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第2話 イーグルセイバー飛ぶ

 師団本部から放棄された前線基地の司令官・プライドは、残存した輸送船を使い、河を下ってニューヤクの都に向かうと言い出したのだが、


 古参の整備兵・マックリは、敵に見つかれば木っ端微塵にされ、自殺行為だと反論する。


 そのマックリの反論に応えたのは、プライドではなく、戦闘アナリストのケリーだった。


「一つだけ、我々にとって、いい条件があるの。大型のタイフーンが近づいていて、その嵐に乗じて、河を下れば、敵も攻撃できないわ」


「嵐の河下りか。それも自殺行為だ」


 マックリは苦笑いしたが、僕たちは大急ぎで、輸送船に積める物は積み、河下りの準備をする。


 そして、空気が温かく湿り、風が強まってきた頃、前線基地の生き残りは輸送船に乗り込んで、大河を下る。


 不思議な気分だった。転生する前の僕は、コンビニの店員だった。それが、今では鳥型の戦闘航空機バードバトラーのパイロットだ。


 船内では、プライドが神経質な表情で、窓の外の空模様と水面を、交互に観ている。


「大丈夫なのか、ケリー」

「運に賭けるしかないわ」


 この二人の会話を聞いて、僕には、女性のケリーの方が肝が据わっているように思えた。


 そして、マックリは、


「大雨で増水すれば、濁流に流されて陸地に乗り上げちまうんじゃねえか」


 と、操舵手に言ったが、操舵手は、


「俺に任せておけば大丈夫だ。船の事ではな、俺には出来ないことはないさ」


 自信満々の操舵手だが、マックリは小声で聞こえないように、


「だったら、空母の艦長になっているだろう」


 などと、嫌味を言う。


 その様子を横目で見ながら、僕は甲板に出て、視線を空へ向けた。


 雲の流れが速い。この船は、もうすぐ嵐の中に突入するのだろう。さすがに、この状況なら、


「敵も攻撃してこないだろうな」


 と、思った瞬間。


「敵機、三機接近!」


 双眼鏡で上空を監視する、警戒員の声が響いた。


「二機は鷹隼ようしゅん型、あと一機は赤鳶あかとびです!」


 直後、ケリーが船室から飛び出し、僕のところに駆け寄ってきた。


「イーグルセイバーで、出撃よ」

「でも、今は嵐が来る直前だよ」


「気象条件は、敵機も、同じよ」

「簡単に言うけど、命懸けだよ」


「命懸けなのはね、皆、同じよ」

「了解。僕にも、解っているよ」


 覚悟を決めて、僕は、輸送船の後部に艦載されたバードバトラーに乗り込む。


 発進前にケリーは、


「嵐に巻き込まれる前に、着艦して」

「了解。僕は、無駄死にはしないよ」


 そう言った後、イーグルセイバーで飛び立つ、僕。


 敵機の赤鳶とは、帝国軍のエースパイロットの乗る機体だ。二機の鷹隼も手練れのパイロットだろう。


 嵐の直前の危険な気象条件である。敵は少数精鋭で、この輸送船を沈める気だ。


 雨混じりの風が強まってきた。その悪天候のなか、僕はイーグルセイバーで飛ぶ。


 グオオオォォォォーン。


 エンジンの状態は良好だ。


 転生前の僕は、飛行シュミレーションゲームで、悪天候モードも難なくこなしていたが、それは、たぶん役に立たないだろう。


 グオオオウゥゥゥゥーン。


 前方から敵の三機が迫ってきた。

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