第20話 死の気配と…
空中で魔族がゆっくりと笑った。
「なるほど」
赤い目がこちらを見下ろす。
「理解した」
黒い魔力が再び広がる。
影が床へ流れ込む。
ダンジョン全体に影が張り巡らされた。
カイルが眉をひそめる。
「来るぞ」
その瞬間。
ザシュッ!!
床の影から黒い棘が突き出した。
「ぐっ!」
俺の足に痛みが走る。
棘が太ももをかすめた。
リュナが小さく声を上げる。
「……っ」
彼女の足にも浅い傷。
カイルだけが剣で弾いている。
だが影は止まらない。
床。
壁。
柱。
あらゆる場所から棘が生えてくる。
魔族が静かに言った。
「貴様の魔法」
「形あるものには効く」
そして笑う。
「ならば形を作らなければいい」
影は床全体に広がり、波のように動く。
棘が次々と突き出す。
俺は思わず歯を食いしばる。
「くそ……!」
魔族の姿が消えた。
次の瞬間。
俺の目の前に現れる。
速い。
拳が振り上げられる。
だがその前に――
ガン!!
カイルの剣が受け止めた。
衝撃で床が割れる。
カイルが叫ぶ。
「レオン下がれ!」
俺は後ろへよろける。
だが棘が足元から突き出す。
「っ……!」
バランスを崩す。
魔族が笑う。
「守りながら戦えるか?」
その時。
影が盛り上がった。
床から黒い塊が次々と現れる。
影縫。
ゴブリン。
オーガ。
スケルトン。
さっきより多い。
リュナが矢を放つ。
影の魔物が一体消える。
だがすぐに別の影が立ち上がる。
カイルが歯を食いしばる。
「数が多すぎる」
魔族が言う。
「そうだ」
そして俺を見る。
「狙いは最初から一つ」
影の魔物がカイルとリュナへ襲いかかる。
二人は応戦するしかない。
俺の前が空いた。
魔族がゆっくり歩いてくる。
足元の影から棘が突き出る。
逃げ場がない。
俺は手を上げる。
「ステータス転写」
影の魔物が一体崩れる。
だが魔力が薄い。
頭が重い。
視界が揺れる。
魔族が言う。
「魔力切れか」
俺は息を吐く。
「……そんな感じです」
魔族は拳を握る。
「ここで終わりだ」
拳が振り上がる。
俺は思う。
もう魔力はほとんど残っていない。
カイルもリュナも影の魔物に足止めされている。
王女も魔法で防御しているが長くは持たない。
終わりだ。
そう思った瞬間。
ドォォォォン!!
上から轟音が響いた。
ダンジョンの上壁が崩れる。
巨大な岩が落ちる。
魔族が一瞬上を見る。
次の瞬間。
瓦礫の中から
光が落ちてきた。
剣。
いや――
人影。
高速で落下しながら魔族へ斬りかかる。
ザン!!
魔族がとっさに腕で受ける。
衝撃で床が砕けた。
煙の中から声が聞こえる。
「見つけたぞ魔族」
煙が晴れる。
そこにいたのは四人。
軽装の剣士。
大剣を背負った男。
双剣の女。
そしてローブの魔法使い。
剣士が肩を回す。
「いやー遅くなった」
カイルが目を見開く。
「……お前ら」
リュナが呟く。
「隣国の」
剣士が笑う。
「正解」
そして剣を構える。
「最強ギルドパーティ」
少し間を置く。
「快光だ!」
魔族の目が細くなる。
新たな戦いが始まろうとしていた。




