最終話 ニューヤクの決戦
翌朝、師団本部の廊下で、プライドを見かけた僕は、
「おはようございます。プライド司令」
「司令はやめてくれ、師団本部へ来れば、俺なんて、見習士官のようなもんだよ」
プライドは苦笑いながら、そう言って、言葉を続けた。
「お偉方には、戦闘アナリストのケリーのほうが重宝されているよ」
「それはそうと、今朝は駐機場に、かなりの数のバードバトラーが集まっていたのですが」
「ああ。前線基地を放棄した影響で、帝国軍の大部隊が直接、ニューヤクに侵攻しようとする動きを見せたようなんだが、師団本部は、ここに戦力を集中して迎え撃つ、作戦らしいのだよ」
「大規模な戦闘に、なりそうですね」
「そうだな、おそらくイーグルセイバーは最前線に投入されるだろうから、命を落とさないように気をつけてくれ」
そして早くも、その日の昼過ぎに、帝国軍のバードバトラーが百数十機の大部隊を編成して、ニューヤクの都へと、迫ってきた。
「よし、出撃の準備だ」
と、ランバード隊長が隊舎で第一飛行隊に命じる。
そこへ、なぜかジェニファーが現れて、
「なぜ、君がここに?」
驚く僕にジェニファーは、
「パパに頼んで入れてもらったのよ」
そう言うなり、抱きついてきた。
「な、なんだい、急に」
「お願い、死なないで」
そして、情熱的なキス。
周りで見ていた、第一飛行隊の隊員たちが、
ヒュウゥゥーッ。
と、口笛を吹いて冷やかす。
ランバード隊長は、隊員たちに向けて、
「色男は、放っておいて、俺たちは空で暴れようぜ!」
「イエッサーッ!」
隊員は一斉に駐機場に走り、バードバトラーに乗り込んだ。
「全機、出撃だ」
ランバード隊長の号令で、次々と滑走路から離陸する第一飛行隊。
グオオオォォォォーン。
僕も、イーグルセイバーに搭乗して、大空に飛び立つ。
連合軍のバードバトラーの主力機はフォークアローだが、ランバード隊長は古い機種のコンドルランスに搭乗していた。
そして、上空には、すでに帝国軍の大部隊が飛来している。
その先頭を飛ぶのは赤鳶。敵の主力機は鷹隼だが、一世代前の大鷹も混じっていた。さらに機動性能の高い小型機の飛燕の姿もある。
両軍の総力戦だ。
グオオオオオーン。
僕は赤鳶を狙って、正面からイーグルセイバーを突っ込ませた。
ブオッゴゴゴオォォーッ。
あの独特なエンジン音を響かせながら、赤鳶は急上昇して、イーグルセイバーから逃れる。
グオオオオオオオーン。
僕も機体を上昇させて、赤鳶を追ったのだが、機動力の高い小型機の飛燕二機に真後ろ(真下?)を取られた。
僕は瞬時に判断して、
ガシャーン。
イーグルセイバーを人型に変形させ、
ズバアーン!
サーベルで、一機の飛燕を真っ二つしたが、次の瞬間、赤鳶に背後を取られていた。
「ま、まずい!」
一瞬、反応が遅れた僕は、赤鳶の爪の攻撃で、
「げ、撃墜される」
と、思った直後に、
バゴォーン!
赤鳶の機体が爆発炎上した。
「な、なに?」
コンドルランスの機影が矢のように飛ぶ。赤鳶を撃墜したのはランバード隊長だ。
帝国軍の象徴ともいえる赤鳶を撃墜された敵の部隊は、急速に士気が低下したようで、その後、三十分の戦闘で、ニューヤクの上空から撤退していった。
戦闘の後、僕たちが滑走路に着陸すると、ニューヤクの都の市民が出迎え、勝利を祝福してくれる。
その群衆のなかにジェニファーの姿を見つける僕。彼女に駆け寄り、
「生きて、帰ってきたよ」
「嬉しいわ。ありがとう」
「実はね、次の任期満了で軍を除隊しようと思うんだ」
「それで、どうするの?」
「退職金を元手に、ニューヤクで雑貨屋を開こうと思うんだけど」
「あなたに出来るかしらね」
ジェニファーは笑いながら言ったが、元々はコンビニ店員から転生してきた僕だ。
きっと、バードバトラーのパイロットより向いている。