7話:イケオジ上司
私は萬屋 聖子。24歳のO Lです。
社内No.2のイケメンに怪力がバレましたが、とりあえず適当に誤魔化しました。特に周りに言いふらす様子もないので私は相変わらず社内では可愛いで通ってます。ええ、まぁぶりっ子とか媚び売りだとかもついて回ってるけどな。
「え?うちから・・・ですか?」
テディベアみたいな見た目でお母さんポジションの熊田さん。仕事がめちゃくちゃできるので他の部署からも仕事を依頼される。正直便利に使われてる感じがめちゃくちゃするのですが、熊田さんの仕事の出来過ぎ加減が尋常じゃなくて、全部上手くこなしちゃうわけです。
つか、あまりにもうちの部署に仕事振りまくってていつか仕返しすっぞ!!
そんな熊田さんが部署の人間を貸し出しして欲しそうな電話を受けてます。山崎さんの部署なら私が行きますけど、それ以外だったらお断りです。あぁほら、他の女子社員も熊田さんの電話を盗み聞きして『他の部署に行くの?!男性の多い部署だったら私がっ!!』って言うのが全面に出てますよ。
とにかく私は今年の内にもっと山崎さんと仲良くなることを目標に生きてます。先日No.2のお陰?で本当に距離的には近付けた。しかし、心の距離は全然縮まってない・・・!!絶対に今年中・・・いや、今年の夏の間にプライベートで一回出かけるチャンスを掴みたい・・・!!
キーボード打ちながら、一瞬グッと拳を握り気合いをいれる。あっいっけね。拳握るなんて全然可愛くねぇし。あれだよ、両手を軽くグーにして、顔の横につけて『っんしょ!』ってヤツだな。こっちの方が可愛
「萬屋さん〜ゴメン、経理部いけるかしら?」
「はぇ?」
「総務の萬屋です」
「あっ!萬屋さん!待ってました!」
なんとなんと、先日鉄柱にぶつかりそうなところを助けて頂いて以来の美井さんが出迎えてくれましたよ。・・・そう、社内のイケメンNo.3が出迎えとなると・・・
(ジトーー・・・)
経理部の他の女性社員の目線も私に来るわけよ。何だよ、呼ばれたからきたのに敵視するんじゃねぇっつの。案内されてパーテーションの奥に行くとスーツのジャケットを脱いだ男性がソファで項垂れてます。どうした。体調不良なら総務じゃなくて病院行けって。
「部長、萬屋さんに来て頂きましたよ」
「え?部長?」
「んぁあ?あぁ。悪いな。わざわざ来てもらってな」
渋い声の色気ダダ漏れのイケオジがいた。
・・・ーーー
「悪りぃな、困ってんだよ」
手のひらでデコを抑える人。人か?絵か?漫画か?なんだこの色気?!あっ!この人が部長会とかに平気で遅刻して会社の言うこともあんまり聞かない横暴のくせに経理の管理は完璧で会社の支出の判断も完璧と噂される経理部長か!!
「随分上玉じゃねぇか。これなら先方も文句ねぇな・・・ただなぁ・・・」
そんな人が文字通り頭抱えてる。どした?てかさっきから話しが一切見えないんだが?
「あのね、萬屋さん。今度うちの経理がね・・・会食で接待するんだよ」
「経理がですか?」
「システムでお世話になってる会社をね。で、うちの部長こんな感じだから、システム契約してる先方の女性にとんでもなく気に入られちゃってねぇ・・・」
私は山崎さんしか眼中にないし、歳が離れてるだろうからただの色気ダダ漏れ機としか見えないけど、そうだなぁ・・・・妙齢女性からしたら喉から手が出ちゃっててもおかしくねぇわ。会食でいいから会いたい!的なやつか。
「え?で、なんで私がここに呼ばれたんですか?その女性に渡すプレゼントとか手土産を選べって事ですか?」
「違う違う!先方が凄く部長の事気に入ってるってのには続きがあってね・・・交際を迫られてるんだよ」
「えぇっ?!経理部長ご結婚されてないんですか?!」
「悪かったなぁ?!仕事してたらこんな年になっちまったんだよ?!」
「うちの使ってるシステムって、だいぶ向こうに融通利かせてもらって独自のプログラムとか組んでもらってるから、あまり無碍にできないんだよ・・・そのプログラムのお陰で作業効率が上がってたりとかするからさ・・・」
「そうなんですか・・・その女性が好みじゃないんですね」
「全くな。正反対だ。仕事はそれなりにやってくれるからいいけどよ。つったって、先方の窓口なだけで正直その女性はエンジニアじゃねぇから別に」
「部長!ゴニョゴニョと難しい話は萬屋さんにはいいんです!ちゃんと依頼してくださいよ!!」
そうだよ、その会食と私全くもって関係ねぇけど?
「すまない・・・俺と、結婚前提で付き合ってるって事で会食ついてきてくれねぇか」
「へ?・・・ばっ・・えええーーー?!?!」
馬鹿かお前?!って咄嗟に出かかったけど抑え込んだ私を誰か盛大に褒めて欲しい。
・・・ーーー
「まぁじっ!!2人が経理部から出てくるから何かと思ったら!!超ウケるんですけど!!」
こっちは全然ウケねぇよ。なんでお前そんなドンピシャなタイミングで来るんだよ。
「南波!笑わないの!萬屋さんに悪い話なんだから!!」
「これ笑わない人生とかマジ無理だし・・・くははは!!」
まさかの経理部を出たところでNo.2と出くわした。なんでも提出期限は切れてるが領収書が見つかったとか。コイツマジで仕事舐めてんな。歩きながら総務部へ戻る。
「なんで経理部の女性には頼まなかったの?それなりに綺麗な人とかいるんでしょ?」
「経理から選出すると、今後のやりとりに支障が出ると困るって部長がね。ほら、なんか気まずいじゃん。でも他の部署なら業務連絡も特にないからさ」
「でもなんで聖子ちゃんになったの?」
あ。それ知りたい。
「会社で一番可愛くて綺麗な子なら、先方も諦めてくれるんじゃないかって」
「部長が?」
「いや、俺が」
ん?
「美井がそう部長に言ったの?」
「うん」
ん?
「へぇーーー・・・やっぱり美井が」
「うん。萬屋さん出されたら、大体の人は諦めてくれるよ」
「聖子ちゃん、美井が聖子ちゃんの事好きだって」
「美井さんはそうは言ってー・・!!」
「え?そうなの?」
「おう!拓也!」
「や、お疲れ!」
「山崎さんっ?!」
またしても変なタイミングで 山 崎 さ ん が 現 れ た ! !




