会いに行く前に ※ジン視点
かくかくしかじか、あれやこれや。
ピービーの仲介のおかげで、どうにか誤解は解けた。
「……すまない。完全に俺の勘違いだった」
敵意を解いたアルヴィスは、申し訳なさそうに眉を下げて俺たちへ頭を下げる。
「謝らんでもよい。何も知らずにこの部屋に入ったわしらにも非はあるからの」
「……ピービーのせいだけどな」
[ごめんなさい]
ベッドの端に座った俺の膝の上で、ピービーは小さく震えながら目を垂れさせる。
それを隣に座るシオンは、くすりと笑いながら見守っていた。
[にゃあ]
「あ、うん。そうだね。Bのところに行かなきゃ」
シロが短く鳴くと、シオンは立ち上がり、俺たちに背を向けて歩き出した。
「? Bのところに行くのか?」
「うん。起きたら来るようにって言われてるから」
「Bって……ケアテイカーとKBが会いに行くって言ってた奴か?」
[B。B。僕たちも会いに行く。Bに会いに行く]
ピービーがぴょんぴょんと跳ねながら言う。
そこで跳ねないでくれ、痛いから。
「その……Bというのはどこに居るんじゃ?」
「Bなら研究棟にいるよ」
[けん、きゅうとう……?]
「PBも知ってるだろ。ここから北に行ったドーム型の建物。あれが研究棟だ」
[研究。研究。Bは研究好き。好き。ジン。ジン。研究棟行く。行く]
ピービーは弾むように跳ね続ける。
……だからそこで飛び跳ねるな。
「研究棟に行くなら、俺が案内する。あそこに入るには専用のカードキーが必要だからな」
「カードキー?」
[ジン。カードキー持ってる。ボクが渡した]
「そうなのか?」
「ん?ああ。もしかしてこれか?」
俺はズボンのポケットからカードキーを取り出して見せた。
建物の入り口やこの部屋の扉を開けるために使ったやつだ。
しかしアルヴィスは眉を下げ、首を横に振った。
「それじゃ研究棟には入れない」
[入れないの?なんで?]
「PBも知ってるだろ。カードキーにはランクがある。研究棟に入るためには、少なくともランクA3が必要なんだ」
「ランク……」
アルヴィスによれば、俺の持つカードキーのランクはB5。
A3には届かず、研究棟には入れないらしい。
「これは……その、A3ってやつに書き換えたりできないのか?」
「残念だが、それは無理だ」
[研究棟。入れない。Bに会えない。悲しい]
カードキーのランクの見分け方は簡単だとアルヴィスは説明する。
カードに描かれた線の数で判別できるらしい。線が一本ならC、二本ならB、三本ならA、線なしならD。そして三本線に金色ならS。
なるほど、俺のカードは二本線。つまりBだ。
「めんどうな話だが、新しいカードキーを手に入れるしかないな」
[カードキー。どこにあるの?]
「地下の“カードキールーム”に」
「地下があるのか?」
「ああ。この部屋を出て左に行ったところに、地下へ降りるエレベーターがある」
[ジン。ジン。地下に行く。行く]
ピービーはまたぴょんぴょんと跳ねる。
「なら、次の目的地は地下かの?」
「……そうなるな。案内してくれるか?」
「そのつもりだ。……すぐに行くか?」
[行く。行く。地下。地下。カードキー。カードキー]
「わかった。ついてきてくれ。……あ、シオン。お前はここにいろ。俺が戻るまで部屋から出るな」
「わかってる。大人しくしてるよ」
[カードキー。カードキー]
ぴょん、と床に飛び降りて、ピービーは廊下へコロコロと転がっていく。
アルヴィスの案内で俺たちもそれを追い、地下へと続くエレベーターのある場所まで向かった。




