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キラふわO Lの萬屋さんは心の口が悪い  作者: 杉崎 朱


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4/10

4話:No.2


 え?二日酔い?なんですかそれ?辛そう・・・?大丈夫ですか?


 とばかりに昨日焼酎を結局ジョッキで13杯飲んだ私は今日もケロッとした可愛い顔で出勤しております。居酒屋で長居は無用。飲みたいだけ飲んで、しゃべりたいだけしゃべる。そしてすぐに帰ってお水摂取、シャワー、洗顔、スキンケア、睡眠である。

 そして見よ!!この私の美しい肌!!昨日と変わらない元気さ!!愚痴を吐いた為にウキウキで仕事の効率もなんか良い!!



「あちゃ〜みんな今日使い物にならないわねぇ〜。なんか萬屋さんだけ元気で仕事してもらっちゃってごめんなさいね?当分飲み会禁止だわぁ〜!大体誰が言い出したんだっけ今回の飲み会?」

 熊田さんが私に詫びを入れた。それもそうだ。昨日の会社の飲み会に行ったメンツは揃いも揃ってみんなひっっっどい顔してる。ブスが余計ブスになってる。いや、誹謗中傷とかじゃないから、顔なんて個人の好みだから。嫌いがなきゃ好きの概念も生まれないのよ。私の好きを存在させてくれてる目の前の酷い顔の、昨日私に酷いこと言った、酷い女に一応感謝。私の中の嫌いを作ってくれてるから、山崎さんへの好きという感情が生まれているのよ。ソレには感謝、でも勘違いすんなよ、それだけだからな。ッケ!


「まぁ、それだけ楽しかったんじゃないですか?交流会大成功じゃないですか!」

 山崎さんいなかったらしいけどな!!草生えまくりだわ!!

「山崎さんの部署の女性陣はそもそも参加率低かったし、男性陣はなんかそんなに酔ってないらしいのよ。向こうの課長に”今日は仕事になりませんね〜”とか挨拶しに言ったら”うちはいつも通りですが?”とか言われちゃって」


「え?ソレって、こちらの女性陣だけが楽しかったってことですか?」

「なんか久々の飲み会で楽しくなってハメ外しちゃったんじゃないかしら?」


 ふはははははh!!!もし昨日の熊田さんの話が本当なら、他の部署の男性は私が参加しなかったことに意気消沈してお酒が進まず、この部署の女性は山崎さんはいないわ、男性陣は意気消沈してるわでヤケ酒したな!やっべぇ心の笑い止まんないんだけど!!



「と、言うことで今日も今日とて荷物のお使い頼んで申し訳ないんだけど・・」

「良いですよ!」

 今日も山崎さんへの御届け物をゲッ

「はい、今日は宛先違うんだけど、他の人がこんな状態だからよろしくね?」


 宛先がNo.2だった。




・・・ーーー



「お疲れ様でぇーす」

 気が進まないが、山崎さんへの御届け物かと思い勢い良く笑顔で引き受けてしまったから持って行かざるを得ない。No.2へとどっしりとしたファイルを持ってきました私、萬屋 聖子です。

 声をかけると毎度おなじみの光景だ。男性陣がバッと顔を上げた。今日もご馳走様でーす、視線の数だけ自己肯定感が上がって楽しくなれまーす。


「あれ、今日何か頼んでたかな?」

 山崎さんが、さも自分に用事があると思ってデスクから向かってきてくれました!!なにこれ!!私=山崎さんに用事っていうのが山崎さんの中にもその方程式が存在してるってこと?!まじ顔ニヤけちゃ・・・あっこのまま山崎さんに頼んじゃえば良いんじゃん?!だって別に重要書類じゃないんだから?!山崎さんと喋れてNo.2に会わないでミッションコンプリートとか超ラッキーなんだが?!


「あっ、お疲れ様です。あの、今日はNo.・・・あーっとえーっと、あ!南波(なんば)さん!南波(なんば) (つかさ)さん?宛なんです!」

「あぁ・・・南波宛か。珍しいね、萬屋さんが持ってくるなんて」

 そのお言葉はイコール『萬屋さんがくる時は俺宛』という方程式がやはり確定でよろしいでしょうかご馳走様っす!!


「あぁ!昨日の飲み会でみんな今日二日酔い酷いって言ってたもんねぇ」

 

 と言う声が目の前の山崎さんからではなく後ろから聞こえた。まさか。


「司。来たんだったら早く受け取ってあげて。多分凄く重そうだろうからこの資料」

「拓也は王子様だね〜!はーい、聖子(きよこ)ちゃんありがとう、受け取りまーす」

 No.2がしれっと私の事を下の名前で読んだ。こいつ、ファイルに隠してつま先をヒールで踏んづけてやろうか?そう思いながら頼まれたファイルを渡す。


「ウオォっ?!えっ?!」

 どさどさっ!とNo.2がファイルを落とした。


「あ、ごめんなさい。渡し方が悪かったですね」

「え?!いや、違うって!え?!まってコレ持ってきたの?!」

「?はい、そうですが?」

「司、良いから拾えって」

「いやいや!拓也!これヤバい重いって!!」



 ーーーえ?



 は?と言う顔をした山崎さん。そして、一つ試しにファイルを持とうとした。



 ーーーしまった!!このファイルもしかしてとんでもなく重い?!?!



 私は、小さい頃から家のいろんな事をしてきた。

 庭の樹木の伐採、買い物の荷物持ち、箱入りペットボトルの持ち運び、学校の体育はオール5。謎に体育の授業であった砲丸投げですら陸上部を凌ぐほどだ。最初に入社した会社でも、女性社員も男性社員も全然力仕事をしない。全部全部、全部引き受けてきた。


 そう、私が【ゴリラ】と呼ばれる原因の一つ・・・”怪力”


 私の”ちょっと重い”は成人男性の運動習慣がない人からしたら”すごく重い”のだ!!これはまずい!

 山崎さんが取る寸前で私が素早くファイルを取り返した!!


「ちょーーっとだけ!重いんですよね!私も頑張って持ってたんです!No.・・・南波さんも昨日の飲み会で力が入らないんじゃないですか?デスクどこですか?!置いておきますね!んーーよいしょっと!」

 一生懸命頑張って持ってて限界だけど、昨日の飲み会で力が入らないんじゃしょうがないよね?頑張っちゃう!風を装いNo.2のデスクまで持って行って放り投げた。


「ファイルの回収は熊田さんがくるみたいですので!じゃぁ、失礼致しました!今日も一日頑張りましょう」

 語尾にハートマークをつけて颯爽と帰ってきた。しかし、部署を後にするその瞬間、呆然とした顔でNo.2が信じられない一言を吐いた。



「・・・怪力・・・」



 今日、あいつ待ち伏せてどうにかしないとだな。

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