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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第1章「11日間の試練」
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少年VS神様





「さぁ、ケアテイカー殿! 手加減は無しじゃ! どこからでも来てええぞ!」

「えー……」


 ジンと女の人…死神さんの戦いが終わって、次は僕と神様の番。まさか神様と戦うなんて思ってなかったから、ちょっとだけ混乱してる。


 ……ていうか、あの女の人って死神だったんだ。サラッと言ってのけられたせいで、危うく流すところだった。

 それにしても、なんでジンは死神さん縛っちゃったんだろう。おかげで僕の相手、神様になってしまったじゃないか。


「…………」


 神様の向こう、ブロック塀の近くで死神さんとジンが座って何か話してる。何を話してるかまでは聞こえないけど、死神さんを縛っていたジンの術はもう解かれてるみたいだ。


[おーい! 負けんなよー! お前の力、ジジイに見せてやれ!]


 魔法陣の外からクロが叫ぶ。

 ……クロ。神様を“ジジイ”呼ばわりはやめなさい。僕にしか聞こえてないからいいけど。


「……よしっ」


 僕の力は神様に通じるのか――分からないけど、やるしかない。

 右手を前に出し、風を集める。糸のように絡みつく風はだんだん強くなっていき、頃合いを見て神様めがけて放った。

 物凄いスピードで飛んでいく風。けれどそれは神様に当たる寸前でふっと消える。


[え!? なんで当たらねぇんだよ!?]

「ほほ、いい風じゃな。顎髭を整えるにはちょうどよい」

「……っ」


 効かない……?

 じゃあ、次は――風に炎を足す。

 風が炎の渦に変わり、神様を包み込む。直後、死神さんの声が聞こえた。


「神!」


 炎は激しく燃えているのに、中からは声も焦げる音も聞こえない。どうやらこれも神様には効いてないみたい。

 ならばともっと強力な魔法で!

 そう思って風を集めた次の瞬間、背後で気配がした。

 振り返った時には僕はもう宙に浮いていて、そのまま地面に叩きつけられる。


 目の前に立つ神様は笑っていた。

 その顔を見て、思わず表情が引きつる。


「勝負あったな、ケアテイカー殿」

「……はい」


 魔法陣の光が消え、神様に手を引かれて立ち上がる。

 半透明のドーム結界が消え、クロが胸に飛び込んできた。


「神、怪我はないか?」

「大丈夫じゃ。この通り無傷じゃ」


 ……炎も風も全然効いてなかった。

 僕の全力だったのになぁ。


「お疲れさん」

[惜しかったな。もうちょいだったのに]


 クロを肩に乗せ、頭を撫でる。

 どの辺が“もうちょい”だったんだろう。


「ほほほ。二人とも実に強かったのぉ」


 神様が僕たちを見て笑う。

 そのあと出てきた言葉に、僕とジンは顔を見合わせた。


「これでわしの試練は終わりじゃ。おぬしらは合格じゃ」

「合格?」


 何それ。


「じゃが、合格といっても11日間の試練はまだ続く。残りはここで寝泊まりしながら、わしの手伝いをしてもらおうかのぉ」

「試練って……俺らに与えられたやつか?」

「そうじゃ。レスター殿の“神様と管理人に会う”試練と、ケアテイカー殿の“神様に会う”試練。どちらも達成じゃ」

「俺の試練も達成ってどういうことだ? 俺、管理人にはまだ……」

「ケアテイカーなら隣にいるぞ」

「は?」


 女の人の言葉にジンが僕を見る。

 そして理解した瞬間、目を見開いた。


「え!?お前がケアテイカー!?」

「あー……はい。どうも」


 クロが誇らしげに「にゃあ」と鳴く。

 いや、君はケアテイカーじゃないでしょ。


 こうして“11日間の試練”は一区切り。

 でもまだ日数は残っていて、国境は僕たちを通してくれないらしい。


 ……まぁ、出られないなら仕方ない。


[なんだよー。試練突破したらすぐ出られると思ったのに。しかも残りはジジイの手伝いって……]

「まぁまぁ、のんびりのんびり」

[ぬー……]


 項垂れるクロを宥めながら、僕は神様たちの後ろをついて家へ向かった。


「そういえば、神様」

「なんじゃ?」

「さっき持ってきた白い箱、あれなんです?」

「ああ、あれはただの空箱じゃ」

「……え」





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