鉄血女帝アナスタシア 第十九話
大日本帝国宇宙軍 第二巻 絶賛発売中!
イラストはもちろん湖川友謙先生です!
帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。
ご購入頂けると嬉しいです!
ルスランが眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。私が“ちょっとスターリンを殺してきて”って言ったときも同じような顔をしていたわね。戦争中でもないのに暗殺なんて確かに非常識よ。ルスランの言うとおりロシアは”一応”法治国家ですもの。でもね、このままだとそんなきれい事を言っていられない世の中になるの。
「そうです。例えばアナスタシアがロシアの全ての権力を掌握するために、ニコライ皇帝に失政の責任を押しつけて断頭台に送るとかです」
ガタッ
「貴様!例え話であっても皇帝陛下を弑すなど不敬きわまりない!姫様!このようなヤツが本当にロシアの救世主なのですか!?」
ルスランが立ち上がって激昂してしまった。まあ、皇帝に忠誠を誓っている貴族の子弟なら当然よね。ほんとくそ真面目な女ね。大好きよ。
「落ち着いて、ルスラン。じゃあ、私からも質問するわ。本当にそれを私が必要だと決心して、あなたにお父様、ニコライ皇帝を暗殺して欲しいって言ったら実行してくれる?」
この質問は冗談では無く本気だ。もちろんお父様を暗殺なんてしたくはないけど、状況によってはそうならないとも限らない。数千万の国民の命には代えられないのよ。
「そ、そんな・・・姫様まで・・。姫様の夢見だからといって、それは行き過ぎています!どうなされたのですか、姫様!」
確かに夢で見たからお父様を殺すってちょっと頭おかしいって思われそう。まあそれは最悪のケースの一つなんだけど。
「ルスラン、今から言うことは私の夢見じゃ無いわ。これから起こる“歴史”なの。このままだと私にもロシア国民にも未来は無いわ。そしてこれから聞くことは私が許可した人間以外には絶対に話してはダメ。いい?」
ルスランはゴクリと音が聞こえるくらい息を呑んで私をまっすぐに見ている。そして少し躊躇しながら首をゆっくり縦に振った。
「今から三年後の1914年・・・続きは蒼龍にお願いして良いかしら?」
ダメだ、日付が全然思い出せない。蒼龍がちょっと呆れたような顔をしている。だって蒼龍みたいにチート能力をもらえなかったんだから仕方ないじゃないの!
「1914年6月28日サラエボでオーストリアの皇太子夫妻がセルビア人過激派に暗殺されます。それをきっかけにドイツ・オーストリア・トルコとロシア・フランス・イギリスが全面戦争に突入。戦争は5年間続き、ヨーロッパを中心に軍人1000万人、民間人1300万人が殺されます。後に“第一次”世界大戦と呼ばれる戦争です」
「え?1000万人に1300万人・・・・」
ルスランはその数字に驚きを隠せていないけど、まだまだこんなものじゃないのよ。
「戦争末期にインフルエンザが大流行し、十分な対応が取れなかったこともあって全世界で5000万人から1億人が死亡します。大戦がなければ防疫などの対処が出来て、もっと死者が少なかった可能性があります」
「1億人・・・?」
「さらに1917年3月8日、ロシアで共産主義革命が起き内戦に突入。ロシア国内だけで800万人から1000万人の市民が殺されます」
「・・・・・・」
「革命で囚われたアナスタシアを含むロマノフ一家は、正式な裁判を受けること無く1918年7月17日にエカテリンブルクで無残な死を遂げます」
「姫様が・・・そんな・・・」
「ロシアの実権を握ったスターリンは1924年から1941年にかけて国内で弾圧や計画飢餓を実行し、1500万から2000万人を殺します」
「スターリン・・・ジュガシヴィリが・・・・それで姫様は暗殺を・・・・」
「さらに1939年9月1日、ドイツがポーランドに侵攻したことにより第二次世界大戦が勃発。1941年からはドイツがロシアに攻め入り、ロシア国内だけで2500万人が、全世界で8000万人が犠牲になります」
改めて蒼龍から犠牲者数を聞くと、1900年からの半世紀でとんでもない数の人が犠牲になってるのね。ロシア国内だけで5000万人以上とか、ちょっと常軌を逸しているわ。私の経験した歴史だとだいぶマシだったけど、蒼龍の歴史ではまさに狂気の時代だったのね。
「姫様・・・、高城様の言っていることは本当なのでしょうか?人間同士の争いでそんな事が本当に起こるのでしょうか?」
ルスランが声を震わせながら問いかける。ルスランの知っている大きな戦争は露日戦争だけだ。激しい戦いが繰り広げられたけど、それでも双方の死者は合計で15万人ほどのはず。民間人の犠牲者はあまり発生していないのよね。それなのにあと3年後に起こる大戦争で何千万人もの人が死ぬなんて想像出来ないでしょう。
「ええ、本当よルスラン。人間はその行いが正義だと思えばどんな残酷なことでも出来てしまうわ。私と蒼龍が何もしなければ必ず訪れる悲惨な未来なの」




