表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
線の上の冒険者ーSの日記ー  作者: aki.
第3章「双神の巫女」
39/106

双神の巫女・その後





 その後。

 それからの僕たち。


 あれから三日が経った。僕たちはクレイズさんを含め、森を離れて街に滞在し、今後のことについて何度も話し合った。

 巫女様の呪いは倒した。倒した……と言っていいのかは、正直まだ自信がない。今回は、素直に喜べる結末じゃなかった。


 巫女様とアレスさん、そしてシャーリーさんの亡骸は、その場で火葬された。

 炎が薪を食らい、パチパチと音を立てる。誰も一言も発さず、ただその音と、時折吹く風が衣服を揺らす気配だけが辺りを支配していた。



「頼む。俺も一緒に連れてってくれないか?」

「…いいんですか?」

「アレスもシャルも、呪いなんてものがあったから死んだ。……俺も、その犠牲で魔王なんていう宿命を背負うことになった。俺は呪いが憎い。だからお前らに付いていって、呪いを祓うのを手伝いたいんだ」

[クレイズ、ナカマ、ナカマ! ツイテクル、ツイテクル!]

「なんでお前が決めてんだよ」

「いいんじゃないか?協力者は多いに越したことはない」

「……それじゃあ、これからよろしくお願いします。クレイズさん」

「ありがとう。よろしく頼む。あと、こいつもな」


 街での三日間の話し合いの末、クレイズさんが僕たちと共に旅をすることになった。白いうさぎ――もふちゃんも一緒に。


 クレイズさんの服装は、最初に会った時とはすっかり変わっていた。黒を基調とした軽装に、前髪と後頭部には髪留めが二本ずつ。腰にはチェーンが巻き付けられていて……正直、ちょっとチャラい。


 そして今、僕たちは宿屋のロビーのテーブルを囲み、地図を広げて次の目的地を確認していた。

 地図の上では、ピービーがコロコロと転がっている。


[ツギハココ。ツギハココ]

「どれどれ…?」


 ピービーが淡い光を照射し、次の目的地を示す。光が当たった国は、ここから三つの国境を越えたさらに先――またも遠い場所だった。僕は無意識に小さくため息を漏らす。


 ふと、地図の反対側に座るジンの表情が目に入った。彼は光の当たる国をじっと見つめ、眉をひそめている。気になって声をかけた。


「ジン、どうしたの?」

「ん、…あ、ああ。なんでもねぇよ」


 気にするな、と彼は言った。

 ――そう言われると、逆に気になるんだけど。


[ココ、ジンノウマレコキョウ。ウマレコキョウ]

「なっ…!?」


 ピービーの言葉に、ジンは思わず手を伸ばし、ピービーを持ち上げた。

 その表情は、「なんで知ってるんだ」と問いただしたいという思いがありありと浮かんでいた。


 ジンの生まれ故郷…?


「ほぉ、おぬしの生まれ故郷か。少しだけ興味があるな」

「興味持たんでいい」


 腕を組み、興味津々の死神さんにそっけなく返すジン。僕は地図を折りたたみ、鞄にしまった。

 次の目的地はジンの生まれた国――しかし、彼の様子は明らかにどこかおかしい。僕の頭の中には“?”が浮かんだままだ。


 するとピービーが再び光を放ち、今度は地図の上に複雑な記号をいくつも浮かび上がらせた。


「……なにこれ?」

「? なんだ? 記号?」


 クレイズさんが首を傾げる。


[コレキゴウチガウ。カンジ。カンジ]

「かん、じ…?」

[ムカシノコトバ。ヒガシノクニニソンザイシテイタゲンゴ]

「何?」


 死神さんが眉をひそめる。

 昔の言葉――東の国に存在していた言語?


 僕と死神さん、クレイズさんは顔を見合わせた。ジンの方を見ると、彼は再びピービーを持ち上げて問いかける。


「おい、何でお前これ持ってんだ?」

「…ジン?」

[ピービーノデータベース。ナンデモアル。スベテノジンルイノデータアル。スベテノコトバシッテル。スベテノショモツ。アル]


 ……なんだって?

 それは、かなり興味深い。


「ジン、この記号、知ってるのか?」


 クレイズさんが問いかける。

 ジンは渋々といった様子で頷いた。


「……これは“漢字”って言って、俺の生まれた国――つまり、今から行く国に古くから伝わる文字だ。それと、今ピービーが浮かばせてるのは《魔封術の書》。俺の家に代々伝わってる本の内容だよ」


 そう言いながら、ジンは頭をがしがしと掻いた。

 浮かび上がる漢字を一瞥すると、懐から札を取り出す。


 そして――


 ためらいなくピービーを縛りつけた。


「ったく、余計なもん出してんじゃねぇぞ、機械野郎!」

[! キュウナシュウリョウ、キケン!キケン!]

「うるせぇ、黙れ!」


 札が貼られた瞬間、光に浮かんでいた漢字は霧のように消え失せた。

 突然の封印にピービーはバタバタと抗議の光を揺らし、ジンを睨む(ように見えた)。


 ジンは眉をひそめ、舌打ちをひとつ。深く息を吐く。


[ジン、オコリンボウ。オコリンボウ]

[……お前、もうちょっと人の気持ちってもんを考えろよ]


 肩の上からクロが呆れた声を落とす。

 僕はそのやり取りを見ながら、眉を下げてピービーを抱き上げた。温かい金属の感触が手に伝わる。


 ――なるほど。

 これから向かう国も、どうやら一筋縄ではいかないらしい。


 ジンの生まれ故郷だというし、到着したら色々と話を聞いてやろう。たとえ本人が渋い顔をしていても。


[ヒトノキモチ。ヒトノキモチ。……ジンモ、ピービーノキモチ、カンガエル。カンガエル]

「知るかよ。……しばらくそれ、解かねぇからな」


 ジンはそっぽを向きながら言い放ったが、その目にはどこか、わずかな迷いが浮かんでいた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ