第18話 崩れる均衡
崩れた天井。
大量の瓦礫がダンジョンの床を埋めていた。
砂煙がゆっくりと落ちていく。
カイルが呟く。
「……とんでもない魔法だ」
俺は肩をすくめる。
「いや、たまたまですよ」
リュナが瓦礫の山を見つめる。
「終わった?」
その時だった。
瓦礫の奥から――
黒い魔力が立ち上った。
次の瞬間。
ドォン!!
岩が吹き飛んだ。
魔族が姿を現す。
ローブは破れ、片腕には血が流れていた。
だが目はまだ笑っている。
「面白い」
カイルが剣を構える。
「まだ立つか」
魔族は言う。
「当然だ」
そして俺を見る。
「貴様の魔法」
俺は答える。
「褒めても何も出ませんよ」
魔族はゆっくり言った。
「危険だ」
その言葉に空気が変わる。
魔族は続ける。
「生物だけでなく、構造物にも使える」
「世界そのものを壊せる可能性がある」
俺は苦笑する。
「いや大げさすぎません?」
魔族は首を振る。
「大げさではない」
そして手を上げた。
影が床から溢れる。
今までとは違う。
影が固まり、形を作る。
巨大な体。
四本の腕。
角。
リュナが呟く。
「影の巨人」
魔族は言う。
「これは少し違う」
影の巨人が立ち上がる。
高さは五メートル以上。
カイルが小さく言う。
「まずい」
俺は手を上げる。
「まあ、とりあえず」
「ステータス転写」
影の巨人が光る。
筋力
3
巨人は一瞬止まる。
だが――
倒れない。
俺は眉を上げる。
「……あれ?」
巨人はゆっくり歩き出す。
一歩。
床が揺れる。
カイルが言う。
「支えている」
俺は理解する。
巨人の足元。
影が地面に広がっている。
リュナが言う。
「影が体重を分散してる」
魔族が笑う。
「そういうことだ」
俺は頭をかく。
「対策済みですか」
魔族は頷く。
「貴様の魔法は理解した」
巨人が腕を振る。
ゴォン!!
床が砕ける。
カイルが避ける。
「レオン!」
俺は答える。
「はいはい」
考える。
巨体。
だが倒れない。
影が支えている。
つまり。
俺は床を見る。
影。
その源は――
魔族。
俺は呟く。
「なるほど」
リュナが聞く。
「何」
俺は言う。
「影は魔族の魔力で動いてる」
カイルが理解する。
「つまり」
俺は頷く。
「本体を邪魔すればいい」
魔族が笑う。
「できるか?」
俺は肩を回す。
「試します」
手を上げる。
だが魔族ではない。
魔族の足元。
床。
そこに向けて言う。
「ステータス転写」
床が光る。
筋力
3
次の瞬間。
ミシッ
床が軋む。
巨人の体重。
影の支え。
だが床の強度は筋力3。
耐えられるはずがない。
バキィッ!!
床が割れた。
巨人の足が沈む。
影が乱れる。
巨人のバランスが崩れる。
カイルが叫ぶ。
「今だ!」
剣が光る。
ザン!!
巨人の首を切り裂く。
影が霧のように消えた。
リュナの矢が魔族へ飛ぶ。
魔族はそれを弾いた。
だが――
さっきより明らかに動きが遅い。
魔族は俺を見る。
赤い目が細くなる。
「面白い」
俺は笑う。
「ありがとうございます」
魔族は静かに言った。
「やはり危険だ」
そして続ける。
「貴様の魔法は」
「弱いのではない」
少し間を置く。
「使う者がまだ未熟なだけだ」
俺は少し考える。
そして笑った。
「それは否定できませんね」
ダンジョンの奥から
さらに濃い闇が流れてくる。
魔族が言う。
「そろそろ本気で殺す」
空気が震えた。
カイルが剣を構える。
リュナが弓を引く。
エリシア王女が魔法陣を展開する。
俺は手を上げる。
そして思う。
この魔法。
まだ使い方がある。
もっと根本的な使い方が。
魔族が動いた。




