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線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第4章「魔封術師の国」
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vs.人造人間(アンドロイド)





 KBさんは刀を大きく振り上げ、真っ直ぐ僕たちへ襲い掛かった。

 振り下ろされた刀を、クレイズさんが剣で受け止める。その金属音が合図となり、死神さんとジンが二手に分かれ、一斉に攻撃を仕掛けた。


 だが――KBさんはまるで動きを読んでいたかのように軽やかに回避し、刀を素早く大きくなぎ払う。

その一閃を紙一重で避け、ジンは札を掲げて炎の術を放った。


炎閃(えんせん)!」


 一直線に走る炎がKBさんを呑み込もうと迫る。

 すかさずサリカちゃんと僕は風の術を重ね、炎を巻き込んだ渦が敵を包む。

 さらにクレイズさんと死神さんが魔法弾と槍で追撃し、四方から一気に畳みかけた。


 しかし――その猛攻を受けながらも、KBさんは反撃を繰り出しつつ、やがて距離を取って鋭く僕たちを睨み付ける。


[……やはり、私一人では分が悪いですか]


 KBさん一人に対して、こちらは五人。数の上では圧倒的に有利。

 それを悟った彼女は静かに目を閉じ、しばし思案すると、やがて構えを解いて刀を鞘に収めた。


 深く息を吐き、肩の力を抜いたかに見えたその瞬間――。


[仕方ありません。……少々こちらもダメージを負ってしまいますが]


 腰を落とし、両足に力を込める。

 鞘と柄に手を添え、静かに目を開いたKBさんは低く呟いた。


[秘技――紅円舞(くれないえんぷ)


 次の瞬間。

 眩い閃光が迸り、視界が白に塗り潰された。


 何が起きたのか、まるで理解できない。

 気付けば僕たちの身体は傷だらけで、地面に倒れ伏していた。


 目の前に居たはずのKBさんは――いつの間にか僕たちの背後に立っていて。

 刀に付いた血を振り払いながら、冷ややかに背を向けていた。


 ……えっ。今の一瞬で、何が――?


「っ……な、何…だ、今のは?」

「何も見えなかった……っ」

「ごほっ……」


 ジンもクレイズさんも、目の前の現実を理解できずに息を荒げている。


 そんな中、KBさんが振り返り、僕に歩み寄ってきた。

 そして――倒れる僕の背に刀を突き付ける。


[……回路が少し焼けましたが、問題はありません。貴方に恨みはありませんが――お命、頂戴いたします]


 刃が背に迫り、彼女の手に力が込められた、その時。


[KB! KB! 待って! 待って!]


 ピービーが転がるように飛び出してきて、必死に僕とKBさんの間に割り込む。


[PB。そこを退いてください。トドメを刺さなければ]

[駄目! ケアテイカー、ジン、殺しちゃ駄目! 駄目!]


 KBさんは困惑したように視線を逸らし、僕とジンを交互に凝視した。

 やがて、その瞳が驚愕に見開かれる。


「………!まさか、この子は。それに……」


 ――僕を見て、一体何を?

 薄れゆく意識の中、KBさんの表情だけが鮮明に焼き付く。


「そこまでだ、KB」


 鋭い声が場を断ち切った。

 顔を向ける力は残っていなかったけれど――聞き覚えのある声。


「何をやっている。そんな命令は出していないはずだ」


 KBさんの名を呼んだのは、アルベールさんだった。


[……? これはマスターの命令です。“邪魔をしてくる者は排除せよ”と、そう仰ったではありませんか]

「そうは言ったが……人の話は最後まで聞け」


 アルベールさんはKBさんに近づきながら、倒れている僕たちを一人ひとり見やり、深く息を吐いた。

 視線を動かすと、その手には暁の水晶球が握られているのが見えた。


「……お父さん……」

「っ……」


 ジンとサリカちゃんが痛みに顔を歪めながらも、ゆっくりと身体を起こす。

 彼女たちの全身に刻まれた傷が、アルベールさんの瞳にどのように映っているのかは分からない。


「……戻るぞ、KB。長居は無用だ」

[了解。マスター、アルベール]


 命令を受け、KBさんは刀を鞘に収める。

 アルベールさんは手にしていた暁の水晶球をジンへと投げ渡し、そのまま踵を返した。


「……親父っ!」

「……それは、KBが迷惑をかけた詫びだ。好きに使え」


 背を向け、ゆっくりと遠ざかっていくアルベールさん。

 その後を追おうとしたKBさんだったが、ふと足を止めて僕とジンの方へ振り返った。


[………………]


 しばし無言で僕たちを見つめ、やがて彼女は静かに口を開いた。


[……大きくなりましたね、シオン]

「え……?」


 僕の名前を呼ぶ。

 その表情は穏やかで、これまで僕たちに向けてきた冷ややかな顔とはまるで別人のようだった。


[……そして、ジン・レスター。セレーナ・ウールスの息子]

「!」


 続いて口にされた名前に、ジンは息を呑んだ。

 “セレーナ”という名を聞き、彼の瞳が大きく見開かれる。


「な、何で……その名前を……!」

[ここまで成長しているとは思いませんでした。予想外ですが……それもまた、マスターのおかげでしょうね]

「何で……お前が……母さんの名を知ってるんだ……!」


 ジンは荒い息を吐きながら、KBさんを鋭く睨みつける。


[何故、私が彼女を知っているのか……知りたいのですか?]

「……っ」

[ならば、彼女の故郷――“始まりの国”へ向かうといいでしょう]

「始まりの……国……?」

[そこで、貴方の秘密と、この世界の秘密を知るのです。……これから貴方が背負う使命のために]

「……何を……」


 ジンが問い詰めるより早く、ピービーが彼を守るように立ち塞がる。

 その姿を見て、KBさんは小さく微笑み、優しい声で告げた。


[……もう、話すことはありません。安心して]


 そう言い残し、彼女はアルベールさんと共に闇の中へと去っていった。


「っ……何なんだ、一体……」


 舌打ちをして、ジンは悔しげに眉をひそめる。

 そこで僕の意識は途切れ、以降の出来事は分からなかった。



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