15話:お前は良いよな?!
「キタって思わね?私の時代キタでしょコレ!!?」
「良かったじゃん、おめでとう」
「おいコラもっとおめでとうって感じを全面に出せーーー!!!」
「ほらほら、ここテラスだから。可愛いをちゃんと作って」
「いっけね」
華の24歳OL。今日も今日とてキラふわ女子を楽しむためにカフェテラスで女子会をしている私は萬屋 聖子。そう、この聖子・・・聖子・・・
「聖子って!きよこって名前がああ!!」
「いきなりどうしたよ?なんでよ?《きよこ》って清楚っぽい名前で良いじゃない?何が不満なのよ?」
「お前は良いよな?!苗字は壱悟で名前は凛子!リンコでもリンゴでもどっちでもいいし可愛いじゃねえかよ!」
「リンコだけどね。何?また会社でなんか言われたの?もう嫉妬なんて慣れないと可愛いはやってけないよ?」
「キヨコって名前はな?黒髪さらさらストレートで、儚げな女性なんだよ。あと、クールビューティー的な?私はキラふわなんだよ。どうしたってイメージ違うじゃねぇか。黒髪ストレートのクールビューティー以外が”キヨコ”だとただただダサいんだってよ。トイレで性格ブス達が楽しそうに喋ってたわ!!」
「キヨコめっちゃ良いじゃん!その方が得だって、私は『あぁ、名前もメルヘンなんですね』って言われるし鼻で笑われるわ」
「全部メルヘンうらやまなんすけど」
コイツ見た目だけでなく名前も可愛いから腹立つ。残りのパンケーキ一口で食ってやるわ。
そんな時、カフェテラスの目の前の通りをママチャリがヨタヨタと通った。お母さんとは大変な生き物だ。子供を前に抱っこして後ろにも子供乗せて前カゴにめっちゃ荷物入ってるんだけど。米?超重そう危な———
「ああっ!!」
「ママぁ!!」
「あぶねっ!!」
自転車が派手にグラついた!このままだと自転車の三人全員倒れる!ざけんなよ今日ヒールなんだぞ?!
「っぅくっ!!!!!」
自転車と道路の間に滑りこんで全重さを支えた奇跡のピンヒール女子、キヨコ。自分を称賛だわ。でも、全然キラふわじゃない。なんで!なんで!でも怪我するの見たくないし!
お母さんが片足で踏ん張り、私の押し返す力でようやっとバランスを立て直して自立した。
「ありがとうございます!本当にありがとうございます!大丈夫ですか?!」
「そんな!ちょっと支えただけですから大丈夫ですよ!多分支えた場所がたまたま良かったんでなんともないです!力も全然使ってないです!」
超がつくほど可愛い振る舞いで、非力さをアピール。
あれだよ?なんか支点力点作用点的なあれで、すごく軽かったんだよ?力とかないからね?
「綺麗なお姉さんありがとうーー!!」
「ありがとうございました!!」
よしっ!滑り込んだ時に一瞬膝がコンクリに着いたけどストッキングも穴空いてない!スカートのレースも汚れてない!ピンヒールも折れてない!!オールオッ
「・・・聖子ちゃん?」
No.2・・・!!!現るっ!!!!!
・・・ーーー
「へぇ〜!リンコちゃんで言うの!可愛い名前だねぇ〜!」
「はーい、そうなんです。親に感謝で〜す」
凜子はぶりっ子みたいな喋り方はしない。今は南波さんを割と軽くあしらった喋り方だ。なのに可愛い。だからムカつく羨ましいーーー!!ってか
「なんで南波さんまで一緒にカフェテラス堪能してるんですか」
「だってこんな可愛い女の子二人だけでカフェテラスにいたら危険でしょ?ほら、俺がいると虫除けになるじゃん?」
「南波さんが虫なんですってば」
「嘘でしょっ?!・・・それにしても、さっきの聖子ちゃん本当に凄かったねぇ〜!颯爽と現れてスマートな助け方、あれは中々男でも出来ないよ」
「あ」
「男でも・・・出来ない・・・?」
あれ?私今喧嘩売られてる?
「スマートさがね?多分みんな力任せに踏ん張って支えるんだろうけどさ。さっきの聖子ちゃんの身のこなしはなんかこう、バレリーナが踊るかのような感じでさぁ〜・・・で?実際どれくらい力使ったの?」
「褒めてるんですか?貶してるんですか?上げて下げてるんですか?」
「いやぁだってあの重さを支えるって多分難しいはずなのに、綺麗な姿勢でこなしちゃうからどうなってんのかなって思って?」
・・・喧嘩を売られている訳ではなさそうだ・・・。
「聖子は体幹が凄いんです。だからスタイルもいいし、非力ではないですよ」
凜子グッジョブ!!
「あぁ、ヨガ的な?それにしても凄かったよ本当。見惚れちゃったもんね」
本当はかなりの馬鹿力を放出したけどな!!そう見えてないなら結果オーライの万々歳だ。
「でぁ?聖子ちゃん今度拓也とデートするんでしょ?」
「げほっ!!かはっっ・・!!」
咽せた。突然何言ってんだコイツ・・・!!
「だって、後ろの会話聞こえちゃってさぁー俺って割と地獄耳的な?あ!大丈夫!美井は多分聞こえてないから!」
そういう問題じゃねぇんだってば。
「・・・誘われましたけど、出かけるだけです。デートではありません」
いや、デートだって私も思ってたけど、南波さんの手前ちょっとなんかそういうの言いたくない。え?わかるだろ?!なんか素直に言いたくないんだって!
「いやいや、二人で出かけるってもうデートのお誘いじゃんよ!!へぇーあの拓也が自分から誘うなんてねぇー!いつもいろんな女の子に誘われては全部断ってるのになぁー」
私は可愛く、でもとても冷静を装い紅茶を飲む。しかし視界の端では南波さんがこっちをチラチラ見ているのがちゃんと見えてんだからな!!ここでその言葉を鵜呑みにしてニヤニヤ喜んでる顔を晒すと思うなよ!!めっちゃ嬉しいけどな!!
「あ、ごめんなさい。お母さんから電話だ。今度お姉ちゃんが結婚式挙げるからその話かも。ちょっと待ってて」
そう言って凜子は鞄ごと持って席を離れた。テラス席だから、すぐに建物の横の人のいない通路に行ける。鞄置いてきゃいいのによ。あ、そうか南波さんがいるから危機感を持ったのか。
「拓也どこに連れてってくれるんだろうねー!決まったら教えてね?!」
「なんで南波さんに・・・それに『実は相談があって・・・』かもしれないですよ?」
「そんなこと微塵も考えてないくせにー!よく言うよー!もしそうだったらその場で『相談があって今度時間もらえる?』っていうに決まってんじゃん〜!」
めんどくせぇなコイツっ!!!そろそろこのテーブルから追い出してやろ
「萬屋さんっ!・・・え・・?司?」
どうしてここに山崎さんがっ!?




