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2話:敵、あらわる



「お前!ゴリラだよ!」



 

 なんだとっーーーーー?!



 ーーーッハ!



 目が覚めた。今は朝だ。なんてことだ。子供の頃の夢を見てしまった。

 私の名前は《萬屋(よろずや) 聖子(きよこ)》。24歳でO Lやってます。

 起きて顔を洗い、身支度を整える。鏡を見て納得。今日も可愛い私。可愛い自分のために朝から可愛い朝食を作って食べます。トーストにスクランブルエッグにウィンナーにコーンスープ。うん、可愛い。特に好きじゃないけど美容と健康と見た目の可愛さの為にプチトマトも添えておく。可愛いだけでOK。






・・・ーーー



「萬屋さん、ごめんなさいね?ちょっと多くて重いかもしれないんだけど、コレ、山崎くんの所に後で持って行ってもらっても良いかしら?山崎くんは今会議で、私ももう他の会議に行かなくちゃ行けなくてねぇ。可愛い子に重いの頼むのも申し訳ないんだけど、ほら、最近万屋さんて山崎くんに何か持っていく事多いじゃない?関わりがない人に頼むより知ってる子の方が良いと思ってね!なんか二人ってご縁がありそうだし?!あらやだ!おばさんになるとベラベラと喋っちゃっていやぁね!これもセクハラの一種だとか言われちゃうのかしら〜!ごめんなさい〜!」



 ママ的なテディベア上司である《熊田(くまだ)》さん。

 むしろグッジョブ!!!聞いた?聞いた?『可愛い子』に『重いの頼むのも申し訳ない』に『二人ってご縁がありそう』3コンボだぞ?ちなみに頼まれた書類の束は余裕で軽いんだがっ!!

 おいおい辞めてくれよ、熊田さんの向かいの女がめっちゃ睨んでくるじゃんか?山崎さんの名前が出ればこの部署の女性社員は聞き耳を立てる。狙ってるハイエナ女が多い分こういう話題を聞いては皆んなは私に腹を立てる。



 しかし!!そんな事気にしてられますかっ!!


「大丈夫です!後で持っていきますね!お任せください!」

 きょるんっと可愛い効果音付きで熊田さんに返事をした。

「ありがとうね〜!助かるわ〜!私みたいな見た目も中身も”熊”が行っても山崎くん喜ばないだろうからね〜」

 私こそ3コンボをこんな大勢の前で頂きましてご馳走様でしたぁっ!!!

「そんな!!熊じゃなくて、”テディベア”ですよ!可愛いじゃないですか!私なんか・・・」



 【ゴリラ】



「あら?萬屋さんも何か動物に例えられたあだ名があったのかしら?」

「・・・っ!!いえ!!逆です!何も・・・なかったので・・!!じゃぁ、失礼しまぁすっ!」




 あっぶねーーー!!私なんて『ゴリラ』だったんですよー!なんて、熊田さんの人の良さに釣られて口を滑らすとこだった!コレ言ったらもう私に明日はないわ!危険!マジ命拾いっ!!






・・・ーーー



「お疲れ様です!山崎さんいらっしゃいますかぁ?」



 私が扉の前でそういえば、何人もの男性社員が一瞬にして顔を向ける。そして、私を見て癒しとばかりに息をこぼす人数名。自己肯定感アップのため息ご馳走様っす。そして山崎さんはまだ戻ってないのか、他の男性社員が対応しに私の元へ向かってくる。

 ・・・大体、こういう他部署からとか外部のお客様対応は女性社員が最初に行うって風習だけど、私の事が皆様お嫌いらしくて大多数は声で判別つくのか顔も上げやしねぇ。

 だから可愛げがねぇんだよ!!ちゃんとわかってっからな!!まぁ言ってしまえばここの女たちは過去の私だ!私も昔はこうやって可愛い女の子を見ては嫉妬に苛まれてもう感情が嵐のように・・・



 ドンッーーー!!!



 そんなことを考えていたら後ろからぶつかられた。やばい、不意打ち過ぎるっ!ぶつかってそのまま私の隣を歩く女性社員。いつもパンツスタイルでショートヘアで姉御肌を強引に押し売りしているお局予備軍の総長だ!!いくら軽めの荷物だからと言って、こっちは今日お気に入りのちょっと踵が高いミュールだぞ?!やッベぇ!バランスがぁ・・・!!




 ドサァッ!!!


 ・・・トン


 書類は束やファイルごと豪快に落ちたが、まとめられてただけあって散乱はしなかった。そして私はと言うと



「・・・っ!萬屋さん、大丈夫!?」

 前のめりに転びそうだった所をあの山崎さんが・・・、大事なことなのでもう一度、”あの山崎さんが”私を受け止めてくれました!!!今日はお祝いだゼェーーー!!!ちょ、待って、嬉しくて頭ショートしてる!!


「だっ!大丈夫です!でも、書類落としてすみません!!」

「いやいや、何謝ってるの。どう見たって書類は無事だし、それより萬屋さん勢い良くぶつかられて・・・大丈夫?あの人さっきの会議でちょっとみんなの前で言われちゃってね・・・機嫌悪いんだよ。ごめんね。俺から後でちょっとクレーム入れておくから」

「私あれくらい(昔高校生の時に絡んできためっちゃ巨体のヤンキーみたいなギャルのタックルに比べれば)全然大丈夫です!!今日はヒールがちょっと高かっただけで・・!」

「・・・大丈夫だなんて。ああ言うのに慣れちゃだめだよ?」


 ちょっと屈んで私の目の高さに合わせてくれて心配そうな少し眉を下げたご尊顔を繰り出してきた。やべぇわコレっ!ノックアウト!!この私がノックアウトだとぉ?!!!


「ほらほら拓也〜女の子に気を持たせる接し方しちゃダメだよ?」


 あん?誰か来た。山崎さんを下の名前で呼ぶ声に秒で正常に戻った私だが、相手は男の声だ。安心しろ、ライバルではない。そして声の主を見ると・・・

 社内イケメンNo.2と囃し立てられる男がいた。私のタイプではない。山崎さんが一番カッコよくて超好きなのは不動だが、それを一旦置くならNo.3の男性の方が断然良い。コイツァダメだ。いけすかない。


「あっ、ごめん、萬屋さん。近かったね・・・」

 山崎さんが照れながら距離を取った。オラ!!No.2なんてことしてくれてんじゃこのヤローー!!!そしてその後すぐに私の横を通りながら、私にしか聞こえないようにNo.2が言った。



「萬屋さんって可愛いけど・・・とんでもない裏がありそうだねぇ・・・」



 コイツ、敵認定。

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