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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
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vs.謎の少女 ※ジン視点





 ーー現在。


 場所は、中心の塔。

 螺旋階段を登り切った俺たちは、そこでケアテイカーたちと合流した。


ーーしねしねしねしねしねしねしねしねえええええ!!ーー


「……っ!」


 影のようなヒト型から、札を使ってケアテイカーを強引に引き剥がし、壁に押し付ける。

 しかし、威勢を張ったはいいが、そこからは防御一辺倒。両腕も両足も傷だらけ。攻撃する隙なんざなく、完全に相手のペースとなっていた。


『おいテメェ!さっさと反撃しろ!守ってばっかじゃ死ぬぞ!』

「無茶言うなっての……!」


 パーカー裏の呪いの札と口論してる間にも、影の猛攻で傷は増えていく。包月でダメージは軽減されているが、力が洒落にならん。


「おい、あいつは何なんだ!?いきなり現れて、ケアテイカーを喰おうとしてただろ!」


 振り返りざま、後ろのシオンに叫ぶ。彼女は眉を下げ、ぎゅっと胸の前で手を握りしめて震えていた。


「シオン!」

「っ、あ、えと……」

「戦闘中にボーッとするな!標的にされるぞ!」

「ご、ごめんなさい……」

『おいおい、言い方キツすぎだろ。女には優しくしろっての』

「いえ、大丈夫です。お札さん」


 パンッと頬を叩き、シオンは視線を正面に向ける。

 彼女はさっき、「あれはケアテイカーの中にいたものだ」と言っていた。


「さっきも言ったように、あれは彼の中に居て、かつて生きていたもの。……いえ、もしかしたら“今も”彼の中で生き続けているのでしょうか」

「どういう意味だ?」

「彼の記憶は誰かに奪われたのではなく、自分で消したんです。彼女を封じるために」

「封じる……?」

『……で、つまりあれは何だってんだ?』

「……あれは、“呪い”です」

「はぁ!?」

『マジかよ!あれが呪いだと!?』


 シオンの言葉に、俺と札は声を荒げる。

 扉の向こうでは、ケアテイカーがアラタの傍らで心配そうに佇んでいた。


ーーほらほら!守ってるだけじゃ保たないよ!?さっさと殺されちゃう?ーー


「っ……!」


 影の攻撃がますます苛烈になる。

 包月の効力も、もう保たない。


『確かに……気配は完全に呪いそのものだな』

「ちょっと待て。もしあれが呪いなら、ピービーが何か反応してるはずだろ」


 ケアテイカーのそばで、アラタの治療に必死なピービーを見る。

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら「治療、治療」と繰り返していた。


『封印されてたから反応しなかったんだろ。呪いの力は封じられると外からじゃ見えねぇからな』

「ええ。だから彼が機能しなくても不思議ではありません」

「…………」


 その時、影の一撃が札に直撃し、包月がパリンと砕け散った。


「っ!」


 瞬間、防壁を失った俺たちに攻撃が襲いかかる。全身に無数の傷を負い、シオンを庇いながら扉の向こうへ吹き飛ばされた。

 受け身を取りつつ体勢を立て直すと、血が流れる腕が重く感じられる。


「ジンさん!」

『チッ、やっぱ包月なしじゃヤベぇな!』


 視線を向けると、ケアテイカーが倒れているアラタを心配そうに見つめていた。


[治療。治療]

「ん……」

「! アラタ!大丈夫!?」

「……シオン?」

「……よかったぁ……死んじゃったかと思ったよ」


 アラタが目を開け、ケアテイカーが安堵の笑みを浮かべる。

 ピービーは「よかった、よかった」と言わんばかりに転がってきて、俺の前で止まった。


[ジン。ジン。治療。治療]

「ああ……助かる」


 光に包まれ、傷が癒えていく。

 だがその行動に、呪いの札は疑念を抱いて出てきた。


『お前、治癒能力なんて持ってたか?』

[ぬ?]


 札の問いに、ピービーはきょとんと首を傾げた。


ーーなんか変なのがいっぱいだねぇ。……いつの間に、ここはこんなに煩い場所になったのかなぁ?ーー


 扉の向こうから呪いが這い出してくる。

 俺は咄嗟にピービーを抱え、懐からもう一枚、札を抜いた。シオンはケアテイカーたちを庇うように立ち上がる。


「ちょ、な、何だあれ!?怖っ!!」

「ぼ、僕にも……何が何だか……」

『おい、どうする?一旦逃げるか?』

「この状況で逃げられると思うのか?」

『ん……あー、無理だな』


 ピービーの治癒で傷は徐々に癒えていく。

 俺が立ち上がると、呪いはケタケタ笑いながらケアテイカーへ視線を向けた。


ーーねぇ、シオン。私を拒絶するの?ーー


「!」


ーー私はずっと待っていたのに。……数百年も待ってたのに。あの時、約束したよね?私たちはずっと一緒。離れないってーー


「ぼ、僕は……」


 ケアテイカーは怯えながら声を漏らす。

 彼を背に庇い、シオンはぎゅっと唇を結んで呪いを睨み付けた。大人の姿を想像しておいて正解だったな、と俺は思う。


「シオン。彼女の言葉に耳を貸さないで」

「…………」

「姉ちゃん誰?おっさんの知り合い?」


 だから、おっさん言うな。


『なぁ、勝てる見込みあんのか?』

「……厳しいな。この場で戦えるのは俺たちだけだ。全力を出しても勝てるかどうか」


 力の差は歴然。勝てたとしても辛勝だろう。ケアテイカーが戦えれば策も出せるが、今の状態じゃ無理だ。


ーー私のシオン。貴方は私のもの。誰にも渡さない。私の、私の、私の、私の……!!ーー


「ひっ!」

「封縛!」


 狂気の声とともに腕を伸ばしてきた呪いに、俺は札を投げる。

 札から放たれた無数の糸が腕を絡め取り、顔面に迫る寸前でピタリと止めた。


ーーっ、邪魔をしないで!!ーー


「シオンは渡さない!絶対に!」

[治療完了。完了]

「助かる、ピービー。これで全力で動ける」


 新しい札を懐から引き抜き、ピービーを足元に下ろす。ピョンピョンと飛び跳ねながら、頼もしそうにこちらを見上げてきた。


 呪いは今度は俺に顔を向け、獰猛に目を細める。


ーーどうやら脅威は貴方だけみたいね。なら、先に貴方を殺すわーー


『おいおい、標的変わったぞ。やれんのか?』

「……やれるって言ったら嘘になる。でも、お前の“全部”を貸してくれるなら、たぶんイケるかな」

『俺様の全部?はっ!無理だな!俺様の全部は俺様のもんだ!それに、俺様の名前すら知らねぇ赤ん坊に渡せるかよ!』


 高らかに笑う札。

 やっぱ名前あるんだな。

 ダメ元で聞いてみるか。


「……ちなみに、名前は?」

『ん?俺様の名はな――……って、言うわけねぇだろ!馬鹿か!』


 残念。引っかからなかった。


『……まぁいい。ほどほどになら貸してやるよ。あいつは強ぇからな』

「それで十分だ」


 俺は口元を緩め、札を構え直す。

 呪いは力を溜め、今にも飛びかかってきそうな気配を纏っていた。


[ジン。頑張れ。頑張れ]

「…………」


 ケアテイカーは不安げに眉を下げながら、その光景を見つめていた。



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