鉄血女帝アナスタシア 第二十話
大日本帝国宇宙軍 第二巻 絶賛発売中!
イラストはもちろん湖川友謙先生です!
帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。
ご購入頂けると嬉しいです!
私はルスランに転生のことを包み隠さず話した。私が10歳の誕生日の朝、90年の年月を経験してから目を覚ましたこと。そして高城蒼龍が2032年の事故で魂がタイムスリップしたことを。
「そうでしたか・・・。私は姫様を守ることが出来たのですね。ふがいないこの私ですが、それだけは本懐です」
ルスランはぽろぽろと涙をこぼしている。自らの命と引き替えにしてでも私の命を救えたことが嬉しいのだろうか。でもね、私はもうルスランを犠牲にして生き残るなんてしたくないの。絶対みんなを救ってみせるわ。必ずよ!
「では、その悲惨な未来を回避するために高城様がお力添え頂けると言うことなんですね?」
ルスランは蒼龍の入れてくれた紅茶を飲んで少し落ち着いたみたい。そういえば前世でも蒼龍の入れてくれる紅茶ってとってもおいしかったのよね。懐かしいわ。
「同じ男爵家の嫡男ですから“蒼龍”でいいですよ。それに見た目は10歳ですし。具体的な方法はこれから考えますが、かなり厳しい道のりになります。現段階で排除したい人物はレーニン・スターリン・トロツキー他共産党の幹部とラスプーチン。場合によってはニコライ皇帝です」
その言葉を聞いてルスランが敵意のこもった視線を蒼龍に向ける。まあそうなるわよね。
「それは、お父様が皇帝でいる限りロシア革命は避けられないという事ね」
蒼龍は私の目をまっすぐに見て頷いた。私もそれには同意するわ。お父様は1905年の血の日曜事件で国民からの信頼を無くしているものね。今のロシアは経済的に安定しているけど、そのバランスがちょっとでも崩れたら間違いなく革命が起こる。
「そうです。俺としては未来を知っているアナスタシアに皇帝の座を奪って欲しいんです。そして強権的な専制を以てロシア国内の安定と、支配している各民族の独立を実現してください」
「強権的な専制君主ね。それって蒼龍が一番嫌いなことなんじゃ無いの?」
「大っ嫌いですよ。でも一番じゃないんです。一番嫌いなのは共産主義なんですよ。だから、ロシアが共産化するくらいなら専制君主の方がマシだと思ってます」
相変わらず反共の姿勢は徹底してるわね。まあ共産主義者がやってきたことを知ってれば、そう考えるのも無理は無いわ。
「大戦勃発まであと3年。13歳の私に出来るかしら?」
「アナスタシア、出来るかどうかじゃないんです。やるんです。家族やルスランを死なせたくないのならね。それとも、祖国を見捨てて亡命しますか?それが一番安全ではありますね」
なんて意地悪な言い方だろう。蒼龍ってこんな奴だったかしら?いえ、違うわね。私の覚悟を聞いているんだわ。蒼龍が協力するに値するのかどうかって。
「わかったわ。私は国民を見捨てて逃げることはもうしない。必ずロシアの実権を握るわ。その過程で何万人殺したとしてもね」
「姫様!なんと言うことを!人を殺してでも権力を手に入れるなど、皇帝陛下や皇后陛下が悲しまれます」
「ルスラン、あなた、人を殺したことがある?」
「えっ?姫様・・・・」
「人を殺したこと、無いでしょ?私は多くの人を殺してきたわ。ソ連との戦争で。自国のロシア兵1万、ソ連の市民と兵隊を併せて300万。私が殺した人たちの中には無垢な子供もたくさん居たわ。それでもやらなければならなかったのよ。それに比べたら、国の実権を握るために抵抗する貴族連中を排除すればいいだけなんでしょ?」
「し、しかし姫様が権力を握るということは・・・・・・・皇帝陛下は・・・・」
「そうね。お父様には自主的に退位してもらうのが一番良いのだけれど、もしお父様が反対するようだったら処刑者名簿に一人名前が追加されるだけよ。覚悟は出来ているわ」
「姫様・・・」
ルスラン、そんなに悲しい顔をしないで。大丈夫。きっとそんな事にはならないわ。だって蒼龍がちゃんと考えてくれるもの。
「アナスタシア、あなたの覚悟は受け取りました。アナスタシアがロシアの実権を握ることが出来るよう、俺も全力でやりましょう。アナスタシアの専制の下なら、ロシア国民の教育水準が低くても懸念は少ないと思います。俺の持っている知識でロシア国民を豊かにしますよ。平行して教育と道徳水準の向上も図りましょう」
蒼龍は私の方を向いて笑顔を見せてくれた。今日初めて見る笑顔のような気がする。
「でもそうなったら日本よりロシアの方が先進国になっちゃうわよ。いいの?」
前世では蒼龍の知識のおかげで日本がダントツ世界一の先進国だったけど、今回はロシアが世界一の先進国になりそうね。それはちょっと嬉しいかも。
「かまいませんよ。日本でそれを実現しようとしたら少なくとも皇孫殿下(後の昭和天皇)が天皇になるのを待たなければならないので。ロシアが安定した豊かな国になってくれて、世界を平和にしてくれるんだったらそれにこしたことはありません。どの国が主導権を握るかなんて些細なことですよ。だってアナスタシアの経験した未来では国境なんて無いんでしょ。ただし、アナスタシアも前世の経験で十分にわかっていると思いますが、悪意のある人間が不相応な力を持つことほど悲惨なことはありません。絶対に権力を失わないようにしてください」
悪意のある人間・・・スターリンやヒトラー、ルーズベルトの事ね。
「わかったわ、蒼龍。でも、私がその“悪意ある人間”にならないって保証も無いけどいいの?」
「あなたが話してくれた前世の経験が嘘とは思えませんから。そこは信用しますよ。なにより俺たちは“トモダチ”なんでしょ?」
「蒼龍、前世もだけど時々そんなキザな言い方するわよね。嫌いじゃ無いわよ」
私は蒼龍と握手を交わした。固い固い握手だ。そしてルスランと蒼龍も握手を交わす。とても温かい9月の午後だった。




