鉄血女帝アナスタシア 第二十四話
大日本帝国宇宙軍 第二巻 絶賛発売中!
イラストはもちろん湖川友謙先生です!
帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。
ご購入頂けると嬉しいです!
「その通りです、アナスタシア。薬で治療して、ラスプーチンの祈祷は意味が無かったとわからせるんです。そこで、この資料を皇孫殿下の主治医である弘田長医師に渡してください。血友病の原因と治療薬である血液製剤の作り方を記載しています」
蒼龍は封筒の中からロシア語と日本語で書かれた論文のようなものを取り出す。結構な分量ね。
「ミッチーの主治医にだったら蒼龍が渡しても良いんじゃない?」
「10歳の俺がですか?一笑に付されますよ。この論文はロシアの医師が書いたように偽装しています。その医師は反政府活動団体と関わりを疑われてしまったので、この研究が闇に葬られそうになったところを持ち出したって言ってください。弘田医師は小児科の専門医で、日本で初めて血友病患者を診察したとされる医師ですからきっと取り組んでくれますよ」
蒼龍が言うには血友病の薬を作るのはそれほど難しくは無いらしい。蒼龍の論文の通りに作れば、数ヶ月もあれば完成するそうだ。それに血液製剤が完成する前でも、健康な人の血漿を輸液するだけでもある程度効果が期待できるのね。こんな簡単にアレクセイの病気が治るなんてすごい。
この時代でも輸血や血漿輸液はもう実用化されているそうだ。私は知らなかったけど。
「ドナーが変な病気を持っていると輸液された人は確実に感染するので、18歳以上、体重50キロ以上の健康で性経験の無い人からだけ血液を採取してください。その後遠心分離機で血漿成分だけ取りだして、血漿をアレクセイ皇太子に、赤血球をドナーに輸液します」
血液製剤が出来るまでの応急的な対処として、血漿輸液の方法を記した文書を蒼龍は渡してくれた。遠心分離機の設計図も入ってる。ありがたいわ。
「これでラスプーチンも用済みね。お母様との醜聞が無くなれば少しは良い方向に行くかも」
アレクセイの病気でお母様の心が不安に満たされてしまったときに、あの怪僧を頼りにしてしまったのよね。それで深い仲に・・・・あーいやだわ!実の母親の不貞の事なんて恥ずかしくて考えたくも無い!
「あの、姫様。皇后陛下の醜聞というのは・・・」
あ、ルスラン、聞いていたのね。まずい。どうしよう。バールのような物で殴ったら忘れてくれるかな?なんとかごまかせないかしら。
「アレクサンドラ皇后はラスプーチンと不貞、つまり男女の仲だという噂が広がるんですよ。そこへ来て、皇后がラスプーチンに宛てたという赤裸々な手紙が同僚の修道士によって暴露されるんです。真偽は不明ですが、これが致命傷になって国民から見放されるんですよね」
「まさか・・・、皇后陛下がそんな事を・・・・・・」
「蒼龍!何でそんな事まで言うのよ!ちょっとはデリカシーとか遠慮とか考えなさいよ!」
自分の母親の不貞を目の前でバラされるこっちの身にもなってよ!本当にいたたまれないわ。
「ルスランには全ての情報を共有して欲しいって言ったじゃ無いですか?あれ、嘘だったんですか?」
むー、確かにそう言ったわよ。でもね、もうちょっとオブラートに包むとかあるでしょ!
「まあ皇太子の病状が良くなって、ラスプーチンと距離を置いてくれれば良いんですけどね。アレクサンドラ皇后は後世の資料によると、かなりラスプーチンに依存していたそうですからね。なので、今回は血漿輸液の方法だけ伝えてラスプーチンには触れないでください。ラスプーチンはアナスタシアが帰国してから断罪しましょう」
「断罪?」
「断罪です」
むかし(前世)“断罪ざまぁ”みたいな小説をたくさん読んだけど、そんな感じかしら。あの手の小説って面白いんだけど悪役皇女がギロチンにかけられるような話が多かったから、そのシーンだけは身につまされるのよね。
「ラスプーチンは“痛みが少なくなる”といって“霊薬”をアレクセイに飲ませていると思います。それって多分アスピリンなんですが、血友病患者に投与すると血がさらに固まらなくなるんですよ。もっともそんな知識なんて無いと思いますが、まあ、その事実を公表して断罪しましょう」
「故意じゃなければ死刑にはならないと思うけど、流刑くらいにはなるわね。ラスプーチンに悪意があるかどうかはわからないけど、これもロシアの為ね」
◇
私は血漿輸液の方法を典医とお父様に手紙で送った。日本で研究されている方法で、まだ治験中だから公開されてない極秘事項だって伝えたわ。この方法を試してくれればそれでいいし、もしラスプーチンの反対で試さなかったとしたら、私が帰国した後に断罪の理由になるわね。
そしてミッチーにお願いして、主治医の弘田先生とお会いすることが出来た。
「公女殿下、血友病の薬の作り方があるというのは真でしょうか?」
弘田先生は現在53歳で優しそうな感じのおじいちゃんだ。蒼龍の話だと小児科医療に全てを捧げた立派な先生らしい。この優しそうな雰囲気も子供のことが大好きだからよね。でも、53歳とは思えないくらい老けてるわ。
「ええ、この研究はモスクワ大学のビクトル・ザンギエフ教授が手がけていたのですが、学生の一人が反政府活動で逮捕され、その教授も疑われて失職してしまったのです。実はこのルスランの弟が血友病で、父上のヤンコフスキー男爵がパトロンになって支援していたのです。その縁で資料だけは持ち出すことに成功したのですが、そこで研究が止まってしまったのです」
ルスランに“あなたの弟が血友病で苦しんでいると伝えた”とロシア語で言うと、私の言葉に呼応して視線を落とし辛そうな表情をする。弟が血友病で苦しんでいるつもりで辛そうな表情をしてって言っておいたけど、想像以上に良い演技だわ。ハラショーよ。でも蒼龍が作った資料「“さあ筋肉の時間だ!”←ここ大事」とか書いてあるんだけど何の意味かしら。ザンギエフ教授の似顔絵もとても医者には見えないわ。まるで筋肉ダルマのプロレスラーね。上半身裸だしすごい胸毛。確かにロシア人は毛深いわよ。私も油断してたら大変なことになっちゃうからね。まあ10歳だからまだ心配ないけど。しかし蒼龍ってロシア人に対して何か偏見があるのかしら?そういえば前世で”ロシア人の女性って30歳を過ぎるとみんな酒樽みたいになるって思ってたんですけど違ったんですね”とか言われたことがあったわね。今思い返したら信じられないくらい失礼なヤツだわ。
明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いいたします




