第15話 弱点と可能性
王都ダンジョン。
入口をくぐった瞬間、空気が変わった。
湿った石の匂い。
薄暗い通路。
天井からは水滴が落ちている。
カイルが前に立つ。
「隊形は私が先頭、リュナが後衛、王女は中央、レオンは自由に動け」
俺は言う。
「いや自由に動けって言われても、俺今魔力ほぼ空なんですけど」
リュナが横から言う。
「魔力は回復してる」
俺は驚く。
「え?」
リュナは壁に触れながら説明する。
「ダンジョンは魔力が濃い。外より回復が速い」
俺は手を握ってみる。
確かにさっきより体が軽い。
「なるほど」
カイルが振り返る。
「使えそうか」
俺は答える。
「まあ少しなら」
歩きながら俺は考える。
俺の魔法。
ステータス転写
自分のステータスを相手にコピーさせる。
ただし弱点がある。
・魔力差が大きすぎる相手には効かない
・魔力を消費する
つまり魔族みたいな相手には使えない。
俺は天井を見ながら呟く。
「このままだと決め手に欠けるんですよね」
エリシア王女が聞く。
「決め手?」
俺は答える。
「魔族に効かないなら、ボス戦で役に立たない」
カイルが言う。
「それでも雑魚には圧倒的だ」
俺は頷く。
「まあそれはそうなんですけど」
その時。
通路の奥で物音がした。
リュナが弓を構える。
「来る」
暗闇から出てきたのは――
ダンジョンウルフ
三匹。
カイルが剣を抜く。
だが俺は手を上げた。
「ちょっと待ってください」
そして魔法を使う。
「ステータス転写」
ウルフの体が一瞬光る。
筋力
3
敏捷
2
ウルフは動きが急に鈍くなる。
カイルが一歩踏み込む。
ザンッ
一撃で終わった。
リュナが呟く。
「便利」
俺は考える。
「でもこれだけだと普通の弱体魔法なんですよね」
カイルが聞く。
「何が問題だ」
俺は答える。
「チートってほどじゃない」
リュナが首をかしげる。
「十分強い」
俺は歩きながら言う。
「いや、もっと使い道があるはずなんです」
しばらく進む。
ダンジョンの通路は広くなっていく。
そして次の部屋。
そこにいたのは――
巨大なミノタウロス
高さ三メートル。
大斧を持っている。
カイルが言う。
「中型ボスだ」
俺は前に出る。
「試してみます」
ミノタウロスが突進してくる。
俺は言う。
「ステータス転写」
ミノタウロスの体が光る。
筋力
3
敏捷
2
巨体の動きが急に鈍くなる。
だがミノタウロスはそのまま斧を振る。
俺は横へ避ける。
そして気づく。
「……あれ?」
俺はミノタウロスを見る。
筋力3。
でも体は三メートル。
つまり。
「重さはそのまま」
俺は呟く。
カイルが聞く。
「何だ」
俺は言う。
「この体で筋力3だと……」
ミノタウロスが動こうとする。
だが。
動けない。
巨体が自分の重さに耐えられない。
膝が崩れる。
ドシン
床に倒れた。
リュナが驚く。
「自重で動けない」
俺は笑う。
「なるほど」
エリシア王女が聞く。
「何かわかったんですか」
俺は頷く。
「俺の魔法って、ただ弱くするんじゃない」
俺はミノタウロスを見る。
「体のサイズとか重量は変わらない」
カイルが言う。
「つまり」
俺は答える。
「巨大な敵ほど、自分の体を支えられなくなる」
リュナが小さく笑う。
「それは強い」
俺は腕を組む。
「まだある気がするんですよね」
ダンジョンを進む。
暗い通路の奥。
その向こうから――
黒い気配
カイルが剣を握る。
「魔族だ」
俺は深呼吸する。
「さっきは効かなかった」
でも今は違う。
俺は呟く。
「どうすれば効く?」
魔族に
ステータス転写を。
本当の意味で
チート能力にする方法を。
ダンジョンの奥から笑い声が聞こえた。




