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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
77/106

CBとBB





 そのロボットは、故障していた。

 そのロボットは、移動してはぶつかり、また移動してはぶつかり──それを繰り返す欠陥品のロボットだった。


 彼の名前は、CB。

 運搬専用に作られたロボットである。


 今日も彼は、日課である運搬作業を続けていた。



+


 カタカタ、カタカタ。

 カタカタ、カタカタ。

 カタカタ、カタカタ──。


[CB、CB。そこは違う、そこは壁だ。こっちが正しい道だよ]


 今日もCBは壁にぶつかっていた。

 足元の車輪は空回りし、前にも後ろにも進めず、ただ目の前の壁にカタカタとぶつかり続けている。


 彼の体の上には、シオンという名の少女に届ける朝食が入った四角い箱。

 それを大事そうに抱えながら、CBはぶつかり続けていた。


[ピ、ピピピ……届ける、届ける。お荷物、届ける……ピピピ]


 そんなCBを見かねて声をかけたのは、同タイプのロボット──BBだった。

 BBはCBを導き、正しい道を示す。

 時には手を引き、時には背中を押し、彼を目的地へと運んでいった。


 それ以来、CBとBBは仲良くなった。

 その日からCBは壁にぶつかることがなくなり、運搬作業もスムーズに進められるようになった。


[ありがとう、ありがとう、BB。BBは恩ロボ、恩ロボ]


 CBは何度も感謝を繰り返した。

 感謝されることは嬉しいこと。

 BBはその気持ちに満たされ、これからもCBを助けていこうと心に誓った。


 ──しかしある日。


 BBの体に組み込まれたパーツのひとつが誤作動を起こし、故障してしまった。

 そのせいで、BBは処分されることになった。


 CBは悲しかった。

 どうしてBBが処分されなければならないのか。

 自分だって故障しているのに、なぜBBだけが……。


 処分の日。

 CBは彼らを生み出した人物のもとへ行った。


「BBを処分するなら、自分も処分してほしい」──そう頼んだ。

「自分の方が欠陥だらけなのだから」と、自ら処分を願い出た。


 だが、答えは「NO」だった。


「貴方は故障なんてしていないわ。どこも壊れていないから、処分はしないの」


 そう告げられ、BBだけが処分された。


 CBは泣いた。

 涙は流れないけれど、心の奥で確かに泣いていた。


 外は雨だった。

 運搬作業は中止。

 CBはカタカタと車輪を鳴らしながら、BBが棄てられた処分場へ向かった。


 辿り着いた処分場で、彼は泣いた。

 涙は出ない。

 だから両手をバタバタと振り回し、それを涙の代わりとして、泣き叫んだ。


 その時、一人の少女が現れた。

 雨の中を歩いてくる姿は珍しく、CBは思わずその姿を見つめる。


 黒い装いのその少女は、CBを抱き上げ、慰めてくれた。

 すると──CBの体はみるみるうちに黒く染まり、少女と同じ色に変わっていった。


 その瞬間、彼の中に知らない感情が芽生えた。

 それは「憎悪」と「怒り」。


 BBが処分されたこと。

 自分が欠陥を抱えているのに処分されなかったこと。

 なぜ自分ではなく、BBが消えなければならなかったのか。


 CBは怒った。


 少女が彼を足元に降ろすと、CBは処分場を去っていった。

 行き先は──自分たちを造った人物のもと。


 BBの仇を取りたい。

 憎悪と怒りに支配され、CBは我を忘れて復讐のために走り出した。



 その背中を、黒い少女は見送る。

 口元をクスクスと歪めて、楽しげに笑いながら。




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