第3話 タイフーン突入
大型のタイフーンが近づいている危険な空で、僕は帝国軍のエースパイロット機・赤鳶と戦うことになった。
眼下には大河を下る輸送船。僕は、この船を守らなくてはならない。
赤鳶は二機の鷹隼型のバードバトラーを従えて、迫ってくる。
グウゥゥゥーン。
鷹隼の二機が左右に分かれて、中央の赤鳶は真っ直ぐに突っ込んできた。
僕は、まずは赤鳶との交戦を避け、イーグルセイバーを急上昇させる。
そして、右側の鷹隼を狙い、機体を急降下させた。
この世界には、なぜか銃やミサイルといった飛び道具はなく、バードバトラー同士の空中戦も、足の部分の爪を使っての格闘戦になる。
敵機の鷹隼に迫ったが、一撃目の攻撃を外す僕。これは、わざとだ。鷹隼は旋回して、イーグルセイバーの背後を取りに来た。
グウウゥーン。
鷹隼に、完全に背後を取られた。爪が襲って来る、瞬間。
「今だ!」
僕はイーグルセイバーを、
ガシャーン。
人型に変形させて、 振り向きざまに、サーベルで鷹隼を真っ二つにした。
バゴーン!
空中で爆発炎上する敵機、鷹隼。
この変形攻撃に赤鳶も驚いたのか、機体を急旋回させ、イーグルセイバーとの距離を取る。
ブオゴゴゴオォォーッ。
独特のエンジン音を響かせる赤鳶の後に、もう一機の鷹隼が続いた。
再度、僕はイーグルセイバーを鳥型に変形させて、機体の速度を上げ、その二機を追ったのだが、
急に空が暗くなった。強風が吹き荒れだし、大粒の雨が舞う。
ゴゴゴゴゴオォォーッ。
嵐に巻き込まれたのだ。
眼下の大河も増水し、濁流に流されるように航行する輸送船は、激しく揺れていた。
こうなってしまえば、もう着艦は無理だ。
敵の赤鳶と鷹隼も、必死に嵐から抜け出そうと、飛んでいるようだが、
風に煽られた鷹隼が、機体のコントロールを失い、墜落する。
もう、空中戦どころではない。僕は赤鳶を追うのをやめて、進路を大河の下流に向けた。
この世界には通信機器のような物はなく、機体に乗り込めば、何処とも連絡はとれない。
その孤独感が、より、僕を不安にさせる。
最新機種のイーグルセイバーといえども、嵐の中を強風を受けて飛べば、
ガタッ、ガタガタッ。
と、機体は激しく振動した。
機体のコントロールを失わないように、僕は集中してイーグルセイバーの飛行姿勢を制御するのだが、
ブオォォーッ。
強風の音が、僕の恐怖死を煽る。このまま墜落してしまえば、間違いなく僕は死ぬ。転生して、まだ二日目だ。
そういえば、本来の、このパイロットの魂は、どこへいったのだろう。
そんなことを考えていたら、
急に視界が明るくなった。目の前には青空が広がり、風も、嘘のように無風だ。
飛行する、イーグルセイバーの機体は安定している。
嵐を抜けたのだ。僕は生き残った。
眼下に視線を転じると、大河は、まだ濁流を流し、輸送船は木の葉のように揺れていたが、無事である事は確認できる。
この揺れでは、まだ着艦できないが、
僕は自分が無事である事を知らせるために、イーグルセイバーの高度を下げて、
輸送船の上空で旋回して見せた。
揺れる船の船室の窓から、手を振るケリーの姿が見える。