vs.ロボットたち ※ジン視点
「ケアテイカー!!」
突然、その場に倒れ込んだケアテイカーに駆け寄り、声を掛ける。
揺さぶっても、頬を叩いても、起きる気配はなかった。
[ケアテイカー。ケアテイカー。起きない。起きない]
「これは、どういう事だよ…!」
苛立ちを抑えきれず、KBに向かって叫ぶ。
その間にも、ロボットたちは絶え間なく増え続けていた。
[ご安心ください。…シオンは今、眠っているだけです]
「は?」
眠っている――?
[黒い箱が身体に順応するために必要な過程です。大丈夫。すぐに目を覚まします]
口元を緩ませて、KBは笑った。
俺は眉をひそめ、腕の中でぐっすりと眠るケアテイカーを見つめる。
[ピー!!]
「ちょ!止まんないんだけど、KBちゃん!!」
箱は消えたのに、ロボットの猛攻は止まらない。それどころか、さっきよりも勢いを増して突進してきていた。
すると、一体のロボットが両手を掲げて叫ぶ。
[箱の気配なくなった!次の目標に設定!次の目標は、ジン・レスターの捕獲!捕獲!]
『捕獲ー!』
「………は?」
ロボットたちが叫ぶ。
今、何て言った?
[突撃ーーー!!]
一体の命令を皮切りに、他のロボットたちが一斉に突進してくる。
KBとファムが前に飛び出し、無作為に突っ込んでくるロボットたちを次々と蹴散らしていった。
[怯むなー。我らが主のご命令を遂行しろー!]
「ちょっと!どうなってんの、これ!?」
[あなたたちの主はBのはずです!彼女はそんな命令をしていません!]
[ジン・レスターの捕獲。捕獲ー!]
「っ、」
ロボットたちの攻撃は止まらない。
このまま応戦していても、消耗するだけだ。
KBは険しい表情でロボットたちを睨み付ける。
[このままではいけません。退避いたしましょう]
「この状況で逃げるの?どうやって?」
[私が退路を作ります]
そう言うと、KBは頭上に魔法陣を浮かべ、炎を放つ。
無数の火球が弾丸のように発射され、ロボットたちを一気に吹き飛ばした。
[ファム、先頭をお願いします。私は殿を務めます]
「わかった!」
[ジンはシオンを!]
「くそっ…!」
俺はシオンを背負い直し、歯を食いしばる。
ロボットたちが倒れて道が開けた瞬間、俺たちはその場から駆け出し、部屋を飛び出した。
だが、すぐにロボットたちは立ち上がり、追撃を始める。
[待てー!ジン・レスター捕獲ー!]
[ピー!ピー!ピー!]
何がどうなってんだ。
箱がなくなったから次は俺を狙う?わけがわからない。
「はぁ、…っ」
背中に眠るケアテイカーの体温を感じながら、振り返る。
ピー、ピーと機械音を鳴らして迫ってくる群れの姿に、得体の知れない恐怖が背筋を這い上がった。
そして、そのまま俺たちは建物の外へ。
だが、どこに逃げても安全な場所なんてない。
眉をひそめ、俺は舌打ちをひとつ落とした。
+
制御棟まで辿り着き、ようやく足を止める。
振り返ると、ロボットたちは追ってきていなかった。
深く息を吐き、ホッと胸を撫で下ろす。
「はぁ、はぁ…。ここまで走ってきたけど、このあとどうするの?」
ファムがKBに尋ねる。
[とりあえず、シオンが目を覚ますまでは隠れていた方が賢明かと。この制御棟の先に、有事の際に解放される避難施設があります。そこへ行ってーー]
「? KBちゃん?」
言葉の途中で、KBは口を閉ざす。
その直後、頭上からガラスが割れる音が響いた。視線を上げると、二つの影が見える。
ひとつは小さく、ひとつは大きい。
その大きな影が魔法を使って着地し、俺たちの前に立ちはだかった。
そして、頭上に浮かぶ小さな影を睨み付ける。
落ちてきたのは――アルヴィスだった。
「アルヴィス!?」
[ピーーーー!!]
同時に、小さな影も勢いよく落下し、地面に大きな穴を穿つ。
[ピー。ピー。恨む。恨む]
それは、先ほどの群れと同じロボットだった。
だが、その両目は真っ赤に輝き、両手を不気味に震わせている。
「っ、こいつ!」
[ピー…ッ!!]
アルヴィスは銃を構え、睨み付ける。
緊張が張り詰め、場が一気に凍り付いた。
そのロボットは、他の個体とは明らかに異なる雰囲気を放っていた。
[ピー!ピー!呪い!呪い!強大な呪い!!]
足元で転がっていたピービーが甲高い声を上げる。
「何だよ…あれ?」
[…あれは、CB?]
「知り合い?KBちゃん?」
[ええ。……まさか彼まで]
[ピー!ピー!ボクは恨む!みんな恨む!ボクたちを作った人間を恨む!壊されていった仲間を返せ!返せぇ!!]
ロボットの絶叫が響き渡り、体から黒い靄が噴き出した。
それは不吉な煙のように空気を侵し、じわじわと周囲に広がっていった。




