鉄血女帝アナスタシア 第六十五話
1914年
8月2日
ドイツ・オスマン密約 オスマン帝国はドイツに協力することを約束する
8月3日
イギリスで建造中だったオスマン帝国の戦艦二隻をイギリス政府が強制徴用
この戦艦の建造費用にオスマン帝国の国民が相当額を寄付していたため、イギリスとオスマンとの関係が急激に悪化
8月5日
オスマン帝国 ダーダネルス海峡封鎖
8月6日
オーストリアがロシアに宣戦布告
8月7日
イギリス海外派遣軍、フランスに到着
8月18日
シュタルペーネン会戦 ロシアに越境したドイツ軍4万が全滅
8月20日
ドイツ ベルギーの首都ブリュッセルを占領
8月21日
ロシア政府はドイツに対して、占領地における捕虜と民間人の処遇についてハーグ陸戦条約を厳守するよう非常に強く要請
8月23日
日本が日英同盟により協商国側として参戦
8月25日~29日
ベルギーのルーヴァンでドイツ軍による虐殺事件が発生。ベルギー市民5600人と滞在していたフランス人900人が殺害される
9月10日
ベルギーでの虐殺事件を受けてロシア政府は、事件の首謀者としてドイツ皇帝ヴィルヘルム二世と総参謀長ヘルムート・モルトケの逮捕状を発出。ドイツ政府に対して二人の身柄を引き渡すように要求した。
この身柄要求に対して当然ドイツ国民は激怒した。
◇
ドイツ ベルリン
「これがロシア軍が使った信管なのか?」
シュタルペーネン会戦での惨敗を受けて、ドイツ軍ではロシア軍の実情を調査するべく専用の部署が作られていた。そして、シュタルペーネン会戦で回収された榴弾の不発弾が持ち込まれて解析されていた。
「真空管と発信器を組み合わせています。修復は出来ませんでしたが、おそらく発信した電波の反射を感知して信管に電流が流れるものと思われます。これを地上40メートル付近で爆発するように設計されているものと・・・」
「バカな!こんな物をロシアは大量に配備しているというのか?これでは進軍できんぞ」
「しかもロシア領内に入った偵察機は一機も帰ってきていません。ロシア国内の協力者からは、我が軍のものと思われる複葉機がロシア軍の単葉機によって撃墜されているとの報告が来ております。しかもロシア軍の航空機の速度は我が軍の3倍以上の速度が出ていたといいます」
「3倍の速さだと?それではロシアの航空機は時速500キロ以上も出せるのか?そんな夢物語が現実にあるのか?」
「おそらく事実だと思います。今のところロシアは積極攻勢に出ていませんが、この航空機が揃うのを待っているのかも知れません。時速500キロの航空機に爆弾を搭載してベルリンを攻撃されたら防御のしようがありません」
「まずいな。陸と空がだめなら海軍か・・・。ロシアは空母を四隻就役させていたな。その高性能な航空機を乗せるためだったのか」
「これらの新兵器で戦争に勝てる算段が出来たのでしょう。だから皇帝陛下を逮捕するなどとふざけた事を言い出したのだと思います。ただ、積極攻勢に出ていない所をみると数が揃ってないと思われます。ロシア海軍を撃滅するチャンスは今しかありません」
「・・・・わかった、この情報を上に報告する。明日の朝までにまとめてくれ」
◇
サンクトペテルブルク
「ドイツ国民は相当怒ってるみたいね。戦闘の主軸を西部戦線から東部戦線へ移すべしって意見が大勢を占めてルみたいよ。どうするの?蒼龍」
ヴィルヘルム二世への逮捕状は予想以上に反響が大きかったのよね。ドイツの右翼団体なんか対抗して私の暗殺に懸賞金をかけたくらいだし。ほんと品が無いわ。
8月18日以降、ドイツ軍もオーストリア軍もロシアに対しては積極的な攻勢に出ていない。やっぱりたったの30分で4万の部隊が全滅したことが牽制になってるみたい。でも、国民がロシア撃つべしって沸き立ってるから無視も出来なくなるわよね。
「ドイツがどれだけの大軍を東部戦線に向けたとしても、騎兵と歩兵だけなら突破することは不可能ですよ。それに西部戦線での戦闘が減れば、悲惨な塹壕戦で無意味に死んでいく若者も減ります」
まあ確かに強固な塹壕陣地に最大射程30キロのエフェッチ榴弾砲を5000門以上配備してるから、よっぽど強力な機甲師団じゃ無いかぎり突破は不可能よね。
「確かにね。少しでも若者の命が助かるんだったらそれにこしたことは無いわね。でもドイツに忍ばせてるスパイによると、艦隊をロシアに差し向けようって動きもあるみたいね。しかもオスマン帝国と連動して」
今のところオスマン帝国は親ドイツ的な中立を保ってるけど、史実だとドイツ側に立って参戦してくるのよね。ドイツの強い要請があるから史実よりもっと早い参戦になるかも。
「シュタルペーネン会戦でドイツ軍が全滅したことを公式にドイツは否定してますし、ロシアの悪質なプロパガンダだって言い張ってますからね。ロシアは国境線の後ろで陣を張ってますからオスマン帝国にしてみればロシアは弱いって思ってもしかたないですね」
「はぁ、見くびられたものね。防御に徹するのも善し悪しだわ」
「オスマン帝国が参戦するとしたらクリミア半島への砲撃からでしょう。ローマン・コーシュ山の頂上にレーダーを設置しましたから、黒海でのオスマン艦隊の動きは常に把握してます。もし動きがあれば、キュウナナシキとイチシキの出番ですよ」
今回の戦争計画にはオスマン帝国の解体も入ってるのよね。史実のオスマン帝国は戦争中にアルメニア人やその他少数民族あわせて100万人以上を虐殺してる。本当に非道い話だわ。まあ、史実のロシアも十分非道いんだけど。
「オスマンの虐殺も防ぎたいけど、オーストリアによるセルビア人の虐殺も防がなきゃね。史実だとセルビアって全人口の30%が死んじゃうのよね」
「組織的な虐殺があったかどうかは諸説有りますが、まあ全人口の30%が死ぬのを放置は出来ませんね。ただ、現状オーストリア皇太子暗殺未遂を行った黒手組の幹部は軍籍についたままです。まずは彼らの処分を強く要請しましょう」
「うーん、要請を飲むかしら。オーストリアって言う侵略者に一撃を与えたって英雄視している勢力もあるからね」
やっぱりバルカン半島の事情は複雑だわ。まあロシアとオーストリアとオスマン帝国の勢力争いの犠牲でもあるんだけど。責任の一端はロシアにもあるから何もしないわけにはいかないわね。
次回更新は水曜日です




