CBとBB
そのロボットは、故障していた。
そのロボットは、移動してはぶつかり、また移動してはぶつかり──それを繰り返す欠陥品のロボットだった。
彼の名前は、CB。
運搬専用に作られたロボットである。
今日も彼は、日課である運搬作業を続けていた。
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カタカタ、カタカタ。
カタカタ、カタカタ。
カタカタ、カタカタ──。
[CB、CB。そこは違う、そこは壁だ。こっちが正しい道だよ]
今日もCBは壁にぶつかっていた。
足元の車輪は空回りし、前にも後ろにも進めず、ただ目の前の壁にカタカタとぶつかり続けている。
彼の体の上には、シオンという名の少女に届ける朝食が入った四角い箱。
それを大事そうに抱えながら、CBはぶつかり続けていた。
[ピ、ピピピ……届ける、届ける。お荷物、届ける……ピピピ]
そんなCBを見かねて声をかけたのは、同タイプのロボット──BBだった。
BBはCBを導き、正しい道を示す。
時には手を引き、時には背中を押し、彼を目的地へと運んでいった。
それ以来、CBとBBは仲良くなった。
その日からCBは壁にぶつかることがなくなり、運搬作業もスムーズに進められるようになった。
[ありがとう、ありがとう、BB。BBは恩ロボ、恩ロボ]
CBは何度も感謝を繰り返した。
感謝されることは嬉しいこと。
BBはその気持ちに満たされ、これからもCBを助けていこうと心に誓った。
──しかしある日。
BBの体に組み込まれたパーツのひとつが誤作動を起こし、故障してしまった。
そのせいで、BBは処分されることになった。
CBは悲しかった。
どうしてBBが処分されなければならないのか。
自分だって故障しているのに、なぜBBだけが……。
処分の日。
CBは彼らを生み出した人物のもとへ行った。
「BBを処分するなら、自分も処分してほしい」──そう頼んだ。
「自分の方が欠陥だらけなのだから」と、自ら処分を願い出た。
だが、答えは「NO」だった。
「貴方は故障なんてしていないわ。どこも壊れていないから、処分はしないの」
そう告げられ、BBだけが処分された。
CBは泣いた。
涙は流れないけれど、心の奥で確かに泣いていた。
外は雨だった。
運搬作業は中止。
CBはカタカタと車輪を鳴らしながら、BBが棄てられた処分場へ向かった。
辿り着いた処分場で、彼は泣いた。
涙は出ない。
だから両手をバタバタと振り回し、それを涙の代わりとして、泣き叫んだ。
その時、一人の少女が現れた。
雨の中を歩いてくる姿は珍しく、CBは思わずその姿を見つめる。
黒い装いのその少女は、CBを抱き上げ、慰めてくれた。
すると──CBの体はみるみるうちに黒く染まり、少女と同じ色に変わっていった。
その瞬間、彼の中に知らない感情が芽生えた。
それは「憎悪」と「怒り」。
BBが処分されたこと。
自分が欠陥を抱えているのに処分されなかったこと。
なぜ自分ではなく、BBが消えなければならなかったのか。
CBは怒った。
少女が彼を足元に降ろすと、CBは処分場を去っていった。
行き先は──自分たちを造った人物のもと。
BBの仇を取りたい。
憎悪と怒りに支配され、CBは我を忘れて復讐のために走り出した。
その背中を、黒い少女は見送る。
口元をクスクスと歪めて、楽しげに笑いながら。




