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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
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vs.CB・2 ※アルヴィス視点





 轟音が響き渡る。

 鉄と鉄がぶつかり合う音、魔力が炸裂する光。ロボットは呪いに侵食され、もはや制御を失った獣のように暴れていた。


「下がってろ!」


 銃を構え、冷静に引き金を絞る。

 放たれた魔力弾がロボットの装甲を弾き飛ばすが、すぐに纏わり付いている黒い靄がその傷を覆い隠した。


「ちょっと!治ってるじゃん!」

[彼に纏っている靄の力でしょう。呪いが動力に直結し、自己修復を行っているのです]


 KBは淡々と刀を構え直し、瞳を鋭く光らせる。


[このままの状態で長期戦はオススメしません。アルヴィス、早期決着の算段を]

「そう言われてもな…」


 俺は短く返し、ロボットの動きを観察する。攻撃は荒いが、力は圧倒的。真正面からの撃ち合いでは押し潰されるだけだ。


[ピー!ピー!!]

「はあっ!」


 ファムがチャクラムを投げ放つ。円環の刃が火花を散らしながらロボットの関節をかすめ、わずかな隙を作った。


[動きがわずかに鈍りました。流石です、ファム」

「えへへ、褒めても何も出ないよ!」

[ピーーーーー!!!]


 ロボットが怒り狂ったように両腕を振り回す。制御棟の壁が崩れ、地面が揺れる。

 KBは冷静に飛び込み、刀に魔力を纏わせて斬り上げた。


[ピー!!]

[CB!これ以上は貴方が壊れてしまいます!暴れるのを辞めなさい!]

「KB!離れろ!」


 銃撃で追い打ちをかける。

 だが完全には止まらず、ロボットはなおも暴れ、俺たちを押し潰そうと迫ってくる。


「もうっ、キリがない!」


 歯噛みをし、ロボットを見つめるファム。

 だが次の瞬間、その瞳にひらめきが宿った。


「……あ。ねえ!機械ってことはさ、こういうのに弱いんじゃない!?」


 いたずらっ子のような笑みを浮かべたファムはチャクラムを地面に叩き付け、魔力を込めて衝撃波を走らせた。

 瓦礫が舞い上がり、ロボットの視界とセンサーを覆い隠す。


「今だよ!アルヴィスくん!」


 名を呼ばれ、即座に走り出す。

 銃を構えながら懐に潜り込み、手際よく弾を撃ち込む。ロボットの動きが一瞬鈍り、その隙を見逃さなかった。


「KB!」

[了解です]


 KBの刀が光を帯び、関節を貫く。ロボットの動きががくりと止まった。


[今しかありません。アルヴィス!シオンの鞄から装置を持ってきてください!]

「装置?…よくわからないけど、持ってくればいいんだな?」

[それまで、私とファムで時間を稼ぎます]

「任せて!」


 ファムがチャクラムを連投し、ロボットを翻弄する。

 俺は、背後で俺たちの戦闘を見ていたジンたちに声を掛けた。顔を向けて、走り出す。


「ジン!」


 ジンたちのもとに行くと、そこは先ほどとは少しだけ状況が変化していた。

 シオンが眠っていて、何故かジンまでもが眠っている。

 それを見て、唖然とした。

 どんな事が起きたら、こうなるんだ。


「寝てるのが増えてる…」

[ジン。ジン。起きる。起きる]

「おお。アースビー殿。どうかしたのかの?」

「…考えてる暇はないな。…爺さん、装置ってわかるか?持ってくるように言われたんだが…」

「装置?…それなら、ケアテイカー殿のバッグの中じゃ」


 爺さんが、眠るシオンを指差す。

 傍に駆け寄り、肩に掛けられたショルダーバッグを開いた。中から小型の箱を取り出す。


「……これが装置か。よし!」


 爺さんに礼を言って、走り出す。

 KBたちの所に戻り、装置をどうすればいいのかと彼女に聞いた。


[その装置を、彼にぶつけてください。思いっきり]


 言われて、俺は装置をロボットに向けて投げ放つ。

 するとそれはロボットの体に吸い込まれるように入っていき、呪いの靄を無理やり引き剥がした。


[ピ、ピーーーー!!]


 ロボットの機械音が悲鳴のように響く。黒い靄が渦を巻き、装置の中に吸い込まれていった。


[あと少しです!CB、頑張って!]

[ピーーーー!!!]


 ——閃光が弾ける。


 呪いが完全に引き剥がされ、ロボットは力を失って沈黙した。重々しい音を立ててその場に崩れ落ちる。

 装置はロボットの体から抜け落ちて、禍々しい靄を纏わせていた。

 装置に纏わりつく靄を、KBは魔法で消滅させる。


「……終わったか?」


 肩で息をしながら、ロボットを見つめる。


[呪いの消滅を確認。もう安心です]


 KBが冷静に告げる。


「やったあ!!」


 ファムが飛び跳ねるように喜び、両手を広げた。


「やったね!アルヴィスくん!」

「……ああ」


 歓びを顕にするファムに、笑みを溢す。

 ホッと息を吐き、俺は持っていた銃をホルダーに戻した。



+


[……ピー]

「あ、起きた!」


 数分後。ロボットの目が淡く光を取り戻す。戦闘の時とは違い、その光はどこか頼りなく揺らいでいた。


[大丈夫ですか、CB]

[………、ここ、どこ?]


 CB。そう呼ばれた機体が、小さく首を傾げる。

 先ほどまで暴れていた鋼の体は、今は子どものように怯えていた。


[ここは制御棟の前です。…何をしていたか覚えていますか?]

[? ………ボク、BB…]

「BB?」


 思わず口を挟む。


[彼と同タイプのロボットですね。彼がどうかしたのですか?]


 問いかけに、CBの声が震えた。


[BB、…処分された。ボク、悲しかった。…BB…ボクに優しくしてくれた。だけど、処分された。悲しくて。悲しくて。…その時、……ピー、…思い出せない]


 機械の声に、確かに「哀しみ」が滲む。


[大丈夫です、CB。今は休んで]

[ピー]


 静かに力を失うように、CBの光がまた落ち着いていく。

 眠るように動きを止めたその姿を、俺はしばらく無言で見つめた。


 KBが、周囲を確認する。


[どうやら、他のロボットたちも動きを止めたようです]

「じゃあ、これで終わったの?」

[呪いの気配もありません。戦いは終わりました]

「………はあぁ。疲れた〜」


 KBの言葉を聞いて、ファムは肩を落とす。

 ロボットたちの暴走は止まった。

 何が終わりの引き金になったのか。それはわからないが、俺もそれを聞いて小さく息を吐き、再びジンたちの方へ顔を向けた。


 ジンとシオンは、未だ目を覚ましていない。



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