少年VS神様
「さぁ、ケアテイカー殿! 手加減は無しじゃ! どこからでも来てええぞ!」
「えー……」
ジンと女の人…死神さんの戦いが終わって、次は僕と神様の番。まさか神様と戦うなんて思ってなかったから、ちょっとだけ混乱してる。
……ていうか、あの女の人って死神だったんだ。サラッと言ってのけられたせいで、危うく流すところだった。
それにしても、なんでジンは死神さん縛っちゃったんだろう。おかげで僕の相手、神様になってしまったじゃないか。
「…………」
神様の向こう、ブロック塀の近くで死神さんとジンが座って何か話してる。何を話してるかまでは聞こえないけど、死神さんを縛っていたジンの術はもう解かれてるみたいだ。
[おーい! 負けんなよー! お前の力、ジジイに見せてやれ!]
魔法陣の外からクロが叫ぶ。
……クロ。神様を“ジジイ”呼ばわりはやめなさい。僕にしか聞こえてないからいいけど。
「……よしっ」
僕の力は神様に通じるのか――分からないけど、やるしかない。
右手を前に出し、風を集める。糸のように絡みつく風はだんだん強くなっていき、頃合いを見て神様めがけて放った。
物凄いスピードで飛んでいく風。けれどそれは神様に当たる寸前でふっと消える。
[え!? なんで当たらねぇんだよ!?]
「ほほ、いい風じゃな。顎髭を整えるにはちょうどよい」
「……っ」
効かない……?
じゃあ、次は――風に炎を足す。
風が炎の渦に変わり、神様を包み込む。直後、死神さんの声が聞こえた。
「神!」
炎は激しく燃えているのに、中からは声も焦げる音も聞こえない。どうやらこれも神様には効いてないみたい。
ならばともっと強力な魔法で!
そう思って風を集めた次の瞬間、背後で気配がした。
振り返った時には僕はもう宙に浮いていて、そのまま地面に叩きつけられる。
目の前に立つ神様は笑っていた。
その顔を見て、思わず表情が引きつる。
「勝負あったな、ケアテイカー殿」
「……はい」
魔法陣の光が消え、神様に手を引かれて立ち上がる。
半透明のドーム結界が消え、クロが胸に飛び込んできた。
「神、怪我はないか?」
「大丈夫じゃ。この通り無傷じゃ」
……炎も風も全然効いてなかった。
僕の全力だったのになぁ。
「お疲れさん」
[惜しかったな。もうちょいだったのに]
クロを肩に乗せ、頭を撫でる。
どの辺が“もうちょい”だったんだろう。
「ほほほ。二人とも実に強かったのぉ」
神様が僕たちを見て笑う。
そのあと出てきた言葉に、僕とジンは顔を見合わせた。
「これでわしの試練は終わりじゃ。おぬしらは合格じゃ」
「合格?」
何それ。
「じゃが、合格といっても11日間の試練はまだ続く。残りはここで寝泊まりしながら、わしの手伝いをしてもらおうかのぉ」
「試練って……俺らに与えられたやつか?」
「そうじゃ。レスター殿の“神様と管理人に会う”試練と、ケアテイカー殿の“神様に会う”試練。どちらも達成じゃ」
「俺の試練も達成ってどういうことだ? 俺、管理人にはまだ……」
「ケアテイカーなら隣にいるぞ」
「は?」
女の人の言葉にジンが僕を見る。
そして理解した瞬間、目を見開いた。
「え!?お前がケアテイカー!?」
「あー……はい。どうも」
クロが誇らしげに「にゃあ」と鳴く。
いや、君はケアテイカーじゃないでしょ。
こうして“11日間の試練”は一区切り。
でもまだ日数は残っていて、国境は僕たちを通してくれないらしい。
……まぁ、出られないなら仕方ない。
[なんだよー。試練突破したらすぐ出られると思ったのに。しかも残りはジジイの手伝いって……]
「まぁまぁ、のんびりのんびり」
[ぬー……]
項垂れるクロを宥めながら、僕は神様たちの後ろをついて家へ向かった。
「そういえば、神様」
「なんじゃ?」
「さっき持ってきた白い箱、あれなんです?」
「ああ、あれはただの空箱じゃ」
「……え」




