時間旅行
消防車の鐘の音が響き渡る。木下こかげは色のない荒れた町を歩く。ふと,振り返るとそこのは大きな軍艦が出航しているところだった。女性や子供が軍艦に向かって日の丸の旗を振る。甲板ではそれにこたえるように兵隊が帽子を振る。その光景を木下はただ茫然と見ていた。
そこで木下ははっと目を覚ました。木下はビルとビルの間の細い道にいた。
『ここは,どこじゃろう』
木下は立ち上がると赤い袴についた砂を手で払う。それから髪型を整え光のさすほうへと歩き出した。あまりの日の明るさに目を細める。だんだんと視界がはっきりとし始める。そこに広がっていた光景に木下は目を疑った。
立ち並ぶ大きなビル
猛スピードで走る車
洋服をきた人びと
非現実的な光景に頭が真っ白になった。そのあと空っぽになった頭の中をだんだんと不安の感情が満たしていく。
「あの,一つ聞いてもよろしいでしょうか。ここはどこじゃ,私はなんでこんな場所におるんじゃろうか」
木下は一心不乱に歩いていた会社員の人に聞く。だが戸惑った様子で「知らないよ」と言われ相手にされない。
その後も主婦や女子学生などに聞くが
「すいません、わかりません」
「私は知らんばい」
と逃げられてしまった。
『これからどうしようかな』
大通りの真ん中に立って空をぼーと眺める。
どうすれば家にもどれるのか。
どこで暮らそう。
食べ物はどうしよう。
ぐぅ~
お腹がなった。
『そういえば何も食べてないな』
とぼとぼとコンクリートの道を歩く。横を洋服を着た人が通り過ぎる。
目的地ないまま歩いているとどこからか美味しそうな匂いがしてきた。
『何じゃこの匂いは』
匂いを頼りに歩いていく。そして、ガラス張りの角のお店にたどり着いた。どうやらここから匂いがしているらしい。
『ここは「れすとらん」ゆうところじゃろうか』
そんなことを思いながら木下は窓から店内をのぞいた。
その時見えた光景に木下は言葉を失った。
ソースがかかったハンバーグ
湯気を上げるステーキ
少女はポツリとつぶやいた。
「ハイカラじゃぁ」
こんにちは!春桜結分です!
今回の作品は「なんか大正時代の女子学生の服可愛くね?」というところから創りました。なんかこう洋服と和服のいいとこ取りって感じがいいですよね。
最後まで読んでいただきありがとうございました!