14話:打ち上げ
私の名前は萬屋 聖子。華の24歳OLは、先日の経理部の接待お疲れ会と称して月曜日から飲み会に参加しております。
要は打ち上げです。
「まぁ、部長はあんなことがあったので強制欠席です!代わりに、元々この作戦を知っていた山崎と南波と一緒にお疲れ様会です!」
「熊田さんは遅れて参加です。どうにも帰り際に役員からちょっと頼まれごとが入ったみたいです」
さて、会社のイケメンTOP3と一緒に小洒落たお店で飲み会をしている私は同じ社の女に見られたら明日こそデスクの上の物を全て捨てられそうな気がしてます。
「じゃぁ、ここは俺が?お疲れ様でしたー!!カンパーイ!!」
なぜか南波さんが音頭を取った。でもまぁそういうために生まれてきた感じの人だよねこの人。
「いやぁー!萬屋さん!本当にありがとうございました!先方のあの男性社員からメール貰ったんだけど、先方の女性は部長が婚約したって信じ込んでるらしいって。だからもう大丈夫そう!それに、彼、頑張ってみるって言ってたよ。萬屋さんに宜しくお伝えくださいって。本当にありがとうございました!」
美井さんが深々と頭を下げた。いやいや、美井さんだって巻き込まれた側のようなものなのに。
「そんな、頭あげてください。私はあくまで話を合わせただけであって、大した苦労してませんから」
「あの量の情報覚えるのは大したもんだって!!でもやっぱり萬屋さんって凄いなぁって!聞いてた通りだ!」
んな?聞いてた通りとは?噂なら悪い噂しかないだろう?
「あぁ、あのね、熊田さんから聞いてたんだ。すごく仕事ができて、人のことも見てて、ちゃんと助けてくれて、それでいて綺麗で可愛い子がいるって。本当にその通り。しかもしっかり者ときた!」
「・・・〜〜〜っ!!」
熊田さん〜〜〜っ!!!
「俺も、熊田さんからそう聞いてた。だから、資料とかちょっと雑用みたいな仕事で悪いけど、熊田さんが推してくれた萬屋さんにお願いしてるんだ」
山崎さんもっ・・・!!
「・・・みんなそういう話どっから出てくるの?熊田さん発信でしか聞けない情報じゃん?俺、上層部の人と萬屋さんが付き合ってるとか、いつもいい顔してるとか、ぶりっ子の極みとか、第二子社の男性社員と三股かけてるとかしか聞いたことないよ?その類なら両手じゃ足りないくーーっツァア?!?!」
踵で踏んだ。山崎さんの前でなんてこと言うんだ貴様。
「人と話をするだけで、そうやって噂とか誰かの妄想があたかも事実かのように言われるんです。大したことじゃないのに尾鰭は付くし、全然消滅しないんですよ。もう慣れたからいいですけど」
「ね。・・・実際は全然そんなことないのにね。ただの妬みだよ」
そう言ったのは、南波さんだった。
「・・・本当にそう思ってるんですか?」
「うん、噂じゃ本当に酷い女だけど、本当はしっかり者だもんね。結構前に俺に届けてくれた資料、あれわかりやすいように並び替えてくれてたでしょ?保管は時系列でするのに、持ってくる時は違う並びだった。しかもその方がすごくわかりやすかった。あれ、頭の良いだけじゃなくて、それをやっておこうって思う優しさとかがないと出来ないよ」
「・・・どうも」
褒められると調子狂うなぁ。
「だから、いつも萬屋さんに頼んじゃうんだよね。俺すごく狡いことしてるって自覚あるんだけど、すごく助かるし嬉しいから・・・でもそれを全員分するとすごく負担だから、俺だけにしてもらってる。熊田さんとそういう約束したんだ、実は。こんなところでこんな話になっちゃってごめんね」
山崎さんからまさかのカミングアウトっ!!あれは!!山崎さんからの指名だったのかっ!!!えっ?!マジ?!リアクションどう取れば良い?!こういう時こそ駆け引きやいじらしさアピールの視線外しかっ?!
「あぁ〜〜!!拓也がそういうことするから聖子ちゃんが他の女子社員からいじめられるんだよ!!凄いよね!あの視線!!」
「・・・何それ?俺関係あるの?」
「自覚なし社内イケメンNo. 1が言うとクソ腹立つぅーーー!!!!!」
・・・ーーー
しばらく楽しく飲んで、会はお開きになった。
お店を出て四人で歩く。前に山崎さんと南波さんだ。
「今日は本当にありがとう。俺が萬屋さんを推薦したから、本当は個別でお礼をしたいんだけどとりあえずは辞めておくね。部長の件もあったから熊田さんが目を光らせてるし」
「目を光らせてる?」
「今日熊田さんが結局来れなくなったでしょ?で、俺に連絡きてたの。”同意がない場合は絶対に手を出さないでくださいし出させないでください”ってね?まぁ部長の件もあったからシビアになってるんだろうけど」
凄い、過保護だ。でも、”同意がない場合”って所に気遣いを感じる。私を尊重してくれている・・・。
「そうそう、言いたかったんだけど、この間、男の子に説教みたいに話す萬屋さん。
あの時、格好良かったなって思って!」
違う話題を入れてきた美井さん。でも、あぁ。またコレか・・・。
《格好良い》
私に使って欲しくないと思う言葉だ。私は可愛いが好きなのだ。
「・・・あれ、もしかして嬉しくなかった?格好良いって言葉」
「あ、はい。実は・・・。格好良いより、可愛いって言われる方が嬉しです正直に言いますと」
そう言ったら美井さんはびっくりした顔をした。そりゃそうだろ。こんなこと馬鹿正直にいう女あんまいないだろうからな。
「いやいや、萬屋さんは全体的に可愛いのは前提。それでいて格好良いって、もう無敵+無敵って感じなイメージだったんだけど・・・」
可愛いのが前提?あれ?格好良いって言葉=”イカつい”とか”強い”って意味だという思ってたんだが、コレだと・・・
「・・・それって可愛って意味で褒められてます?」
「可愛い以上に褒めてるよ?」
「じゃぁ!良いです!」
やった!!”イカつい”や”強い”の前に”可愛い”が鎮座できている!
つまり、可愛くて○○、可愛いのに○○。つまり可愛いが最初にくるって事は私の印象がまず可愛くてええっとあれ?!
「あぁ!!美井が本当に聖子ちゃん口説いてる!!」
「えっ・・・」
「口説いてないよ、そう言うの禁止って熊田さんから釘刺されてるから」
「熊田さん抜かりないねー!!」
二人で先を歩きながら話し始めた南波さんと美井さん。次は私と山崎さんが二人の後ろを歩く形になった。
「・・・萬屋さん」
「はいっ!!」
なんだ?!何言われるんだっ?!
「あの、今度一緒に出かけませんか?・・・嫌じゃなかったら・・・」
「えっ?!」
「あ、ごめん。嫌だったかな・・・?」
「あっ!違います!びっくりしちゃって!!なんかお出かけに誘われたと勘違いしちゃって・・!」
やばい!超恥ずかしい!!願望で幻聴かよっ!!酒飲みすぎてないはずなのに!!
「・・・いや、間違ってないよ。出かけませんかって・・・誘いました」
私の時代が到来した。




