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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
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機械だらけの宴・こぼれ話 ※ジン視点




『ロボ共鳴』



 部屋の中に、電子音がリズムを刻むように響き渡る。

 その中心で、ピーロボとピービーが互いに向かい合い、跳ねるように声を出し合っていた。


[ぴー。ぴー。ピービー。ピービー。ピーロボ。ピーロボ]

[ピーロボ。ピーロボ。ボク、ピービー。ピービー]


 やり取りはどんどん熱を帯び、ついには部屋全体を震わせるほどの音量になる。


[[ピーピーピーピーピーピーピーピー!]]


「っ、うるさ!? 何やってるんだあいつら!?」


 近くでやり取りを見ていた俺は、突然の大音量に思わず声を張り上げた。鼓膜が震えて頭がガンガンする。

 隣に立つアルヴィスは平然とした顔でその様子を見つめ、肩を竦めた。


「……たぶん、ロボ同士で共鳴し合ってるんだろうな」

「共鳴?」


 俺の声は、騒音にかき消されそうだ。


「同じ所で造られた物同士、プログラムが類似してるとたまに起こる現象なんだ。この間もピーロボとそこら辺歩いてたロボットが共鳴してるのを見た」

「はぁ……」


 説明はもっともらしいが、耳鳴りが酷すぎて頭に入ってこない。


[[ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピー!]]


「………、で。いつ終わるんだ、あれ?」


 聞くと、アルヴィスは顎に手を当て、冷静に様子を観察する。


「うーん。……あの様子だと、2~3時間くらいじゃないか?」

「はぁぁぁぁ!?」


 そんなに長いのかよ。

 俺は天井を仰ぎ、頭を抱えた。

 こんな騒ぎを数時間も聞かされるとか、正気でいられる自信がない。



+


『機械大好きおじいちゃん』



 街中はまるで機械の見本市だった。荷物を運ぶ者、作業を交代する者、整然とした動きの数々。

 規則的な声が飛び交い、整った賑やかさを生み出している。


[お仕事交代。お仕事交代]

[お仕事交代。お仕事交代。バトンタッチ。バトンタッチ]


 その整然とした風景の中、ひとりだけ場違いなほど興奮している老人がいた。


「うおおぉ。レスター殿! レスター殿!」

「!? なんだ、じいさん!?」


 突然呼ばれて思わず振り向く。

 じいさんは白髪を揺らし、両目を輝かせていた。


「ここは恐ろしく楽しい所じゃのぉ! 来れて良かったわい!」

「………。年寄りが楽しそうで何よりだけど、そのせいで倒れられたら困るからほどほどにな」

「わかっとるよ。レスター殿には迷惑は掛けん。でも、少しくらいは良いじゃろ?」


 言葉の端々から、抑えきれない子供のような好奇心が溢れている。

 俺は半ば呆れ、息を吐いて視線を逸らした。


[神様さん、神様さん。ホクホク。ホクホク!]


 ピービーまで楽しそうに跳ねている。


「おお。そうじゃぞピービー。わしは今ホックホクのワックワクじゃ!」

[ワックワク! ワックワク! ジンもワックワク! ワックワク!]

「…………。(テンション高いなぁ)」


 深いため息を吐く。

 だが、楽しそうな二人の顔を見ていると、少しだけ心が和むのも事実だった。



+


『大人シオンちゃん』



 帰路につくための荷物整理をしていた時、不意にシオンが小走りで近づいてきた。

 頬を紅潮させ、何か言いたくて仕方がないという表情をしている。


「ジンさん、ジンさん!」

「ん?」

「夢の中での私、どうでしたか?」

「は?」


 思わず間抜けな声が出る。

 周囲のロボットの規則的な動きと彼女の勢いの落差に、頭が追いつかない。


「夢の中での私、どうでしたか!?」

「ゆ、夢の中でのシオン? ……って、大人の姿になってた時の?」

「はい。是非、ジンさんに見た時の感想を聞こうと思って! 今後の参考に!」


 真正面から目を輝かせられて、俺は言葉に詰まる。

 参考にって、何だろうか。


「感想、ね……」

「なんでもいいんです! 可愛かったなぁ。とか、不細工だったなぁ。とか、簡単な言葉でいいのでください!」

「……不細工だとは思わなかったが、……まぁ、良かったとは思う。普通に成長していけば、シオンはあんな感じになるんだなって……」

「………それだけ、ですか?」

「それだけ?」

「もっと何かないですか? 男の人として、大人の私は魅力的だったなぁ、とか。口説きたいなぁ、とか!」


 彼女は両手を胸の前でぎゅっと握り、身を乗り出してくる。

 その真剣さにたじろいだ俺は、思わず後ずさった。


「……えと、簡単な言葉でいいって言ったよな?」

「はい。言いました! 言いましたけど、聞きたいんです、ジンさんの口から! 今後の参考に!」

「…………。それ、俺に聞いて意味あるのか?」

「う、……い、意味はあります! だってジンさんも男の人でしょ?」

「まぁ、それはそうなんだが。……うーん。そうだな。俺の意見で参考になるかは微妙だけど」

「うんうん!」

「"もう少し"ってとこだな」

「もう少し……?」

「そ。もう少し」

「ど、どの辺が……ですか?」

「全部」

「ぜ、全部?」

「具体的に言おうか?」

「え? あ、い、いいですいいです! 具体的には言わないでください! ……そうですか。あれでもう少しだとすると、あと何を頑張れば……ぶつぶつ」


 そう言うと、彼女は顔を赤くしながら必死に考え込み、唇を噛む。

 あまりに真剣に悩んでいるものだから俺は慌てて両手を振り、空気を和らげようとした。


「あー、えと、でもこれはあくまで俺の意見だからな。鵜呑みにはするな?」

「はい。ありがとうございますジンさん。……よしっ! これで大丈夫! 目指せインテリ美女!」

「、……インテリ?」


 頷き、パッと顔を上げたシオンが言った"インテリ"という四文字。

 何でいきなりその言葉が出てきたのか、その時はわからず、俺はきょとんとして首を傾げた。



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