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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第6章「機械だらけの宴」
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機械の国へ





[ここ、ここ。機械の国。マリーナリー。マシーナリー]


 始まりの国を脱出した僕たちは、KBさんの案内で機械の国――“マシーナリー”へとやって来た。

 線の上から地上へ降り、ぐるりと辺りを見渡すと、そこには見たことのないものばかりが広がっていて、思わず息を呑む。


「わぁ……!」

「なんかすごい場所だな。ピービーみたいなのが、やたら多い」

[みんな、Bに造られた。造られた。だからみんな、ボクの兄弟。家族]

「……? ピービー、あの空を飛んでるのもそうなの?」

[うん。あれは飛行機。空を移動する乗り物。乗り物]

「飛行機!!」


 説明を聞いて、僕の目が輝く。

 飛行機には中にたくさんの人が乗っていて、それは長距離を移動する時に使う乗り物らしい。


「いいなぁ、乗ってみたい!」

「はいはい。また今度な。それにしても……ほんと見たことないものばっかだな。これとか、中に何が入ってんだ?」


 近くのコンテナのようなものに触れ、軽く叩いてみると、ガンガンと金属音が響いた。


[シオン。貴方にこれを]

「? ……何、これ?」

[Bのところに行くのに必要なカードキーです]

「カードキー?」


 KBさんに渡されたのは、二本の線が描かれた硬い板。つるつるしていて、とても軽い。


[これから、私と彼はBの元へ向かいます。あなたたちは、私たちが戻るまで自由にしていてください]

「え? ジンたちは付いてこないの?」

「俺たちが付いて行っちゃいけねぇ場所なのか?」

[そういうわけではありません。ただ……念のためです]


 そう言うと、僕はKBさんに連れられて、ジンたちと離れた。

 残されたジンは、小さく息を吐き、改めて周囲を見渡す。


「こんな所で放置ってなぁ……」

[ジン。ジン。KBたち戻るまで自由行動。自由行動]

「……って言われてもな。どうしろってんだ」

「レスター殿ー!」

「ん?」


 きょろきょろと辺りを見渡すジン。

 そのとき、背後から声を掛けられた。振り返ると、そこには見知った白い姿のお爺さんの姿があり、離れた場所から片手を振っている。

 ジンは思わず目を見開いた。


「は? じいさん!?」

[神様! 神様!]


 ピービーがぴょんぴょんと飛び跳ねながら叫ぶ。

 近付いてきた神様は、白い顎髭を撫でながら「ほほほ」と笑った。


「じいさん、どうしてここに?」

「ケアテイカー殿からの手紙にの、“機械の国に行く”と書いてあったから、わしも来てみたのじゃ」


 聞けば、神様は大の機械好きで、一度でいいからこの国を見てみたかったらしい。

 僕が送った手紙を読んだら居ても立ってもいられず、はるばる駆けつけてしまった、ということのようだ。


「いやぁ、想像していた通りじゃ! 見ているだけで大興奮じゃわい!」


 珍しい機械や、人型ロボットが行き交う光景に、僕以上に目を輝かせる神様。

 ジンは冷ややかな視線を送り、ピービーは「神様が喜んでくれて嬉しい」と飛び跳ね続けていた。


「して、ここにはレスター殿だけなのか? ケアテイカー殿は?」

「ああ、それが……」


 事情を説明すると、神様は納得したように頷き、それなら一緒に観光しようと提案してきた。


「かんこう……?」

「そうじゃ。暇を持て余しておるのじゃろう? ならばこの国を見て回って、有意義に過ごすのじゃ」

「いや……俺は別に観光とか――」

「さぁ行くぞ、レスター殿!行きたい場所リストを作っておいたからの。効率重視でゴーじゃ!」

「あー……だから俺は、」

[ゴー! ゴー! 観光! 観光!]


 神様に強引に腕を引かれ、ジンはそのまま引っ張られる。

 足元で転がるピービーも楽しそうで、とても断れる空気ではなかった。


+



 神様の「行きたい場所リスト」に書かれていた場所は数え切れないほどあった。

 その全てに付き合わされ、休憩がてら立ち寄った広場で、ジンはベンチにぐったりと腰を下ろす。

 少し離れた場所では、神様とピービーが次の目的地を相談していて、ジンは深いため息をついた。


「レスター殿ー!そろそろ行くぞー!」

[ジン!ジン!行く!行く!]

「……………、」


 休憩が終わると、次に向かったのは巨大な建物の前だった。

 入口らしき扉の前で、ピービーがぴょんぴょんと飛び跳ねる。


[扉。カードキー。カードキー]


 ジンと神様は顔を見合わせる。ガラス製らしい扉の奥は、まばゆいほどに明るい。


「カードキーって……さっきのか?」

[ここ。ここにカードキーかざして。そしたら扉、開く。開く。僕も持ってる]

「お前も持ってんのかよ」


 背中をぱかっと開けて、ピービーはカードキーを取り出し、ジンに渡した。

 言われた通り、黒い箱にかざすと、ピピピと音が鳴り、扉がゆっくりと開いていく。


「うひょ! 開いたぞ! どういう仕組みなんじゃ?」

[こっち、こっち]

「あ、ピービー! 待てって!」


 扉が開くや否や、ピービーは建物の中へ走り去ってしまった。


「レスター殿。レスター殿!」

「……なんだよ」

「今、わしは感動しておる。まさか生きているうちに、こうして機械の国へ来られるとはのぉ……」

「……楽しそうだな、ジジイ」


 ジンは吐き捨てるように言った。


「はぁぁ……本当に来て良かったのぉ。もう大満足じゃ」

「そりゃ良かったな。……俺たちも行くぞ」


 感動で顔をほころばせるお爺さんの腕を引きながら、ジンはピービーのあとを追って建物の中へ入った。


 つるつるの床と壁が、奥へ奥へとまっすぐ伸びる廊下。

 しばらく歩くと、先を行っていたピービーが廊下の真ん中で止まっていて、その場でコロコロと転がっていた。


 近づいてみると、その先にはもう一枚の扉があった。


[開けて。開けて]


 扉の隣には、入り口と同じ黒い箱が壁に埋め込まれている。

 ジンがカードキーをかざすと、音を立てて扉が開いた。


 中は真っ暗。

 すると暗さに反応して、ピービーの体がふわりと淡く光った。


「ここは……?」

「部屋のようじゃな」

[ピー]


 ピービーはぴょんぴょん跳ねながら、中をきょろきょろと見回す。


[神様。神様。電気点けて。電気点けて]

「……電気?」

「そこにあるやつじゃないか?」


 お爺さんが背後の壁に目を向け、スイッチを押した。

 次の瞬間、部屋がぱっと明るくなる。


 部屋の隅にはクリーム色のテーブルと椅子。反対側にはベッドが置かれ、天井にはそれを隠すためのカーテンが吊られていた。


[ピー。ピー]

「……診察室みたいな部屋だな」


 ジンは辺りを見回しながらつぶやく。

 その横で、ピービーはテーブルの上に飛び乗り、楽しそうに転がっていた。


「ん? レスター殿、あそこを」

「……?」


 ゆらゆらと揺れるピービーから目を離し、神様が示す方を見やる。

 そこにはベッドがあり、シーツが小さく膨らんでいた。


「誰か寝ておるのかの?」

「……」


 恐る恐る近づくと、一人の女の子が眠っていた。

 穏やかな寝息を立て、気持ちよさそうに眠っている。顔立ちからして、まだ子供のようだ。


「この子は……」


 ジンがそっと手を伸ばした、その瞬間――。


 バンッ!


 乾いた音が部屋中に響き渡った。

 ジンの目の前を、何かが猛スピードで駆け抜ける。慌てて身を引いたジンの耳に、扉の方から鋭い声が飛び込んできた。


「そいつに触るな!」

「!」

[ジン。ジン]


 ピービーがテーブルから飛び降り、ジンの足元でぴょんぴょん跳ねる。

 扉の前には、銃を構えた男の姿があった。


 紺色の髪をした、長身の男――。

 眉をひそめ、鋭い視線でこちらを睨みつけていた。




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