表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
78/106

バイオルームで





 ロボットたちに案内されて、バイオルームの扉が開く。

 部屋に入ると、そこにはジンたちの姿があった。まさかこんな場所で再会するとは思わず、僕は思わず目を見開く。


[ケアテイカー! ケアテイカー!]

「! ジン! ピービー! えっ、神様まで!?どうしてここに――!?」


 ピービーが弾かれたように近づいてきて、ぴょんぴょんと跳ねる。


[あなたたちは……私たちが戻るまで待っていろと、あれほど言ったのに]


 ポツリとKBさんが呟いた。


「待つつもりではいた。けど――そこのジジイとピービーのおかげで、ここまで来ちまったんだ」

[……はぁ。まぁ、来てしまったのなら仕方ありませんね]


 KBさんは小さく息を吐き、ジンたちの奥に立つ一人の女性へと視線を送る。

 目が合うと、その女性はふっと口元を緩ませ、懐かしそうにKBさんを見つめ返した。


「……久しぶりね、KB」

[はい。ご無沙汰しております、B。――私の廃棄処分が決まった日以来の邂逅ですね]


 部屋の中央まで歩み寄り、KBさんは淡々と告げる。

 Bと呼ばれた女性は眉を下げ、静かに目を伏せた。


「ごめんなさい。あの時は……ああするしか方法がなくて」

[いえ。あの時のあなたの判断は最適でした。どうか悔やまないでください]

「……ありがとう、KB」


 そう言ったあと、Bさんは僕へと顔を向けた。


「そして――あなたも。久しぶり……と言って、通じるかしら?」

「うん。大丈夫。わかるよ。……お母さん」

「! ……そう。記憶が戻ったのね」

「KBさんのおかげ、なのかな……」


 力なく笑いながら言葉を返すと、B――お母さんは目を見開き、一瞬だけ泣きそうな表情を浮かべた。


「……ご苦労さま、皆さん。持ち場へ戻って結構ですよ」

[[ピー]]


 僕たちを連れてきたロボットたちへ、お母さんはそう命じる。

 しかし、一度は返事をしたものの、彼らはその場から一向に動こうとはしなかった。


 不審に思ったお母さんは、首を傾げながらもう一度同じ言葉を繰り返す。


「……あなたたち、何をしているの?持ち場に戻っていいのですよ」

[[…………]]


 今度は返事さえない。

 一体どうしたというのか――。


 僕もロボットたちに顔を向けたその瞬間、耳をつんざくほどのノイズが鳴り響き、彼らは一斉に僕たちへ襲いかかってきた。


[ピー!!]

[ピー!ピー!ピー!!]


 まん丸な両目を赤く光らせ、ロボットたちは両手を広げて突進してくる。

 小さな体だからと侮ってはいけない。

 その力は、人間のそれよりもはるかに強いのだ。


「っ、危ない!」


 お母さんが叫ぶ。

 飛びかかってきたロボットたちは、ジンの側にいた紺色の髪の男によって叩き落とされた。


[ピー!]

[ピー!ピー!]


 床に叩きつけられ、ひっくり返ったロボットたちの車輪がむき出しになったまま、空しく回り続ける。


 直後、部屋の外からまた音が響いてきた。

 ピー。ピー。まるで警報のように鳴り渡る。


「な、なんだ?」


 ジンが戸惑いの声を上げたその時、ピービーがふるふると体を震わせ、僕の腕に飛び込んできた。


[呪い!呪い!]

「え?」


 声を荒げて叫ぶピービー。

 “呪い”という言葉を聞いて、僕とジンは顔を見合わせる。


[ピー!]

[ピー!ピー!ピー!]


 ひっくり返っていたロボットたちが自動で体勢を立て直し、ぞろぞろと部屋の外へ出ていく。

 同時に、開いていた扉がバタンと閉まり、ガタンッと大きな音が響いた。


「行っちゃった……」

「追いかけなくていいのか?あれ」

[呪い!呪い!放置ダメ!絶対!]

「ピービーの言う通りだよ。追いかけよう、ジン!」

[待ってください。それは不可能かと]

「え?KBさん?」


 ジンと顔を見合わせて頷き合い、僕たちは部屋を出ようと足を踏み出した。

 だが、その前にKBさんが立ちふさがり、僕たちの動きを止める。

 扉に近づいたKBさんは、じっと観察するように見つめた。


「……KBさん?」

[やはり、扉が開きません]

「は?」

[おそらく、先ほどのロボットたちが扉の開閉装置を破壊したのでしょう]

「はあ?なんだそれ?」


 ジンは首を傾げながら扉に近づき、ドンドンと叩いてみる。

 しかし扉はびくともしなかった。


「ダメだ、開かない」

[こうなってしまえば、扉を壊さない限り外へは出られないでしょう]

「どうするんじゃ?扉が開かなかったらロボたちを追えんぞ?」

「どうするって言われても……」

「なら、扉をぶっ壊してしまえばよろしいかと」


 うーん、と考え込んでいると、背後からお母さんの声がした。

 振り返ると、お母さんは口元に笑みを浮かべていた。だがその目は冷たく笑っておらず、僕の背筋にぞくりとしたものが走る。

 ――いつの間にか、お母さんは怒っていた。もちろん、矛先はロボットたち。


「私が許可するわ。アルヴィス、扉を蹴破りなさい」

「蹴破……って、俺がやるのかよ」

「ええ。大丈夫、心配ないわ。研究費でなんとかなるでしょうから」

「……はぁ、仕方ない」


 アルヴィスと呼ばれた男の人が後頭部を掻きながら扉に近づく。

 彼は懐から一枚の札を取り出した。――魔封術師が使う札だ。

 その姿を見て、ジンが驚いたように目を見開く。


「……わかった。それじゃ、下がっててくれ」

「お前、それ……!」

「黙ってたけど、俺もお前と同じ魔封術師なんだ。……まだなりたてだけどな」

「蹴破るって、どうするんじゃ?」

「まあ、見てろよ」


 僕たちはアルヴィスさんに任せ、距離を取って下がる。

 アルヴィスさんは札を扉に貼りつけ、低く呪文を唱えた。

 やがて淡く光り出す魔法陣。彼はそれを見据え、助走もなく渾身の蹴りを叩き込んだ。


 ドコォッ!!


 轟音とともに扉は一瞬で吹き飛び、向かいの壁へと叩きつけられる。


「「おー!」」


 僕と神様が同時に声を上げた。

 変形した扉が壁にめり込み、煙がゆらゆらと立ち上る。


「さすがね、アルヴィス」

「……あー、これ本当に研究費でなんとかなるか?」

「ならなかったら、その時に考えればいいわ。それより――これでロボットたちを追えるでしょう」


 お母さんの言葉に、KBさんは静かに頷いた。


『ビーッ!ビーッ!』


 部屋を出た瞬間、建物内に大きな警報音が鳴り響く。


「お母さんはそこにいて!」

「シオンを頼む!」

「アルヴィス…!」


 そう叫び、僕たちは音に急き立てられるようにして駆け出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ