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1話:ゴリラ




【私はキラふわ女子でいることに全力を注ぐ】



 キラキラふわふわが大好きな私《萬屋(よろずや) 聖子(きよこ)》は、本日も会社の上司のお局様にイビられております。


「あなたね?ここ会社なの?わかってる?そのキラキラのネイルって必要?」

「必要はないかもしれないですけど、違反じゃないですよね?」

 言い返す。だって、規約に書かれてないもん。てかみんなしてるって。


「そんな当たり前の事わざわざ言うまでもないでしょ?!」

「派手すぎないようにしたつもりなんですけど。ダメですか?」


「はい、そんなこと言っても無駄!ここは会社なの!社風も考えなさい!外部の人からあんたみたいな人がいるせいで会社がどう思われるかーーー」


 このお局さんは私に厳しい。ネイルしてる女性社員なんてほかにも沢山いるでしょ。でも、この会話をしているとそろそろお助けが・・・


「ほら、その辺にしなって。いいじゃない。若いうちはなんでも好きにやりたいものよ?」

 もう一人の女性の上司。会社のママ的存在の、テディベアみたいなまんまるくて可愛い人が間に入ってくれる!


「また!あんたがそうやって甘やかすからこんな格好で会社に来るんでしょ!」

「可愛くていいじゃないー、華やかで周りの男性社員だって嬉しいわよ!」

 今がチャンス!と逃げるようにその場から離れる。


「私、隣の部署に頼まれてた書類持っていきますねー」

「こら!語尾を伸ばすな!あと逃げるな!」

スタスタと書類を持って移動する。あーーーあ。





「(ーーーうるっせぇーーんだよ!)」






 顔はニコニコルンルンのままで、心の中で叫ぶ私。


 そう、この可愛らしい顔、ツヤツヤでふわふわなミルクティーブラウンのセミロングヘアー、派手すぎず地味じゃないネイル、夏で暑いのでシースルーのカーディガンに、涼しげな色合いのアイスブルーのワンピース・・・


 を着た、誰が見ても『あ、おしゃれに気を遣ってるな』と思ってもらえるような見た目でキラキラふわふわ可愛いものが大好きな私は




 口が悪い。




 本当はお姫様みたいになりたいから、口調も凄く気をつけてます。でも、自分の気持ち、心を偽って生きたくないので、心の中ではこうやって思ってまーす。


 さっき私をいびってた女性は、普段からああやって私を標的にしてストレスを発散してます。ん?もしかして私を見てストレスを溜めてるのか?

 知ったこっちゃねぇっつーんだよ。


 大体、この会社の入り口にはカラフルでポップな置物が多い。どっちが社風に合わないか鏡見てから来いっつーんだよ!カラフルな会社の入り口にこのアイスブルーのワンピースが合わない訳ないだろうが!

 お前の暗い色のスーツと真っ黒のインナーの方が会社のイメージに合わねぇっつーんだよ!



 どうせ本当は自分だって可愛い服着てきらきらのネイルだってしたいんだろ?したいのにできないからってやってる私に当たるんだろ?

 やかましいっつーんだよ!!



「お疲れ様ですぅ!総務の萬屋です!書類持ってきましたぁ!」

 ふわふわでキラキラで可愛い私がきましたよー。


「お疲れ様、萬屋さん。いつもありがとうございます」

いち早く私に気付いて書類を受け取りに来てくれたのは、この会社の超イケメンで有名な《山崎(やまざき) 拓也(たくや)》さん。通称イケメンNo.1。てか名前までイケてるとかなんなのイケメン過ぎて狙わないなんて事が不可能な人材。


「いえいえ、とんでもないです!こちらから庶務や総務に渡すものはありますか?もしあれば私が持っていきます」

「あ、今日は大丈夫かな?気遣いありがとうね」

 そう言って、信じられないほどの眩しい笑顔を頂いた。


 素敵ィっっ!!



「では、お疲れ様でしたー」

 可愛く手を振り、元来た部署へ帰る。あぁ、戻ったらあの人いるのか。めんどくせぇな。そう思いながら戻ったが、お局様はいなかった。ラッキー!


「彼女なら急な呼び出しで出ていったから大丈夫よー」

 ママ的上司が、入り口で中を伺っていた私に声を掛けてくれた。

「良かったー!安心しましたぁ!」

 これ以上文句言われちゃ溜まったもんじゃねえっての。うっかり言い返して、なおかつ口が悪いのバレたらどうしてくれるんだってば。




「うわぁーこれどうしよう・・・」

 男性社員が突然声を上げた。そういえばさっきから何かやってる。

「キャビネットのキャスターが取れちゃったし!」


 キャビネットとはあれだ。会社のデスク周りに置いてある、鍵がかけられたりもできる書類を入れておく引き出しだ。そのキャスター・・・つまりタイヤが取れてしまったという事。キャビネットは、沢山ものが入って重いと、キャスターが一つでも取れると割とバランスが取れない。


「うわーガタガタする。どうしよう」

「そのままもう一回キャスターを当てれば?」

「重くて・・・ちょっと無理だわ〜」

「おれ手伝おうか?・・・結構重いな」

「じゃあ空にしてひっくり返す?」


 ・・・こんの男どもが!!何をキャビネットのキャスターをつけるだけでチンタラしてんだよ!!


 そんなの、キャスターが外れた箇所を少し持ち上げて、下になんでもいいから硬くて潰れないものを挟む!そしてできた隙間にキャスターを入れ込む!それで上からの部品を嵌めて押さえて回す!

 それでOKだろうが!!


 しかし、それを私が行なってしまったら、

『キラキラふわふわで可愛い萬屋さん』でなくなってしまう。

 あと、男でも持ち上がらないキャビネットを持ってしまったら怪物扱いされる・・・!


 私は、イライラうずうずしながらも、キャビネットを直せない男性社員を見捨てて本日も定時なので帰宅した。


 もう、絶対に言われたくない!逞しくなんでもできて無敵だったけどキラキラふわふわとはかけ離れた・・・




『ゴリラ』だなんて・・・!!!





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