シオンという少女 ※ジン視点
「お前ら、何者だ。どこから入ってきた」
眉をひそめ、男は俺たちを鋭く睨みつける。
「おぬしは、ここの人間かの?」
「聞いてるのは俺だ。答えろ。お前らは何者だ」
「……俺たちは旅人だ」
「信じられるか。どうせお前らも、シオンを盗みに来たんだろう」
「は?」
シオン……?
「シオンとは……?」
「そこで寝ている子供のことだ」
ベッドに眠る子供。
この女の子がシオン……?
ケアテイカーと同じ名前だ。
「理由は知らねぇが、シオンを渡すわけにはいかない。お引き取り願おうか」
男は低く言い放ち、足元に魔法陣を描き出す。
青い光が床に広がる。
俺は懐から札を取り出し、手のひらに移して精神を集中させる。
刃の形を作り出し、男が術を完成させる前に踏み込んだ。
喉元へと鋭く突き付ける。
ーーだが。
「……っ!?」
「……動きが遅いな」
俺の刃と、男の銃口。
ほぼ同時に、互いの急所へ突き付けられていた。
「……お前、魔封術師か」
「っ……」
喉元の刃を見ながらも、男の目は冷静そのものだった。
斬り付けられるかもしれないというのに、微動だにしない。
俺は睨みを強め、札を持つ手に力を込める。
[アルヴィス! アルヴィス! 駄目! 駄目! 勘違い! 勘違い!]
そこで、ピービーが慌てて俺たちの間に飛び込み、必死に跳ね回った。
「! PB……?」
その姿を見た男は、わずかに目を見開く。
「PB……どうしてここに?お前は今……」
[攻撃駄目。攻撃駄目。ジンたち仲間。仲間]
「仲間?」
[銃駄目。攻撃駄目。反対。反対]
どうやら知り合いらしい。
ピービーの言葉を聞いた男は、拳銃を俺の額から下ろした。
敵意が消えたのを確認し、俺も刃を消す。
『なんだよ、やらねぇのか! つまらん!』
パーカーの裏から、あの声が嘲るように響いた。
[ジン。ジン。攻撃駄目。攻撃駄目。状況把握。状況把握]
「わかった、わかった。落ち着け」
だが、先に攻撃してきたのは向こうだ。
反撃するなってのは、なかなか難しい。
飛び跳ねるピービーをなだめ、札をパーカー裏のポケットに戻した。
「……アルヴィス。どうしたの?」
「! シオン!」
そのとき、ベッドの少女が目を覚ます。
ゆっくりと起き上がり、寝惚けた瞳でアルヴィスに声をかけた。
「すまない。起こしたか?」
「……ううん、平気。もう起きる時間だから」
少女は小さく首を振り、今度は俺たちの方を見やる。
「……アルヴィス。どうしてあの人たちがここにいるの?」
「? シオン、あいつらを知ってるのか?」
「うん。……あの人たち、夢でいつも見る人たちだよ」
「夢……?前に話してくれた?」
「うん」
少女とアルヴィスの会話を聞き、俺は眉をひそめる。
どうやら、俺たちのことを話しているらしい。
「……………」
腕を組み、二人の顔を見比べる。
兄妹にしては似ていない。親子とも違う……関係が読めない。
[にゃあ]
「ん?」
思考を遮るように、猫の声。
白い毛並みの猫が部屋に入り、俺を素通りして少女のもとへ駆け寄った。
首には赤いリボンが巻かれている。
[にゃあ]
「おはよう、シロ」
猫はベッドに飛び乗り、少女に撫でられて気持ちよさそうに目を細める。
少女は微笑みながら猫を撫で、そして再び俺を見た。
視線が交わる。
白い髪に、紅の瞳を持つ少女。
眠っていた時には気付かなかったが……その顔立ちは、どこかケアテイカーに似ていた。




