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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
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シオンとアラタ






 ーー……ン、……オン……ーー


 ……誰かが、僕を呼んでる。


 ……ーーン、シオン……!ーー


 ……誰? 誰が僕を呼んでるの?


 おい! シオン! シオンってば!


 ……この声、聞いたことがある。

 確か、この声は……。


+


「シオン! シオーーーン!!」

「……っ!」


 ハッとして目を開ける。


 目の前にいたのは、赤い髪を逆立てた少年。

 眉をひそめて僕を睨みつけ、さっきまで必死に僕の名前を呼んでいたらしい。


「やっと反応したか。ったく、どれだけ呼んでも返事しねぇし! 無視すんなよ!」

「あー……えと、ごめん。……誰?」

「あん!?」


 ピシッと空気が張りつめる。

 「憤怒」という言葉がぴったりくる反応を見せた彼は、ためらいもなく僕の胸ぐらをつかんだ。


 力任せにぐらんぐらんと揺さぶりながら、彼は叫ぶ。


「おっまえ!! いい加減にしろ!! お前の記憶戻すのに、俺がどれだけ苦労したと思ってんだ! 記憶喪失は一回だけで充分だぞコラァ!!」

「ぐ、ぐあっ、ちょ、苦しい苦しい!」


 脳ミソがシェイクされてる! 吐きそう!


「ご、ごめんごめん! 冗談! 冗談だって!」

「冗談言ってる場合かぁああ!!」


 叫んだあと、彼は手を離し、大きく息を吐いた。


 ……うう、まだ頭がぐらぐらする。


「ったく。急いでるって言うから予定を切り上げて街を出たのに、肝心のお前がボーッとしてどうすんだよ」

「……ごめん。でもおかげで意識が戻ったよ。ありがとう」


 そう言って笑うと、彼は腕を組んでそっぽを向く。


 彼の名前はアラタ・リンクス。

 僕の友達で、ずっと一緒に旅をしている仲間だ。


「………で、僕たち、今どこに向かってるんだっけ?」

「はぁ!?」


 ぽかんと首を傾げると、アラタは再び眉をひそめて声を荒げる。


「おっまえなぁ……っ! ……~~っ、はぁ。まぁいい。お前がそういう奴だってことはわかってる」

「はは」

「笑うな!」


 腰に手を当てながら、アラタは首を振って大きくため息をつく。

 そして前方を指差し、目的地を告げた。


「俺たちが向かってんのは"中心の塔"だ。そこに行けば、探してるもんが見つかるらしい」

「へぇ……」

「……いや、それお前が言ったんだよ! なんで初耳みたいな顔してんだ!」


 肩を落とすアラタ。

 視線を落とすと、僕たちは鉄骨の上に立っていた。梯子のような鉄骨が地面に張りつき、見えない遠くまでずっと伸びている。


「…………」


 ここを渡らなければ、塔へは辿り着けないらしい。


[にゃあ]

「わっ」


 ショルダーバッグの中から、黒猫のクロが顔を出した。

 軽く鳴いて、ぴょんと飛び出す。


[にゃあ]

「ほら。クロも“しゃんとしろ”って言ってるぞ。旅の中心はお前なんだからな」

「? クロの言葉がわかるの?」

「なんとなくだよ、なんとなく。ほら、戻ったんなら行くぞ。パッと片付けてパッと終わらせる」


 言いながらアラタは歩き出す。

 クロもその後を追い、僕は少しの間、その背中を見つめていた。


「……………」


 ……僕は今まで、何をしていたんだろう。

 ずっと彼と旅をしてきたのかな?


 ……いや。何かを忘れてる気がする。


「……ん?」

「何してんだ」

「! わっ!」


 顎に手を添えて唸っていると、背後から声がした。

 振り返ると、そこに立っていたのは背の高い男の人。


 灰色の髪に、黒いパーカー。

 どこかで見たことがあるような気がするけれど、思い出せない。


「早くついてかないと、置いてかれるぞ」

「え、あっ……アラタ! ちょっと待って!」


 ハッとして走り出す。

 途中で振り返ると、男の人の姿はもうなかった。


「…………」


 ……なぜか、彼のことは覚えておかなきゃいけない気がした。


「シオン! 置いてくぞ!」

「い、今行くってば!」


 そして僕は再び走り出す。

 "中心の塔"までは、もう少しーー。



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