12話:しんぷ
私は萬屋 聖子。華の24歳O Lは接待の後に先方の社員に説教じみたことを言ってしまい、現在弊社の経理部の麻田部長に後頭部を鷲掴みされております。
やばい!雷落とされるかも!もしかして頭突きの方?!熊田さんに報告されるかも!やばい!別に口調は悪くして無いけどちょっと本性のカケラが出たっていうか?!
「部長!流石に暴力は!!」
美井さんが間に入ってくれた。後頭部を掴んで近づいてくる麻田部長に対して、前から私の肩を押さえて離そうとする美井さん。やばい、頭突きパターンか?!
「あっ!美井ーー!!終わった?」
「お疲れ様!」
でぇぇええええ?!マジかこれっ?!
このタイミングでNo.2と山崎さんがやってきた!!何故?!嘘だろ?!誰か嘘って言え!!夢なら今すぐ覚めろっ?!悪夢っ!!誰か助けーー
ーーちゅっ
「は?」
「えぇっ?!」
「ああぁぁああ?!!?」
「・・・っ?!」
「お前っ!いい女だなぁー!!」
イケオジが私のデコにチューをかまして破顔した。誰だこの人。あの顰めっ面の疲れ顔の鮮度がちょっと上がった枯れオジどこいった?何この顔?っつか今私のデコにーーっ!!!
「部長っ!!なんてことするんですかーー!!セクハラですよっ?!?!」
「婚約者だ!!なんの問題もないだろう?!」
「もうその話は終わったんです!!もう不要なんです!!もうセクハラに該当するんです!!」
美井さんが麻田部長から私を引き離して袖でおでこを拭く。おい、なんだこの状況。てか逆に袖が汚れるって。
「あの麻田さんが・・・」
「・・・」
さすがのNo.2と山崎さんも驚いてる。山崎さんなんて絶句だよ絶句!!
「部長どうしたん・・・あぁああ!!まさか部長日本酒飲んだんじゃっ!!」
美井さんが私の顔を拭きながらも何か思い出したらしい。日本酒なら先方の社長に勧められて飲んでだけど。
「麻田部長、日本酒弱いんですか?」
「そう!日本酒だけなぜか本当に酔っ払っちゃうんだよ!!他のお酒は大丈夫だからいいんだけど・・・!でも部長、自分でも日本酒飲まないって決めてたのにどうして・・・?!」
なるほどな。そういうことか。麻田部長は日本酒飲むとこうなるのか。
「先方の大福社長がそこまでお酒に詳しく無いようで、品名で《焼酎》だと思って頼んだ《日本酒》を《焼酎》だと言って麻田部長に注いでました。でも飲んだのたったの一口ですよ?」
「一口もダメなんだよー!!萬屋さん、本当にゴメン!いや!ゴメンじゃ済まないんだけど・・・!!ん?大福社長??あぁ〜〜ギリギリ先方を見送るまでは緊張のお陰か平常心っぽいのを保ててたってことかぁ〜!!」
イケオジも可愛いところあるんだな・・・・いや待て待て!!少し驚いたが別にデコチューくらいで狼狽えない!普段なら!!でも今は!!
「あの麻田さんが・・・」
「・・・」
さっきと同じ状態。なんなら時間ループしてるのかってくらい変わってない。まずい!!山崎さんに見られたぁぁあああ!!え?でも私悪くなくね?そうだよ、私被害者(?)じゃん?!
「これもなんかの縁だ、いいじゃねぇか。もう俺もいい年だしいいキッカケを熊田から貰ったし、美井から萬屋をもらったし、このまま嘘も突き通せば誠になるっていうだろ?!」
「言ってること支離滅裂ですよ麻田部長。日本酒飲むと相当なポンコツになるんですね。誰にでもこうするんですか?まさか今までの接待で伊東さんにもこんな事したんじゃ・・・」
「それはない!俺、いつも部長と接待同席してるけど、日本酒絶対飲まないし飲ませないから!!そうかぁ〜・・・!あの社長は部長が日本酒飲まないこと知らなかったんだぁ〜!!てか日本酒を焼酎と間違えるとか・・・そのパターンがあったとは!!」
「あ?なんだ山崎と南波じゃねぇか?よし、お前らもこれから一緒に飲みに行くか、俺と萬屋の婚約披露接待を今してきたんだ。っうし、二次会やるぞー」
そう言って私の手を引いて店を探しに歩き始めた。
「麻田部長!!」
部長の手を掴んだのは
「今日はもうお開きにしましょう。今日の為にみんな色々と頑張ったって聞いてます・・・!打ち上げはまた来週にしましょう?!」
山崎さんだった。
「わーお」
「部長!山崎の言う通りです!みんな勤務時間外でも頑張ったんです!無給で!いや、部長のお金で美味しい思いはしましたけど!!今日は一旦お開きにしましょう!!」
「開くんだからこれからだろう?!」
通じないポンコツ!!
「じゃあ!萬屋さんはここまでで、俺が付き合いますから!!?」
山崎さんが。
「俺と萬屋が主役だろう?!新郎と新婦だぞっ?!」
「じゃあ俺が新婦役やります!!」
南波さんが出て行った。なんだよ新婦役って。
「俺も神父やりますから?!」
美井さんも何がなんでも麻田部長を止めたくて遂に訳のわからない説得をし始めた。なんだこのカオス。ヤバいじゃん。ちょっと面白いんだけど。
そう思っていたら山崎さんが麻田部長と私の手を離した。
『後はなんとかするから、今日はお疲れ様でした。また来週ね』
そう、私の耳元で囁いたっ・・・!!ヤバッ?!突然のご褒美キタッ?!
そのまま男性三人が麻田部長を連れて次のお店へと入って行った。
『ーーアトハナントカスルカラ、キョウハオツカレサマデシタ。マタライシュウネーー』
イケメンガ過ギルッ!!!




