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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
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何処もかしこもロボ ※ジン視点





「ここだ」


 アルヴィスの案内で、俺たちは地下にあるカードキールームへとたどり着く。

 中へ足を踏み入れると、そこは天井が高く広がる巨大な空間だった。

 ずらりと並ぶ棚は、この国に来て最初に見たコンテナと同じ素材でできているように見える。圧迫感はないが、人工的で冷たい印象を与える場所だった。


 明かりを点けた瞬間、ヴィーという低い機械音が響いた。思わず身構えたが、コンピューターの起動音だとアルヴィスが教えてくれる。


「こんぴゅーたーって……」

「……あれの事かの?」

[コンピューター。コンピューター。カードキー探す。探す]


 ピービーがコロコロと転がり、入り口横に置かれた箱の上にぴょんと飛び乗った。

 俺とじいさんも箱へ近づき、まじまじと観察する。無数のボタンが並んでいるが、何に使うのかはさっぱりわからない。


《こんにちは、ご用件をどうぞ》

「!」


 ……喋った!


「すまない。カードを紛失してしまったんだ。再発行を頼みたい」

《カードキーの再発行ですね。すぐに担当ロボットが参ります》


 機械音声がそう告げると、カタカタと軽快な音を立てながら小さなロボットが姿を現した。


 高さも幅も十センチほどしかない四角い体。ピー、と短く電子音を鳴らし、アルヴィスの前で動きを止める。


[ピーピー。カードキー再発行につき、顔と声の確認を行います。顔を近付け、声を出してください]

「……久しぶりだな、ピーロボ。元気だったか?」


 アルヴィスがしゃがみ込んで声をかけると、ピーロボと呼ばれた小さなロボットは両目をパチパチと光らせ、彼の顔をじっと見つめる。


 やがて側面の細長い腕をパタパタと揺らし、再びピーと鳴いた。


[……確認中。確認中。……確認完了。お久しぶりです、マスターアルヴィス。二ヶ月と二十三日ぶりですね。ピーロボは、今もお元気です]

「それは良かった」

[ピピ。マスターアルヴィスの研究員ナンバーは2843。カードキーのランクはA5。再発行カードキーはランクA5。少しお待ちください]


 そう言うと、ロボットはくるりと方向転換し、奥の棚の方へ移動していった。俺も好奇心に駆られて後を追う。足が見えないが、裏に車輪でもついているのだろうか、滑るように動いていく。


 やがて「A5」と書かれた棚の前で停止した。見上げると、カードキーは棚の高い位置に保管されている。俺なら手も届かない高さだ。どうやって取るのかと首をかしげた瞬間、ロボットの腕がするすると伸び、あっさりとA5のカードキーをつかみ取った。


「おー……」


 俺とじいさんは同時に声を漏らす。器用にカードキーを抱えたロボットは、アルヴィスの元へ戻ってきた。


[マスターアルヴィス。A5のカードキー。献上致しまする]

「さんきゅ、ピーロボ。助かったよ」


 カードキーを受け取ったアルヴィスは、ロボットの頭を軽く小突いた。ロボットは嬉しそうに、その場でくるくると回る。


 ……ロボットって、すげぇ。


 感心して眺めていると、足元でピービーが飛び跳ねながら俺の名を呼んだ。


[ジン! ジン! ボクも出来る! ボクも出来る!]

「ん? 出来るって?」

[カードキー、取れる。取れる。A5のカードキー、取れる!]


 得意げに言い放ち、ピービーは棚の方へ行こうとする。慌てて止めると、目をぎゅっとつむってバタバタ暴れ出した。


「お前はやらなくていいって……!」

[んー! ボクも出来る! 出来る!]

「なんで対抗心燃やしてんだよお前は……」


 肩を落としてため息をつく。


「レスター殿は好かれとるのぉ」


 じいさんが笑いながらそう言う。俺が必死でピービーを押さえている姿を見ての言葉らしい。


 ……これのどこが「好かれてる」なんだよ。


+



 こうしてカードキーを手に入れた俺たちは、いよいよBの居る研究棟へ向かうことになった。

 先程の部屋で俺たちの帰りを待っていたシオンと合流して、建物…制御棟をあとにする。


 アルヴィスの案内で北へ真っ直ぐ歩くと、巨大なドーム型の建物が姿を現した。あれが研究棟のようだ。

 入り口には無機質な扉があり、脇にコンピューターの箱が備え付けられている。アルヴィスに言われた通り、手に入れたばかりのカードキーA5をかざすと、扉は低い音を立てて左右に開いた。


 中に入った瞬間、思わず息を呑む。

 そこは、数え切れないほどのロボットたちが動き回る世界だった。


「ここが研究棟か」

[仲間たくさん! 仲間たくさん!]


 ピービーが嬉しそうに跳ね回る。俺はきょろきょろと辺りを見回しながら、人工的な光に照らされた空間に圧倒されていた。


 アルヴィスは迷いなく奥へ進み、カウンターのような場所へ向かう。そこには待機しているらしいロボットが一体、無言で座っていた。


「どうも。Bが居る階を教えてくれ」

[……声帯確認。確認完了。こんにちは、アルヴィス・アースビー様。B様は現在、三階のバイオルームにてお仕事中です。三階に行くには、カードキーA3以上が必要です]

「さんきゅ」


 その間にも、ロボット同士がすれ違いざまにバチッと音を鳴らす。

 ピービーによると、電気信号で頭脳パーツをリンクさせ、前任者の作業内容や次に必要な情報を共有しているらしい。効率的に作業を引き継ぐための仕組み――だそうだが。


 …………、……なるほど。いや、まったくわからん。


[ジン、頭悪い。頭悪い]

「……いや、これは俺じゃなくても理解できねぇだろ。なぁ、じいさん?」

「わしはそれよりも、ここに居るロボたちがどう動いておるのかを知りたい」

「……………」


 ……じいさんの目がきらきらしてる。

 同意を求めたのが間違いだったな。俺は呆れたように溜め息を吐いた。


「Bは三階に居るらしい。行こう」

「ん、……ああ。行くぞ、じいさん」

[三階。三階。B、三階]

「アルヴィス殿。あの二足歩行ロボはどんな仕組みで動いておるんじゃ?」

「? ああ、あれは身体の真ん中部分にモーターが入ってて、そこから――」

[答えなくていいよ、アルヴィス。早くBに会いに行く。行く]



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