静かに言う。
「当然だ」
そして続けた。
「私は遊んでいただけだ」
ゼイルが笑う。
「じゃあ次は本気か」
魔族の背後に影が集まる。
巨大な翼。
角。
そして黒い鎧のような魔力。
姿が変わる。
リュナが呟く。
「……魔族」
魔族はゆっくりと言った。
「名を聞きたいか」
ゼイルが剣を構える。
「聞いとくか」
魔族は答える。
「ヴァルグ=ゼノス」
その名を聞いた瞬間。
快光の魔法使いの顔色が変わった。
「嘘だろ」
大剣の男が振り向く。
「知ってるのか?」
魔法使いは言う。
「魔族軍の将軍クラスだ」
空気が一瞬凍る。
カイルが小さく言う。
「将軍……」
俺は思わず言う。
「いやそれ早く言ってくださいよ」
ゼイルが笑う。
「なるほど」
そして剣を構えた。
「燃えるな」
ヴァルグ=ゼノスが手を広げる。
影が一斉に動いた。
ダンジョン全体の影が
生き物のようにうねる。
床。
壁。
天井。
すべてが影になる。
棘が突き出す。
影の腕が伸びる。
巨大な影の魔物が生まれる。
さっきまでとは規模が違う。
リュナが呟く。
「ダンジョン全部使ってる」
カイルが剣を構える。
「来るぞ」
ゼイルが俺を見る。
「兄ちゃん」
俺は顔を上げる。
「はい」
ゼイルが言う。
「魔力どれくらい残ってる?」
俺は正直に答える。
「あと二回くらいです」
ゼイルが笑う。
「十分だ」
大剣の男が前へ出る。
「道作る」
双剣の女が言う。
「私が影削る」
魔法使いが杖を上げる。
「視界確保」
ゼイルが剣を握る。
そして言う。
「最後は俺」
俺は聞く。
「何するんです?」
ゼイルがニヤッと笑った。
「将軍、斬る」
ヴァルグ=ゼノスの影が迫る。
影の巨人。
影の獣。
影の腕。
ダンジョンが影で埋まる。
ゼイルが叫ぶ。
「行くぞ快光!」
そして俺を見る。
「兄ちゃん!」
俺は手を上げる。
魔力を集める。
「ステータス転写」
影の巨人が光る。
筋力
3
ゼイルが走った。
光のように。




