表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

425/436

第四一五話 新たな世界(3)

挿絵(By みてみん)

絶賛発売中!

作画はダンバインやイデオンの湖川先生がご担当!

amazonや楽天ブックスで購入出来ます!

その他、電子書籍もあります。

よろしくお願いします!


 404 や 501 503 といったメッセージを見たフリーク達は、きっと何かの暗号に違いないと必死で解読を試みた。しかし、それが単にサーバーのエラーメッセージだと言うことがわかると皆一様にorzとなってしまった。


 財団はすぐさまトップページの修正およびサーバーの増設と、ロードバランサーの最適化を行った。そして、世界の地域毎に利用できる時間を割り当てることによって、なんとかアクセスを回復することができた。


 アメリカ マサチューセッツ工科大学


「この論文は事実なのか?すぐに査読をして検証するんだ!」


「しかし教授。検証するための観測機器がありません。それにこの論文では重心系衝突エネルギー32GeVの加速器を使用したとあるんですよ。そんな高出力加速器が、いったい世界の何処にあるんですか?」


 日本未来科学振興財団の公開した技術資料は、世界中に激震を与えた。特に量子力学分野の論文は非常に高度な内容だったのだが、現時点で地球上に存在しない機器を用いて実験をした形跡が有り物議を醸す。そして、最も多くの人の興味を引いたのはコンピューター関連技術だ。小規模なICとトランジスタ・ダイオードなどを使った簡単なマイコンの設計図から大規模集積回路の設計図、さらに各種プログラムや開発環境までダウンロードが可能で、それを構成する部品も日本の商社を通して入手できた。ただし、注文しても船便だとかなりの日数がかかるため、どうしてもすぐに部品を入手したいフリーク達は、航空機のチケットを購入して東京を目指した。先月オープンしたばかりの「秋葉原デパート」には、ありとあらゆる電子部品を売っているとの噂が流れていたのだ。それこそ、トランジスタ1個から120インチ高出力サイクロトロンまで入手できるのだと。さらに、日本軍からの横流しされた電子部品も極秘に入手できるらしい。2階奥で果物と野菜を売っているチャイナ服を着た少女に大金を積めば、どんな電子機器でも手に入るとまことしやかにささやかれていた。


 コンピューターに関する技術と部品を手に入れた世界中の工学系大学生達は、競ってオリジナルのマイコンやソフトウェアを制作し発表し合った。このように極めて短期間の内に、世界の科学技術レベルは向上していく。


 ――――


 1943年7月15日


 中国 延安


「後の事は君に任せる・・・」


 妻の江青を奪われた恨みを果たすべく戦っていた毛沢東は、心労からついに倒れてしまい自室でその生涯を閉じた。最後の瞬間に部屋には林彪しかいなかったのだが、林彪は自分自身が後継者に指名されたと主張したため、共産党執行部の劉少奇や周恩来がそれに反発。共産党内部においてすさまじい内ゲバが発生し、血で血を洗う抗争の末、林彪は失脚した。そして残った幹部達もお互いに主導権を争って殺し合い、最後には誰も残らなかった。


 林彪は辛うじて延安の脱出に成功するものの、清帝国へ亡命する為に手配した輸送機が原因不明の墜落事故を起こし死亡する。


 こうして自ら瓦解した共産党軍に組織的な抵抗が出来ようはずも無く、清帝国軍によって完全に制圧されてしまった。


 国連軍の組織を準備しているさなかだったのだが、結局国連軍の出番は訪れなかった。


 延安に入った国連の調査団によって、共産党の内ゲバの実態が明らかにされた。それは言葉にするのもおぞましい限りの内容だった。


 殺害した敵対する派閥の党員をミンチにして捕虜達に食べさせたり、自らの肉を自分でそぎ落とすように強制したりと、中華5000年の暗部を凝縮したかのような凄惨な虐待が行われていたのだ。


 ――――


 時をさかのぼるが、イタリア北部地域に立てこもっていたムッソリーニとナチスの一派も、1941年3月に降伏している。ドイツからの補給も無く、連合国軍による空襲で電気や燃料の無い、ローマ時代のような生活を余儀なくされていた民衆が暴動を起こしたのだ。命の危機を感じたムッソリーニはイギリス軍に降伏を申し出て、間一髪のところで救出されている。現在はローマの国際軍事法廷において裁判が行われている最中だ。一緒に逮捕された愛人のクラーラ・ペタッチは既に釈放されており、ムッソリーニの助命運動の中心人物となっている。また、彼女の元へファシスト党の残党も集まってきているので、イタリア公安の監視対象に指定されている。


 ――――


 1943年9月10日


 スターリンをはじめとして、逮捕されていたソ連共産党幹部238人に死刑が執行された。公開処刑を望む声もあったが、最終的には北極圏の収容所においてひっそりと絞首刑が執行された。


 スターリン達の裁判は、ロシアの国内法によってロシア人裁判官のみで行われた。ポーランドからは判事を送らせて欲しいと要請があったが、これは丁重にお断りした。ロシア国内において違法な反乱(革命)を起こしたという、純粋に国内問題としたのだ。ポーランドに対しては“当時ロシア国民だったスターリンの不始末”を、ロシア帝国が復興支援などの形で補うこととした。


 ※スターリンはジョージア人だが、1918年まではロシア帝国の一部だったため、ロシア帝国人として扱うことにした。


 スターリン達の取り調べの過程で、世界中に散らばっている国際コミンテルンの残党達の情報も入手が出来、多くの共産主義者を摘発することが出来た。


 裁判では、スターリンの側近達はスターリンに逆らえなかったと自己弁明したのだが、そのほとんどは受け入れられなかった。自らスターリンに気に入られるために、粛正を推し進めたことは明らかだったのだ。そして、そのスターリン本人はほぼ廃人となっていて、まともな聴取も出来なかった。うわごとのように「悪魔にだまされた」と繰り返すばかりだ。絞首刑の瞬間まで、悪魔の名前を連呼し続けた。


 ――――


 1944年1月4日

 改正アメリカ合衆国憲法が施行された。


 基本的には従来の憲法と大きく変わってはいないが、核兵器の研究保有の禁止と、市民の武装の禁止が追加されている。また、より明確に人種差別等を忌むべき事とし、合衆国の存在意義は全人類の幸福を希求し、その実現に責任を持つことであると定められた。


 アメリカの領域は主に東部地域のみとなったが、その人口は1億5000万人にもおよびこれからも増加が見込まれる。今現在でも大国なのだ。その大国に世界平和への名誉ある責任を分担させたいという日本の意向が反映された結果だった。


 1944年3月3日


 国際連盟が解散し、新たに世界連合(Universal Union)が設立された。本部はロンドンに置かれる。


 常任理事国には日本・ロシア・イギリス・フランスが選出され、核兵器の保有と管理はこの4カ国が独占することになった。4カ国以外の核兵器研究や保有は違法とされ、その兆候があった場合には先制核攻撃も可能とする世界連合憲章が採択される。ただし、その見返りとして、原子力発電所を希望する国家に対しては、常任理事国は費用や技術といった支援をする事も定められた。


 1944年8月1日


 アジア経済連合の主要国において、通貨と中央銀行の統合が実施された。


 通貨の各国の呼び名はそれぞれ従来のままだが、1圓=1ルーブルの固定とされ、アジア連合中央銀行が設立された。

 ※大韓帝国ではウォン、清帝国ではイェンと発音。21世紀のウォンも元も本来の漢字表記は圓。


 また、ヨーロッパとアジアの統合経済圏“ユートラム連合”が将来的に設立されると発表される。人々は、世界の明るい未来を信じて疑わなかった。これからは、永遠の平和と繁栄の時代になっていくのだと。


 1944年9月7日


 ユーゴスラビア王国 ベオグラード


 国王のペータル2世とギリシャ王の娘アレクサンドラの結婚式を5日後に控え、国内は祝賀ムードにあふれていた。そして、ギリシャよりアレクサンドラを乗せた特別列車がベオグラードに到着する。


 9月7日午後4時、ベオグラードは核の炎で消滅した。




第四一五話を読んで頂いてありがとうございます。

土日祝は休載です。


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!

モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。

これからも、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>市民の武装の禁止が追加されている 国土がクッソ広いし、日本とは比べるのが間違いレベルで危険な害獣・猛獣がウヨウヨ (毒蛇、ワニ、狼、コヨーテ、ピューマ、熊、デカい鹿、猪、アライグマ、その他、害鳥の類…
世界中で平和な未来に向けて進んでいこうとする中での、この惨劇。 どこかで、悪魔もしくは悪魔に憑依されたやつの揺り返しがあるかとは思っていたけど。
最後にコレですか…… 持ち出された核は三発で残り二発。 一発は絶対に東京を狙ってるだろうから、もう一発は何処で使いつもりやら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ