5話:No.3
どうも、社内No.2イケメンに怪力がバレそう・・・いや、多分もうバレてるであろう萬屋 聖子です。
上司に頼まれたバカにみたいに重い三冊のファイルをいっぺんにまとめて持って行ったのがいけなかった様です。分けて持って行けばその分山崎さんを何度も見れたのに作戦が甘かったです。今度から効率重視じゃなくて可愛さ重視をもっと意識しなければ。ちくしょうマジでやっちまった。
そして、わざわざ持って行ってやったのに帰り際にボソッと『怪力』といったNo.2を待ち伏せてます。これは誤魔化すか口封じをしないといけません、今後の私の為にです。それ以外に何があるってんだよ。
18時。退勤の時間である。おそらくNo.2は残業しないタイプだ。No.2は茶髪で襟足が少々長く見た目は完全なるチャラ男である。軽い以外当てはまる言葉がなさそうだ。絶対さっさと仕事終わってなくても切り上げて飲み会に繰り出すタイプだろう。あれ、昨日も飲み会だったのに今日も行くのか?どうでもいい、とにかく捕まえて誤魔化さないと、さて、どのようにして誤魔化そ
「ぶつかりますよ?」
「えっ?」
パシっと鞄を持っている手を掴まれた。誰だっ?!?!
手の主を見ると、可愛らしいイケメンがいた。
「大丈夫ですか?」
悶々と考えながら歩いていたら目の前は鉄の柱。設計上致し方ないんだろうがなんでこんなどでかい通路のど真ん中にどでかい柱があるんだよちょっと設計士連れてこいや!!じゃない、この人・・・社内イケメンのNo.3だっ!!
「あっ!すみません!考え事してて・・・!ありがとうございます!」
「あぁ、君は確か、萬屋さんだったね。同じ経理の男性社員からとても人気があってよく名前を聞くよ」
可愛さ全開の顔の造りだが、照れるわけでもなく漢気満載でサラッと私を褒めた。コイツッ!!そういうタイプか!!息をするように褒めて上げて上げて女を落として歩くタイプだなぁっ?!私の一番は山崎さんだがコイツやばい危ない男だ。可愛い顔してマジで危ねぇ漢に違い
「でたー!またあのぶりっ子ああやって媚び売ってるよー本当見境なくてやだねー」
「私今見たの山崎さんに言っちゃおうかなー」
「美井君にはキレイ系がお似合いだと思うんだけどなー」
オイこらまた聞こえてきたぞ、もう最早顔も覚えてもねぇ他の部署であろう女だ。てか私ってそんなにぶりっ子で有名?ちょっ待て!!そういえば可愛く振る舞ってはいるが別にぶりっ子はしてねぇぞっ?!ちゃんと仕事してるし態度だってなんか大人の女性を意識した喋り方だぞ?!
イラッとしたが此処は我慢して姿が見えなくなるまで耐えた。いや、違う、完全に一人になるまでは我慢しないと。No.2に続き目の前のNo.3にも素性がバレたら面倒が単純に二倍になる。ここは堪えないと・・・!
「ああやって人の事知りもしないのに悪く言う人たちは嫌いだな」
「あ?え!?」
可愛い顔してはっきりと物を言いましたこの人。
「・・・顔に似合わずはっきり言うなって思ったでしょ?」
ヤベェバレてんぞ。
「大丈夫、慣れてるから。そう思われるの」
気にしてんのか?
「そんなに気にしてないよ、ほら、慣れてるから」
そうか、ん?私声に出してなくね?
「声には出てなくても顔に出てるよ。なんて言いたいか」
「はぁああぁあ?!あっ!!いや、すみません、ちょっと今のは驚きすぎちゃって・・・!」
コイツ・・!やばい!私の思考がバレてる?!
「っ!意外としっかりと驚くんだね。っクク・・!!思考が全部わかるわけじゃないから、超能力じゃないからそこまではわからない。でも、ほらよくあるじゃん、なんとなく今こんなこと考えてるんだろうなって。それが僕は結構過敏みたいでさ。あぁ、ごめんね、今更だけど、『社内イケメンNo.3』で人には覚えられてます。美井 和久です。改めましてよろしく」
おい待て、情報過多で処理機能が渋滞してるぞ。社内No.3イケメンを自己紹介で使った。コイツ、自分の面が良いのちゃんと自覚して尚軽く冗談まじりで使ってくるという高等テクニックを繰り出した。
可愛い系の顔で、長身で、思ったことを言って、察しが良くて、人の事を知りもしないで悪く言う人を嫌うってこんな要素持ち合わせてて本当にNo.3か?No.2で良かったんじゃないか?むしろ南波さんがNo.2な事に疑問しか湧かないが???
「・・・萬屋聖子です。美井さんって本名だったんですね。私、お名前知らなくて、イケメンNo.3の『三位』の文字をみんなが可愛く『三位 くん』って呼んでるのかと思ってました」
「あはははははっ!!萬屋さんってすごく面白いね!確かに!名前知らなかったらそう思うかもね!!っクク!」
笑いすぎじゃね?自分でも言ってからちょっとオヤジギャグみたいじゃんって恥ずかしかったのに拍車掛けられてる気分なんだが?
「あ、ごめんごめん、面白くてつい・・!で、萬屋さんは鉄柱にぶつかりそうになるほど何を考えてたの?」
「ッハ!そうです!ちょっと、今日人に誤解を与えてしまったようなのでそれをどう解こうかと考えてしまして・・・」
「へぇ、その誤解を与えたって言うのが・・・後ろの南波の事?」
「はい?」
後ろを振り向くと、私がぶつかりそうだった柱の奥から本日の目標であるNo.2が現れた!!!




