つながっていく生命
季節は秋
読書の秋、芸術の秋といろいろあるが、
私にとっては実りの秋である。
旬の食材で料理を作って、
それを美味しくいただくのが
私にとって何よりの喜びなのである。
今日も目の前に並んだ食材たちを見て笑みが浮かぶ。
「うふふ……今年も見事に育ってくれたね。
必ず美味しくしてあげるからね」
さつまいもを手にして私はうなずく。
このさつまいもは購入したものではない。
友人が畑をしていて、手伝いをしたお礼に頂いたものだ。
その他の食材は店舗で購入したものである。
私は早速料理に取り掛かるため、キッチンへと向かった。
「さて、まず必要なのはフライパン……」
私はフライパンに水を注いだ。
「水の量はさつまいもが半分浸かるくらい……」
「では、さつまいもを3〜4等分に切ってっと……」
切ったさつまいもをフライパンに入れて蓋をする。
「火加減は中火で箸が楽に刺さるくらいまでふかす」
私の家のキッチンはIHなので20〜30分くらいである。
「ふかしたさつまいもを取り出して潰す……」
潰し加減はお好みだが、
私は食感を楽しみたいので粗めに潰していく。
「そこに、油を切ったツナ缶としらすと海苔を加える」
海苔は刻み海苔があると手を汚さないので楽である。
「そこにマヨネーズを加えて全体的に和える」
「最後に塩胡椒で味を整えたら完成」
作っていたのはさつまいもサラダである。
映画「海街diary」に登場する、
しらすトーストからヒントを得て考えた
オリジナルサラダである。
私は食を楽しむ空間作りのためにリビングへと向かう。
テーブルに食器やグラスを用意して席につく。
器にさつまいもサラダをよそい、グラスにお茶を注ぐ。
本当はお酒がほしいところだが、とある事情でしばらく禁酒である。
手を合わせて「いただきます」と祈りを捧げる。
これから生命をいただきますと食材に感謝を込める意味もある。
早速一口口に運ぶ。
「う〜ん! さつまいもの甘さに
魚の濃い旨味がマッチしてお米がほしくなるね!」
その出来栄えに満足して、
目立ってきたお腹をさすりながら想う。
「いただいた生命が新しい生命を育んでいくのね……」
それから数年後……
私の中に宿って育まれた生命は無事に誕生した。
数え切れない生命をいただいてすくすく育っている。
今では共に料理をすることもあり、
オリジナルレシピも生み出している。
いずれ彼女も新しい生命を宿して育んでいくと想うと、
自然に笑みがこぼれていた……